2022年6月20日、広島県内で、今年初めてとなる「日本紅斑熱」による死亡例が報告されました。
死亡したのは70代の女性で、農作業中にマダニ類に咬まれたものと見られています。
広島県で死亡例 マダニに注意
広島県によると、死亡した女性の身体には、マダニ類が吸着した跡である「刺し口」があり、「日本紅斑熱リケッチア」陽性が死亡後に検体から確認されました。
女性は、発熱・発疹・血小板減少などの症状がみられ、発症から7日目に亡くなったということです。
日本紅斑熱は、「リケッチア・ジャポニカ(Rickettsia japonica)」と呼ばれる病原体を持ったマダニ類に咬まれることによって感染しますが、ヒトからヒトへの感染はありません。
リケッチアを保有するマダニに咬まれて2~8日の潜伏期間後、頭痛・悪寒を伴い急激に高熱(38~40℃)が出た後、やや遅れて、全身に米粒大から小豆大の紅斑(こうはん)が出現します。
発疹部にかゆみや痛みが無いのが特徴だということです。
また、近年、国内では、年間200件を超える発生報告があり、死亡者も報告されています。
患者の発生は媒介ダニの活動が活発化する4~10月に見られ、特に9月、10月に多いとされます。
これからの季節、農作業や登山などでは、咬まれないよう注意が必要です。
感染症の専門医は
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「日本紅斑熱の患者は、広島のほか、大阪・兵庫などでも、今年に入って確認されています。
仕事やキャンプ・登山などで野山に入ったあと、発熱・発疹があり、刺し口が確認された場合は、日本紅斑熱を疑う必要があります。
症状は、熱が下がらずしんどい状態が続き、きちんとした診断と治療がなければ命に関わる場合もあります。
治療には、テトラサイクリン系の抗菌薬が効果があるとされています。
不安な方は医療機関を受診してください。
また、野山に入る際は、皮膚の露出が少なくなるよう、長袖・長ズボンを着用し、ダニ除けに効果のある防虫スプレーをこまめに使ってください。」とのことです。
マダニには、年齢は関係なく咬まれる可能性があります。
治療薬もある感染症なので、野山に入った後で、体調に不安を感じた方は医療機関を受診してください。
対策
ワクチンはないため、媒介ダニの刺咬を防ぐことが極めて重要である。また、発生時期および発生地を知り、野山など感染するおそれがある地域に立ち入らないことが重要である。
なお、農作業や森林作業でやむを得ず立ち入る際には、
(1) 長袖、長ズボンを着用し、サンダルのような肌を露出するようなものは履かない
(2) ダニ忌避剤を使用する
(3) 作業後早めに入浴し、ダニの付着について確認を行うことが大切である。
日本紅斑熱厚生労働省HP
取材:大阪府済生会中津病院 安井良則医師