【感染症ニュース】高齢者や基礎疾患のある方が医療を受けられない現実も 感染症専門医が語る新型コロナウイルス感染症の現状 一人一人がより一層の感染対策を
2022年8月3日更新
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3密避けて、換気・マスク・手洗い
3密避けて、換気・マスク・手洗い
 2022年8月2日に全国で新たに確認された、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は21万1058人。

 山形・愛知・栃木など13の県で、過去最多を更新しました。

 翌3日は、東京都で3万8940人の感染が確認されました。

 感染者が増え続けると同時に、死者数、重症者数、入院や療養中の患者数も増えています。

 クラスターが発生している高齢者施設や病院もあり、医療がひっ迫した状態が続いています。

感染症の専門医は…

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、現在の状況をこのように話しています。

 「新型コロナウイルス感染症の流行が始まった頃と比べると、重症化する患者の割合は少なくなっています。しかし、これだけ新規感染者数が増え病院に押し寄せると、医療全体を圧迫します。他の病気があるにもかかわらず、コロナが陽性であったために、医療を受けられないというケースも出ています」

高齢者や基礎疾患のある方の新型コロナウイルス感染が怖い

 ある患者はコロナ以外の疾患で手術が必要な状態でしたが、最初に訪ねた病院では新型コロナの検査が陽性であったため、診察すら受けられなかったとのことです。

 安井医師は「すぐに医療を受けなければならない疾患がある方が、新型コロナのために受診できず、より症状が悪化するということが実際に起きています。高齢者や基礎疾患のある方の治療の遅れは、命にも関わります。非常に良くない状況が続いているという印象です」としています。

重症化を防ぐワクチン

 新型コロナウイルス感染症の症状悪化も心配です。

 すでに日本では60%以上の人がワクチンを3回以上接種していますが、安井医師はワクチンの効果について、「患者さんを実際に診察していると、ワクチンを接種していない方は、より重症化しているという印象があります。ワクチンを一度も接種せずに感染した20代の方は、人工呼吸器を装着する寸前のところまで症状が悪化しました。一方で、ワクチンを接種していたとしても、最後に接種してからかなりの時間が経過すると、効果が薄れるのではないかと感じています」と話しています。

改めて予防を考える

 安井医師は、去年や一昨年も夏場に新型コロナウイルスが流行したことを踏まえ、現在の第7波の勢いは、8月に入ってもまだ続くと予測しています。

 一部行動制限を促す自治体もありますが、一人一人の感染対策が重要なのは、今も変わりはありません。

 厚生労働省は感染拡大防止について、このように呼びかけています。

 「外出する際は、今一度、ご自身の体調を確認いただき、発熱や倦怠感があった場合は、軽度であっても外出や移動を控え、自治体等の方針に従って受診や検査をお願いします。また、お盆や夏休み等に帰省等で高齢の方等と会う場合は、事前に陰性の検査結果を確認するなど、より一層の感染防止対策を心がけ体調を整えるようにしましょう。高齢者や基礎疾患のある方が感染すれば、重症化リスクも高まります。感染リスクの高い行動は控え、『マスクの着用』や『手洗い』、『3密(密接・密集・密閉)回避』、『換気』など基本的な感染対策を徹底しましょう。1人ひとりの行動が、大切な人と私たちの日常を守ることにつながります」

子どもが感染した時に注意すること

 新型コロナウイルスは、家庭内感染も多く起こっています。子どもの感染が増えている今、厚生労働省は子どもが感染した時には、次のような注意をしてほしいとしています。

 「お子さんの観察ポイントは、ご機嫌、食欲、顔色、呼吸のようすなどを観察してください。ご機嫌がよく、食欲があり、顔色が普通であれば基本的に心配いりませんが、意識がはっきりしない、機嫌が悪い、食欲が低下している、水分がとれない、顔色が悪い、息苦しそう、嘔吐を繰り返すなどの場合は担当保健所、またはかかりつけ医に早めにご相談ください」


引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2022年第29週
厚生労働省ホームページ「感染拡大防止へのご協力をお願いいたします!」

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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