【感染症ニュース】20代男性・38.5℃発熱と下痢・腹痛 原因はサルモネラ菌?カンピロバクター? 細菌性食中毒に注意
2022年7月8日更新
半年以上前に更新された記事です。

食中毒にご注意を
食中毒にご注意を
 2022年7月に入り、全国で日中の気温が30℃を超える日が多くなりました。

 気になるのが、「食中毒」です。

 一般に、夏は細菌を原因とする食中毒が増える季節です。

 今回、取材したのは、中国地方に住む20代の男性です。

 男性は、「感染性胃腸炎」と診断され、発熱・腹痛などで、およそ1週間会社をお休みすることになったとのことです。

20代男性に取材 原因は?

 6月24日に焼き鳥を食べに行きました。

 久しぶりの外食ということも手伝い、少し、レア感があったものの、おいしい鶏肉を堪能しました。

 しかし、6月28日になり、朝から腹痛が激しくなり、トイレに駆け込むと水溶性の便。

 あわてて、病院に行きました。

 心当たりは、レアな鶏肉だけではありません。土曜日の昼にお惣菜を買ったまま、暑い中、常温で放置したものを夕食で頂いたことも頭をよぎりました。

 病院で、医師に事情を話しましたが、検査はしなかったため、何に当たったのかは、結局、よく分かりませんでした。

 医師からは、「サルモネラ菌」か「カンピロバクター」が原因ではないかと言われました。

 処方されたのは、解熱剤と整腸剤。

 診察を受けた、翌日の6月29日には、38.5℃の発熱と腹痛に悩まされました。

 診察の際に、水分補給を欠かさないよう言われていましたので、スポーツドリンクとOS1は枕元に欠かさないようにしていました。

 苦しい日々は、3日間続きましたが、7月1日になり、ようやく症状も和らぎました。

 会社には、長い間、お休みをいただく結果となりました。

 何が原因なのか分かりませんでしたが、今回の教訓は2つ。焼鳥屋さんでも、「しっかり火を通す」よう伝えること。

 暑い中、常温で、食べ物を放置しないことだと思いました。

感染症の専門医は…

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「食中毒は、細菌性・ウイルス性のものから、フグ・貝毒・有毒植物のような自然界に存在する毒素、化学物質や寄生虫によるものまで、原因は様々です。一般に、感染型細菌性食中毒では、腹痛・発熱・嘔吐・下痢などの症状がみられます。今回、経験談をお寄せくださった方は、細菌性の食中毒が疑われる事例です。症状は、比較的軽く済んだようですが、サルモネラ菌の場合は、血液に細菌が入り込むことにより、重篤な症状が出る『敗血症』を引き起こすことがあります。また、カンピロバクターの場合は、感染から数週間後に、神経伝達に障害を及ぼす自己免疫性疾患である、『ギランバレー症候群』を発症するおそれもあります。食肉には、よく火を通すようにしてください。」としています。

気温にも注意

 2022年7月8日現在、広島県などの一部自治体では、『食中毒警報』が発令されています。

 また愛知県などでは、気温が30度以上になる状況が10時間以上続くなど、食中毒が起こりやすい環境になった場合に発令されるとのことです。

 これからの季節、気温などにも注意しながら、食中毒を防ぎましょう。

サルモネラ感染症とは

 サルモネラは自然界のあらゆるところに生息し、ペット、鳥類、爬虫類、両生類が保菌している。

 とくに家畜(ブタ、ニワトリ、ウシ)の腸管内では、常在菌として保菌していることが知られている。

 サルモネラの臨床症状は多岐にわたるが、最も普通にみられるのは急性胃腸炎である。通常8〜48 時間の潜伏期を経て発病するが、最近のEnteritidis 感染では3 〜4 日後の発病も珍しくない。症状はまず悪心および嘔吐で始まり、数時間後に腹痛および下痢を起こす。下痢は1 日数回から十数回で、3〜4 日持続するが、1 週間以上に及ぶこともある。小児では意識障害、痙攣および菌血症、高齢者では急性脱水症および菌血症を起こすなど重症化しやすく、回復も遅れる傾向がある。

カンピロバクター感染症とは

 カンピロバクターは、ウシ、ブタ、ヒツジ、野鳥及びニワトリなど家禽類の腸管内に広く常在菌として保菌されている。

 症状は下痢、腹痛、発熱、悪心、 嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感などであり、他の感染型細菌性食中毒と酷似するが、潜伏期間が一般に2〜5日間とやや長いことが特徴である。感染性腸炎研究会資 料によると、入院患者の98%に下痢が認められ、その便性状は水様便(87%)、血便(44%)、粘液便(24%)である。特に粘血便がみられる場合は、 細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌、腸炎ビブリオ、サルモネラ等による腸炎との鑑別を要する。下痢は1日に10回以上に及ぶこともあるが、通常2〜6回で1〜 3日間続き、重症例では大量の水様性下痢のために、急速に脱水症状を呈する。また、腹痛は87%、嘔吐は38%にみられた。発熱時の平均体温は38.3℃ で、サルモネラ症に比べるとやや低い。

国立感染症研究所 「サルモネラ感染症とは」「カンピロバクター感染症とは」
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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