【6月に注意!感染症ランキング】1位は新型コロナ、2位はアデノウイルスを原因とする感染症、3位はふれあい動物園で感染することも?激しい腹痛と下痢が症状の感染症がランクイン
6月に注意してほしい感染症ランキング1位から順に、流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。
【No.1】新型コロナウイルス感染症
5月25日の新型コロナの専門家会議では「沖縄県における新規感染者数は、減少傾向が見られるものの全国で最も高い状況が続いている。それ以外の地域においても、今後の感染者数の推移に引き続き注意が必要」としています。新型コロナはBA.2(オミクロン株の別系統)にほぼ置き換わっており、感染力が強いということから、マスクの着用、手指衛生、こまめな換気といった基本的な感染対策をしっかりすることが大切です。一方、専門家会議ではマスクの着用について「屋外で周囲の人と距離が十分に確保できるような場面であったり、屋外で周囲との距離が十分に取れない場面でも、周囲で会話が少ない(又はほとんどない)ようであれば、これまでどおり、マスク着用は必ずしも必要ない。ただし、屋外でも人混みでは適宜着用することが必要。また、未就学児についてはマスク着用を一律には求めず、無理に着用させないこと等について、周知内容をより明確にした上で、幅広く周知・徹底を行っていくことが必要」との見解を示しています。
【No.2】咽頭結膜熱
アデノウイルスを原因とする感染症で、ゴールデンウィーク以降、患者報告数は増えています。英国では原因不明の小児肝炎から多く検出されたウイルスとして、調査が続いています。国内では、原因不明の小児肝炎の確定例は今のところないとされていますが、夏に向けてアデノウイルスを原因とする感染症に注意が必要です。
咽頭結膜熱は、例年6月から7月にかけて流行がピークを迎える感染症です。症状は風邪とよく似ていますが、発熱、咽頭痛、結膜炎です。発熱は5日間ほど続くことがあります。眼の症状は一般的に片方から始まり、その後、他方に症状があらわれます。高熱が続くことから、新型コロナウイルス感染症とも間違えやすい症状です。吐き気、強い頭痛、せきが激しい時は早めに医療機関に相談してください。感染経路は、主に接触感染と飛沫感染です。原因となるアデノウイルスの感染力は強力で、直接接触だけではなくタオル、ドアの取っ手、階段やエスカレーターの手すり、エレベーターのボタン等の不特定多数の人が触る物品を介した間接的な接触でも、感染が広がります。特異的な治療方法はなく、対症療法が中心となります。眼の症状が強い時には、眼科的治療が必要となることもあります。
予防方法は、流水・石鹸による手洗いとマスクの着用です。物品を介した間接的な接触でも感染するため、しっかりと手を洗うことを心がけてください。
【No.3】腸管出血性大腸菌感染症
国立感染症研究所の2022年第19週(5/9~15)のIDWR速報データによると、腸管出血性大腸菌感染症の患者報告数が急に増えています。ゴールデンウィーク明けということもあり、バーベキューや飲食店など外で食べる機会が多かったことも関連しているかもしれません。例年は8月から9月に流行のピークを迎える感染症です。夏に向けて食中毒が増える季節でもあり、家庭での調理や外食の際は、肉類の取り扱いに注意が必要です。
腸管出血性大腸菌は、ウシ、ヤギ、ヒツジなどのひづめが二つに分かれているもの(偶蹄目)の腸管にすんでいる菌です。感染力が強いので、接触感染する可能性もあります。ふれあい動物園などで、ヤギやヒツジに餌やりをした後は、必ず手を洗いましょう。
感染すると3~5日間の潜伏期間を経て、激しい腹痛を伴う頻回の水様性の下痢が起こり、その後、血便が出るケースもあります(出血性大腸炎)。また、発病者の6~9%では、下痢などの最初の症状が出てから5~13日後に溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症をきたすことが知られています。
主な感染経路は飲食物を介した経口感染であり、菌に汚染された飲食物を摂取することや、患者の糞便に含まれる大腸菌が直接または間接的に口から入ることによって感染します。腸管出血性大腸菌は、中心部まで75℃で1分間以上加熱することで死滅するので、食事の際はしっかりと加熱することが基本です。肉の生食や、生焼けで食べることは避けましょう。またバーベキューや焼肉などでは、生肉を扱った箸やトングなどは生食用のものと使い分けましょう。
【No.4】梅毒
国立感染症研究所のIDWR速報データによると、2022年第19週(5/9~15)時点での梅毒の累積患者報告数は、昨年同時期と比較して増えています。今年はこのまま患者報告数が増え続けると、年末には1万人を超え、過去最多の患者報告数となる可能性もあります。性別関係なく、患者報告数が増えています。特に女性では、梅毒に感染したと気づかないまま妊娠して、先天梅毒の赤ちゃんが生まれる可能性があるので注意が必要です。妊娠中でも治療は可能です。ほとんどの産婦人科では、妊婦健診の際に血液検査してもらえます。妊娠したら必ず梅毒の検査を受けましょう。
梅毒は、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、病名は症状にみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します。感染すると全身に様々な症状が出ます。
早期の薬物治療で完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめてしまわないようにすることが重要です。また完治しても、感染を繰り返すことがあり、再感染の予防が必要です。
引用: 厚生労働省「第85回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」(令和4年5月25日)
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏