10月に注意してほしい感染症について、感染症の専門医で大阪府済生会中津病院の安井良則医師に予測を伺いました。
流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。
【No.1】新型コロナウイルス感染症
一時期の流行状況からは、落ち着きをみせているものの、未だ流行は続いています。
多くの学校では夏休みが明け、新学期が始まっています。集団生活が再開することで、今後、子どもの間で感染が拡がっていくことが予測されます。また、学校での集団感染が発生し、子どもから家庭内にウイルスが持ち込まれるケースも、再度、増えると危惧しています。
学校でできる感染対策として、マスク着用や手洗いの励行に加え、教室内ではこまめな換気を行ってください。何より重要なのが、多くの方がワクチンを接種することです。
9月から国内でも、オミクロン株対応ワクチンの接種が始まっています。
しかし、ワクチンを接種していても、感染しないわけではなく、周囲にうつさないわけでもありません。ワクチンを接種した後も決して安心しないでください。
ワクチン接種に加え、感染対策を徹底することで、ようやくウイルスに立ち向かえるのです。
【No.2】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症) は、例年春に患者報告数が増え始めます。保育所や幼稚園の年長を含め、学童を中心に広がります。学校などでの集団生活や、きょうだい間での接触を通じて感染が広がるので、注意しましょう。
感染すると、2~5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身の倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしば嘔吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。発熱や咽頭痛など、新型コロナの症状と似ており区別がつきにくいため、症状が疑われる場合は速やかにかかりつけ医を受診しましょう。主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。感染の予防には手洗い、咳エチケットなどが有効です。
【No.3】インフルエンザ
多くの学校では夏休みが明け、新学期が始まっています。
インフルエンザは集団生活の場で広がる可能性があり、冬にかけて感染動向に注意が必要です。インフルエンザの予防には、予防接種を受けることが有効です。ここ2シーズンほど、インフルエンザの流行がみられず、乳幼児が初めて感染すると重症化しやすいことから、予防接種を受けることで発病率、重症化の低減につながると言われています。
予防接種を受けてから、抗体ができるまで約2週間かかり、効果は約5か月間持続しますので、流行前に早めに接種することを、おすすめします。
【No.4】手足口病・ヘルパンギーナ
手足口病はエンテロウイルスなどを病原体とする感染症で、主に夏季に流行します。
3日~5日の潜伏期間の後に発症し、口の粘膜・手のひら・足の甲や裏などに、2~3ミリの水疱性の発疹が現れます。手足口病の感染経路としては飛沫感染、接触感染、糞口感染があげられます。保育所や幼稚園などの集団生活では、感染予防として流水・石けんを用いた手洗いの励行と、排泄物は適切に処理をしましょう。
一方で、子どもがウイルス感染し、その後に看病にあたった大人が手足口病に感染し発症する例もみられます。職場では感染対策としてマスクを着用し、こまめに石けんを用いて手洗いを行うようにしてください。
【要注意】ヒトメタニューモウイルス感染症
ヒトメタニューモウイルス感染症は、年代に関係なく感染します。症状は、咳・鼻水・上気道炎ですが、重症化すると気管支炎などの下気道炎や肺炎を引き起こします。
また、発熱症状が、4-5日間続くこともあります。中でも注意が必要なのは、お子さんや高齢者です。ウイルスが発見されたのは、2001年と比較的最近で、国内の流行を示す全国的な統計データが無いのが現状です。
子どもは、生後6ヶ月頃から感染が始まりますが、一度の感染ではじゅうぶんな免疫が獲得できず、大人になっても感染を繰り返します。一方、感染を繰り返すごとに症状は軽くなります。初感染の子どもや免疫が低下している高齢者は注意が必要です。
飛沫・接触による感染により広がるとみられており、マスク着用・手指衛生、そして感染者とタオルの共用を避けることが大切です。
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏