【腸管出血性大腸菌感染症】患者報告数が増加 肉を食べた後の激しい下痢に注意を
2022年5月26日更新
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激しい腹痛に注意(びせいぶつ芸能社)
激しい腹痛に注意(びせいぶつ芸能社)
 国立感染症研究所の2022年第19週(5/9~15)IDWR速報データによると、腸管出血性大腸菌感染症の患者報告数が先週よりも増えています。先週の2022年第18週(5/2~8)までの累積患者報告数は全国で285人でしたが、今週は352人となっています。

 腸管出血性大腸菌感染症の主な感染経路は、菌に汚染された生肉や加熱が不十分な肉、菌が付着した飲食物からの経口感染、接触感染です。感染すると3~5日間の潜伏期間を経て、激しい腹痛を伴う頻回の水様性の下痢が起こり、その後、血便が出るケースもあります(出血性大腸炎)。

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院に勤務する安井良則医師によると、「腸管出血性大腸菌感染症は、例年は8月~9月に流行のピークを迎える感染症です。国立感染症研究所の2022年第19週のデータでは、急に報告数が増えており、注意が必要です。GW明けに患者報告数が増えていることから、バーベキューや飲食店など外で食べる機会が増えたことも関係しているかもしれません。肉を生食や、生焼けで食べないようにしてください。しっかり中まで火を通して食べるようにしましょう」と注意を促しています。

腸管出血性大腸菌感染症の症状と合併症

 感染後3~5日間の潜伏期間を経て、激しい腹痛を伴う頻回の水様性の下痢が起こり、その後で血便となります(出血性大腸炎)。発熱は軽度です。血便は、初期段階では少量の血液の混入で始まりますが、次第に血液の量が増加し、典型例では血液そのもののような状態となります。

 発病者の6~9%では、下痢などの最初の症状が出てから5~13日後に溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症をきたすことが知られています。HUSを合併した場合の致死率は3~5%といわれています。

腸管出血性大腸菌感染症の感染経路と対策①

 主な感染経路は、腸管出血性大腸菌によって汚染された食材や水分を経口摂取することによる経口感染です。

 例年、腸管出血性大腸菌の感染者の報告数は、0~4歳児が最多です。5~9歳がこれに次いで多い状況です。感染後の発症率も9歳以下は80%前後と高くなっています。

 牛の生肉や生レバーなどの内臓は、腸管出血性大腸菌の感染の可能性があるので食べるべきではありませんが、特に保育所に通っている年齢群の乳幼児では厳禁です。特に高齢者や乳幼児と日常的に接触する職業や立場の人(家庭も含めて)、あるいは免疫力の低下した人と接触する職業・立場の人は厳に慎むべきです。

腸管出血性大腸菌感染症の感染経路と対策②

 腸管出血性大腸菌は75℃で1分間加熱で死滅するので、園児への食事はしっかりと加熱したものを供することが基本です。また焼肉などでは、生肉を扱った箸やトングなどは生食用のものと使い分けましょう。

 以前より野菜類(生野菜はもとより浅漬けなど)やそれ以外の加工食品(例:お団子の食中毒)での集団発生がみられることがあります。

 施設に提供され、そのまま加熱処理等が行われないままに供される食材の衛生管理は、納入業者と連携してしっかりと行われなければなりません。

腸管出血性大腸菌感染症の治療

 腸管出血性大腸菌感染症の治療は、点滴等による電解質や水分の補給が中心となります。

 下痢止め(止痢剤)は、腸管の内容物の停滞時間を延長し、ベロ毒素の体内への吸収を助長し、HUS(溶血性尿毒症症候群)が発生する可能性を高めてしまうとされているので、使用すべきではありません。

 抗菌薬を投与すべきか否かについては、実は意見が分かれていて、世界的にも定まってはいません。日本では早期にホスミシンを投与することでHUSの発症率を下げる可能性があるとの報告もあり、国内では抗菌薬が投与されることが多いです。

 HUSを発症した場合は、輸液や電解質の管理を厳重に行い、腎不全が悪化して尿が出なくなってきた場合は透析が必要となります。

取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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