新型コロナウイルスの新規感染者数が、全国的に急増しています。7月20日の1日の新規陽性者数は全国の合計が152,535人。東京都と大阪府では、2万人を超えました。東京都の病床使用率は43.5%(東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト)、大阪府の病床使用率は40.6%(大阪府新型コロナウイルス感染症対策サイト)で、いずれもここ1週間で急増しています。
また、東京都では、7月21日に新規感染者数が31,878人となり、過去最多を更新しました。
このまま新規感染者が増え続ければ、症状が悪化しても入院できないケースが出てくる可能性があります。
感染症の専門医は・・・
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、日々流行が拡大しているのを実感しているとのことです。
「この1週間で、状況は激変しました。BA.5は感染力が強いとされており、今回の第7波は、新型コロナウイルスの最大の流行になると予測します。大阪では、病院内クラスターが発生し、医療に支障が出ているケースもあると聞いています。ある病院ではすでに病床使用率も100%を超えていて、これからさらに医療ひっ迫の度合いは激しさを増しそうです。今後、感染者が増えれば、高齢者の方であっても入院できないケースも出てくると思われます。」
第7波の原因、オミクロン株BA.5の特徴は
これほどの急激な感染は、流行の中心となるオミクロン株BA.5への置き換わりが大きな原因と見られています。
その特徴について安井医師は、「今回のBA.5は感染力が非常に強いと言えます。子どもや若い人が感染するのも特徴で、子どもであれば、幼稚園や保育園、学校などで感染し、さらに家庭内で感染が広がるということが予想されます。また、若い人は会食の場などで感染が広がっているという印象があります」
気になる症状は?
では、症状についてはどのような特徴があるのでしょうか。安井医師は、「主な症状としては、発熱が多いようです。それに伴う倦怠感や関節痛なども見られます。喉はあまり痛くならない場合もありますし、咳もそれほど出ないケースもあるようです。現状、発熱が症状としては一番目につきますし、39度を超える場合もあります」
医療機関は今・・・
日々、感染症の患者を診察している安井先生は、これ以上感染者が増えると、医療を受けられないケースも出てくるのではないかと危惧しています。
「実際、私が勤務している病院でも、新型コロナウイルスの感染者が毎日のように救急車で搬送されてきています。実は昨年も、8月をピークに新型コロナウイルス感染症の流行がありましたので、これは想像でしかありませんが、これから8月に向けてさらに感染者数が増大していくのではないかと思っています。そうなった場合、医療機関が逼迫し、患者さんに十分医療を提供できなくなる場合があるのではないかと、心配しています」
新型コロナウイルスに感染しないためには、まず換気!
新型コロナウイルスは、飛沫感染、接触感染、あるいはエアロゾル感染でうつります。エアロゾル感染とは、飛沫よりも細かい05マイクロミリメートル(0.005ミリメートル)未満の粒子がしばらくの間空気中を漂い、その粒子を吸い込んで感染します。2メートル以上離れた距離でも、感染の可能性があります。
エアロゾル感染のリスクが大きい場所は、換気が不十分な室内です。また、混雑した室内に長時間滞在することも、感染のリスクが発生します。
エアロゾル感染を防ぐためには、換気が重要です。5センチから15センチを目安に2か所の窓を常時開放することが望ましいのですが、難しい場合は、30分に1回を目安に数分間窓を全開にします。一般の家庭用のエアコンは空気を循環させるだけで、換気は行っていないので、熱中症の心配もあると思いますが、ぜひ換気を心がけてください。
手指の消毒、マスクなど、従来の感染対策も怠らずに
もちろん、従来から呼びかけられている手指の消毒、マスクなどは、接触感染や飛沫感染を防ぐのに有効です。屋外でのマスクは熱中症のおそれもあるので、はずしても構いません。ただし、近距離(2メートル以内)で会話をする場合は、マスクをした方がいいでしょう。
また、大人数や長時間に及ぶ飲食などは、感染のリスクが高まることは、以前と変わりません。また、重症化するなど、新型コロナウイルス感染症を甘く見てはいけません。新たな流行が始まった今、改めて感染対策を見直し、リスクを避け、健康な日々を送りましょう。
引用
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症について
神奈川県 新型コロナ対策と熱中症の予防―適切な換気でエアロゾル感染を防ぐ
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏