厚生労働省が今年4月にホームページ上に公開した「新型コロナウイルス感染症の"いま"に関する11の知識」によると、新型コロナに感染した人が、他の人に感染させてしまう可能性のある期間について、「発症の2日前から発症後7~10日間程度とされています。この期間のうち、発症の直前・直後で、特にウイルス排出量が高くなると考えられています。このため新型コロナウイルス感染症と診断された人は、症状がなくとも、不要・不急の外出を控えるなど感染防止に努める必要があります」としています。
新型コロナの感染状況は日々変化しており、新規感染者数が減少傾向に転じる日もありますが、引き続き感染予防に努めるという点で、どのような事に気をつけて過ごしたら良いのでしょうか。
大阪で新型コロナ患者の診察にあたる、大阪府済生会中津病院の安井良則医師に、現在の状況についてお話を伺いました。
オミクロン株であっても、高齢者は重症化して亡くなる方がいる
(安井医師)新型コロナはBA.2(オミクロン株の別系統)に置き換わりが進んでおり、感染力が強いということから、今一度、感染対策をしっかりすることが大切です。人と会話するときはマスクの着用、屋内では部屋の換気をこまめにしましょう。感染を予防するために、この二つは徹底してください。
軽症といっても、これはオミクロン株での話で、違う株が出てくるとまた話が違ってきます。高齢者は重症化し、亡くなる事例もありますので、高齢者のワクチン接種をすすめていくことが大事だと考えています。高齢者は特にワクチン接種で重症化を防げるので、まだ接種していない人を含め、接種してほしいです。若い人でも、高齢者に接する機会がある人はワクチン接種をおすすめします。
感染者数が減少傾向にある理由として、ワクチンの接種がすすんでいることと、人口の多い都市圏ではコロナに罹患している人が多かったので、一時的にコロナに免疫を持っている人の割合が増えたことが一因と考えられます。そのため新規感染者の数が一時的に少なくなるように思えますが、今後、時間が経つにつれて免疫が薄れ、新規感染者数が再び増えてくる可能性があります。
ワクチン接種をした上で、マスク着用や部屋のこまめな換気といった基本的な感染対策を続けていきましょう。
感染リスクが高まる「5つの場面」
今後、ゴールデンウィークで帰省や旅行といった、人の移動が増えることが予想されます。新型コロナの感染拡大を防ぐために「新型コロナウイルス感染症の"いま"に関する11の知識」によると、以下の5つの場面に注意が必要といいます。
【場面1.飲酒を伴う懇親会など】
・飲酒の影響で気分が高揚すると同時に注意力が低下する。また、聴覚が鈍麻し、大きな声になりやすい。
・特に敷居などで区切られている狭い空間に、長時間、大人数が滞在すると、感染リスクが高まる。
【場面2.大人数や長時間におよぶ飲食】
・長時間におよぶ飲食、接待を伴う飲食、深夜のはしご酒では、短時間の食事に比べて感染リスクが高まる。
・大人数、例えば5人以上の飲食では、大声になり飛沫が飛びやすくなるため感染リスクが高まる。
【場面3.マスクなしでの会話】
・マスクなしに近距離で会話をすることで、飛沫感染やマイクロ飛沫感染での感染リスクが高まる。
・車やバスで移動する際の車中でも注意が必要。
【場面4.狭い空間での共同生活】
・狭い空間での共同生活は、長時間にわたり閉鎖空間が共有されるため、感染リスクが高まる。
・寮の部屋やトイレなどの共用部分での感染が疑われる事例が報告されている。
【場面5.居場所の切り替わり】
・仕事での休憩時間に入った時など、居場所が切り替わると、気の緩みや環境の変化により、感染リスクが高まることがある。
・休憩室、喫煙所、更衣室での感染が疑われる事例が確認されている。
軽度の発熱、倦怠感など少しでも体調が悪ければ外出を控えるとともに、自治体等の方針に従って受診や検査をしましょう。オミクロン株の感染力は強く、年齢に関係なく全ての年代で感染がみられています。ワクチン接種をした上で、マスク着用や部屋のこまめな換気といった基本的な感染対策を続けていきましょう。
引用:厚生労働省(HP)「新型コロナウイルス感染症の"いま"に関する11の知識」(2022年4月版)
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏