【感染症ニュース】加熱不十分な肉だけじゃない! 動物からの感染も 夏のレジャーで気をつけたい腸管出血性大腸菌感染症
2022年8月8日更新
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ウシ・ヒツジ・ヤギとのふれあいにも注意!
ウシ・ヒツジ・ヤギとのふれあいにも注意!
 夏真っ盛り!屋外のレジャーにお出かけの方も多いと思いますが、気をつけてほしい感染症があります。それが、腸管出血性大腸菌感染症です。

 感染症発生動向調査週報(速報)によると、腸管出血性大腸菌感染症の報告数が第28週(7/11~17)第29週(7/18~24)と2週続けて、100件を超えました。北海道から沖縄まで、全国で感染の報告があり、注意が必要です。

腸管出血性大腸菌感染症とは?

 大腸菌は、家畜や人の腸内にも存在します。ほとんどのものは無害なのですが、人に下痢などの消化器症状などを起こす大腸菌を「病原大腸菌」と呼び、さらにその中で毒素を産出し、出血を伴う腸炎や、溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こす大腸菌を「腸管出血性大腸菌」と呼んでいます。代表的なものは「O157」「O26」「O111」などがあります。

 腸管出血性大腸菌感染症の症状としては、軽い腹痛や下痢で終わる場合もありますが、水のような便、激しい腹痛、著しい血便とともに重篤な合併症を起こし、時には死に至る場合もあります。

感染症の専門医は・・・

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、8月に気をつけたい感染症の一つに「腸管出血性大腸菌感染症」をあげ、次のように話しています。

 「例年、気温が高くなる初夏から初秋にかけて腸管出血性大腸菌感染症は流行しますが、今年も同じように流行の傾向があります。この感染症はいわゆる食中毒事例として、加熱不足の肉や、調理の際に衛生管理を怠ったために起こることが多いのですが、意外なところではふれあい動物園でヤギやヒツジ、あるいはウシといった偶蹄目の動物を触ったことで感染するケースがあります」

動物からの感染しないためには?

 腸管出血性大腸菌は、ウシなどの家畜や人の糞便の中に時々見つかります。厚生労働省のホームページには「これまでに、ふれあい動物イベント、搾乳体験等を原因とする感染事例が報告されています。牛等の反芻動物では、O157をはじめとする腸管出血性大腸菌を保菌していることがあります。また、反芻動物の糞便に汚染されたウサギ等の小動物の体表から二次的にヒトが感染した事例もあります」とあります。

 子どもが動物とふれあうことは情操教育としても良いことですが、感染しないように気をつけなければなりません。動物とふれあいで腸管出血性大腸菌感染症にならないためには、
・動物とふれあった後は、必ず石けんで十分に手を洗う
・動物の糞便にはふれない
・動物とキスなどの過剰なふれあいは避ける
・動物とふれあう場所では、飲食等はしないようにする。
などの注意が必要です。

食中毒にも気をつけて!

 腸管出血性大腸菌は熱に弱く、75℃で1分間以上の加熱で死滅するので、通常の食中毒対策を確実に実施することで感染予防できます。主な対策には次のようなものがあります。
・生や加熱不足の肉は食べない。
・菌が野菜に移ることがあるので、調理の際に肉と野菜を一緒に扱わない。
・清潔な調理器具を使う。
・調理、食事の前には手を洗う。
・O157は室温でも15~20分で2倍に増えるので、調理前、調理後の食品は、室温に長く放置しない。

乳幼児やお年寄りは特に注意を

 乳幼児やお年寄りの腸管出血性大腸菌感染症は、症状が重くなりやすく死亡率も高くなるので、さらに注意が必要です。これから動物園へ行ったり、バーベキューを楽しまれたりする計画を立てている方も多いと思います。楽しい夏休みのためにも、腸管出血性大腸菌の感染予防をぜひお願いします。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2022年第29週
厚生労働省 腸管出血性大腸菌Q&A

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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