【感染症ニュース】血液の疾患や基礎疾患のある方に朗報 特例承認された新型コロナ感染症治療薬「エバシェルド」 対象者や効果は?
2022年9月7日更新
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予防効果は6か月間持続
予防効果は6か月間持続
 2022年8月30日、新型コロナウイルス治療薬としてアストラゼネカ社の「エバシェルド」が特例承認されました。

 厚生労働省は、エバシェルドの効果・効能について、「治療」と「発症抑制」の2点を薬事承認しています。

 しかし、供給量が限られていることや治療薬は他にも存在することから、使用にあたっては、ワクチン接種では十分な免疫の獲得が期待されない人が重症化しないことを目的での投与に限って薬剤を供給するとしています。

 現在の新型コロナワクチンは、接種により、自身の体内に抗体を作るよう誘導するものですが、作られる抗体の量には個人差があります。

 一方、エバシェルドは、「中和抗体薬」と呼ばれるもので、体内に、直接、抗体を注入します。

対象者は?

 新型コロナウイルス感染症の予防は基本的にはワクチンであること、そしてエバシェルドの安定的な供給が現在は難しいことから、厚生労働省が薬剤を所有した上で、対象となる方が受診している医療機関に供給されます。希望者は医師と相談の上投与されます。

 対象となる方は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が推奨されない方、または免疫機能低下などによりワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある方で、成人及び12歳以上かつ体重40kgの小児です。

 例えば、次のような方が対象となります。

・抗体産生不全あるいは複合免疫不全を呈する原発性免疫不全症の患者
・慢性移植片対宿主病を患っている、または別の適応症のために免疫抑制薬を服用している増結細胞移植後レシピエント
・積極的な治療を受けている血液悪性腫瘍の患者
・肺移植レシピエント
・固形臓器移植(肺移植以外)を受けてから1年以内の患者 ほか

費用は

 エバシェルドは、国が使用時に医療機関に無償で譲渡しますが、手技料等については患者の自己負担となります。

 しかし、投与が対象者にとって過度な負担にならないことを目的として、投与時の自己負担分の徴収金額を 3100円以下とすることに協力する医療機関に配分することとしています。

感染症の専門医は…

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師はエバシェルドについて、「血液の疾患や骨髄腫の患者、免疫抑制剤を使用している方などは、ワクチンの効果が得られにくく、この薬が感染予防に役立つのではないかと思います。今回の第7波では院内感染が多発したことから、血液内科などでは入院患者を中心に投与し、感染予防をするということも検討されることになるでしょう。厚生労働省の発表にもある通り、新型コロナウイルス感染症の予防の基本は従来通りワクチンで、この薬がワクチンに置き換わることはないと思いますが、ワクチンで効果が得られにくかった方たちには、使用を検討する価値はあるでしょう」としています。

引用
厚生労働省 令和4年8月30日 新型コロナウイルス治療薬の特例承認について

厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部
新型コロナウイルス感染症における中和抗体薬「チキサゲビマブ及びシルガビマブ」の
医療機関への配分について

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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