英国の小児における原因不明の急性肝炎 検出数の70%以上がアデノウイルス 国内では同じウイルスが原因の咽頭結膜熱の増加に注意
2022年5月11日更新
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アデノン(びせいぶつ芸能社)
アデノン(びせいぶつ芸能社)
 国立感染症研究所は5月10日、複数の国で報告されている小児の急性肝炎について「英国では、126例中91例(72%)の症例でアデノウイルスが陽性であった。このうちHexon遺伝子による遺伝子型判定が行われた18例全てが41型であった。これは米国から報告された数例で確認されたのと同じサブタイプであった。英国では、1〜4歳の小児の糞便検体からアデノウイルスが検出されるなど、各地域において、このウイルスが例年の陽性率を統計的に上回っていること、2022年2月と3月にA型~E型肝炎ではない肝炎を示す疾病コードの入力件数が増加していたことが報告されている(UK HSA, 2022)」と伝えています。

 アデノウイルスについて、感染症の専門医で大阪府済生会中津病院の安井良則医師に、お話を伺いました。

例年はGW明けからアデノウイルスを原因とする感染症が流行する時期

 (安井医師)急性肝炎になっている小児の多くから、アデノウイルスが検出されていると報告されています。アデノウイルスは咽頭結膜熱や流行性角結膜炎の原因となるウイルスです。アデノウイルスと肝炎の関連性は今のところ、分かっていません。

 これから咽頭結膜熱は本格的に患者報告数が増え始める時期なので、発生動向に注意が必要です。理由として、咽頭結膜熱はアデノウイルスを原因とする感染症が流行っているという指標になります。咽頭結膜熱の患者報告数が増えてくると、もしかしたら肝炎の患者数も、さらに増えるかもしれないので要注意です。

 アデノウイルスを原因とする感染症が、小児の急性肝炎の発生に関与しているかもしれないという指摘も、一部では見られています。今後、咽頭結膜熱や流⾏性⾓結膜炎など、アデノウイルスを原因とする感染症が本格的に流行する季節にあたるので、小児の急性肝炎の増加につながらないか、発生動向を注意してみていく必要があります。

 まだアデノウイルスを原因とする感染症と、小児の急性肝炎の因果関係が解明されておらず、なぜ急性肝炎の小児がこれほど多く出ているのか、また重度の肝炎になっているのかはよく分かっていません。

 小児の重症の急性肝炎は、GOT(AST)・GPT(ALT)の数値が500 IU/L以上となり、黄疸が起こるなどの症状が出ます。肝炎で黄疸が起こるのはかなりの重度であり、そのうちの何人かは肝移植をしなければならない状態になることもあります。小児でも、重度の肝炎で死亡する例が出てきています。

 これからアデノウイルスを原因とする感染症は、本格的に患者報告数が増え始める時期なので、流行の指標となる咽頭結膜熱の発生動向に関心を払っておいたほうが良いと考えます。

咽頭結膜熱の症状

・発熱(38~39℃)
・咽頭炎(咽頭発赤、咽頭痛)
・結膜炎(結膜充血、眼痛、流涙、眼脂)

 発熱は5日間ほど続くことがあります。眼症状は一般的に片方から始まり、その後、他方に症状があらわれます。高熱が続くことから、新型コロナウイルス感染症とも間違えやすい症状です。吐き気、強い頭痛、せきが激しい時は早めに医療機関に相談してください。

感染経路

 咽頭結膜熱の感染経路は、主に接触感染と飛沫感染です。

 原因となるウイルスは、アデノウイルスで感染力は強力です。直接接触だけではなくタオル、ドアの取っ手、階段やエスカレーターの手すり、エレベーターのボタン等の不特定多数の人が触る物品を介した間接的な接触でも、感染が広がります。

治療方法

 特効薬などはなく、対症療法が中心となります。眼の症状が強い時には、眼科的治療が必要となることもあります。

予防方法

 流水・石鹸による手洗いとマスクの着用です。物品を介した間接的な接触でも感染するため、しっかりと手を洗うことを心がけてください。アデノウイルスは、環境によりますが、数日間活性を保っています。施設や家庭などで患者が発生している場合は、よく手を触れるものを中心に消毒することも、重要な予防方法となります。

引用:国立感染症研究所「複数国で報告されている小児の急性肝炎について (第2報)」(2022年5月10日)
「咽頭結膜熱とは」
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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