気持ちのいい気候が続く秋。夏に流行する感染症が落ち着きをみせる一方、冬の感染症の流行が気になります。
国立感染症研究所の第39週(9/26-10/2)速報データでは、A型溶血性連鎖菌咽頭炎=溶連(ようれん)菌感染症の患者数がやや増加しています。
溶連菌感染症とは?
溶連菌感染症は、春から初夏、及び冬に流行する感染症です。ここに2年間は大きな流行がありませんでしたが、寒くなってくると流行が気がかりな感染症です。
いずれの年齢でも発症しますが、学童期の子どもに最も多く、3歳以下や成人では典型的な症状を呈す例は少ないとされています。
主な感染経路は、飛沫感染及び接触感染で、食品を介して経口感染する場合もあります。学童期の子どもが多く感染するということで、家庭内や学校などでの集団感染が多く見られます。
溶連菌感染症の症状
主な症状としては、扁桃(へんとう)炎、伝染性膿痂(のうか)しん(=とびひ)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎などがあります。
扁桃炎の症状としては、発熱やのどの痛み・腫れ、化膿、リンパ節炎が生じることがあります。舌がイチゴ状に赤く腫れ、全身に鮮紅色の発しんが出ることがあります。また、発しんがおさまった後、指の皮がむけることがあります。
伝染性膿痂しん(とびひ)の症状としては、発症初期には水疱(水ぶくれ)がみられ、化膿したり、かさぶたを作ったりします。
適切に治療すれば後遺症がなく治癒しますが、治療が不十分な場合には、発症数週間後にリウマチ熱、腎炎などを合併することがあります。まれではありますが、敗血症性ショックを示す劇症型もあります。
感染症の専門医は・・・
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「溶連菌感染症は熱が出たり、ノドがすごく痛くなったりして、発症すると辛いことがあります。また昔は猩紅(しょうこう)熱とよばれていたように、全身に真っ赤な発しんが出たり、苺(いちご)舌といって、舌が腫れて表面にいちごのようなブツブツが出たりするなど、さまざまな症状を呈します。この冬に溶連菌感染症が流行するかどうかは、現在のデータでは判断できませんが、過去2年間流行がなかったこともあり、十分に注意が必要です。」と話しています。
溶連菌感染症の予防法は?
予防については、ワクチンは開発されていません。飛沫感染や接触感染を防ぐために、手洗いなどの一般的な予防法を実施することが大切です。
また、治療法については、発症した場合適切な抗菌薬で治療すれば、多くの場合は後遺症もなく治ります。
ただし、合併症を予防するために、症状がおさまってからも決められた期間抗菌薬を飲み続けることが重要です。
保育所、学校などの登所・登校目安は?
厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」によると、保育所・学校などの登所・登校目安は「抗菌薬の内服後24〜48時間が経過していること」とあります。
ほかにも心配な冬の感染症
安井医師は、「これから寒くなるにつれ、冬に流行する感染症の患者が増えてくることを危惧しています。例年であれば溶連菌感染症の他にも、咽頭結膜熱、ノロウイルスなどが原因の感染性胃腸炎、そしてインフルエンザが流行します。今年は新型コロナウイルス感染症の再流行も心配されていますし、インフルエンザとの同時感染の可能性もあると思います」と話しています。
全国旅行支援が始まり、旅行に行かれる方も多いと思います。引き続き予防に留意し、健康な毎日を過ごしましょう。
引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2022年第39週、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは
厚生労働省 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏