2月16日に開催された新型コロナ対策の専門家会議では、全国の感染者数は減少傾向にあるものの、引き続き感染が継続しているため、注意が必要とされています。
【直近の感染状況の分析(第72回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードより抜粋)】
・多くの地域で、軽症・中等症の医療提供体制等のひっ迫が続いており、高齢の重症者数が増えたため、重症病床使用率の増加が続く可能性。
・今回の感染拡大における死亡者は、高齢者が中心である可能性。
・その中には、侵襲性の高い治療を希望されない場合や基礎疾患の悪化などの影響で重症の定義を満たさずに死亡する方も含まれるとの指摘もある。
・基礎疾患を有する陽性者でコロナ感染による肺炎が見られなくても、感染により基礎疾患が増悪することや高齢の感染者が誤嚥性も含む肺炎を発症することで、入院を要する感染者が増加することにも注意が必要。
・救急搬送困難事案について、非コロナ疑い事案も増加しており、通常医療、特に救急医療に対して大きな負荷がかかっている。
大阪で新型コロナ患者の診察にあたる、大阪府済生会中津病院の安井良則医師に、現在の状況についてお話を伺いました。
医療体制のひっ迫と訪問医療の必要性
(安井医師)既存株に比べるとオミクロン株は感染しやすく、広がりやすいと改めて感じます。患者数が桁外れに多くなっており、特に80代、90代の方の入院が多くなっています。
基礎疾患を持っている方はコロナ感染で持病が悪化し、入院となるケースもあります。高齢の方はコロナ感染がきっかけになって、細菌性肺炎になり、なくなられる方も増えています。
医療体制のひっ迫という言葉も聞かれますが、今まさに病院での病床数にも限りがある事、高齢者の方は移動自体が負担になるという事からも、自宅や高齢者施設でケアができるように訪問医療の体制強化など、考えなければならない局面にきています。
オミクロン株の特徴を踏まえた感染防止策
医療体制のひっ迫が続く中、感染をひろげないために私たちができることはあるのでしょうか。
2月16日の新型コロナ対策の専門家会議では、「オミクロン株においても基本的な感染防止策は有効である」として、次の点があげられました。
【基本的な感染防止策】
・不織布マスクの正しい着用、手指衛生、換気などの徹底を継続していただくことが必要。
・三つの密(密集、密閉、密接)が重なるところは最も感染リスクが高いが、オミクロン株は伝播性が高いため、一つの密であってもできるだけ避けることが必要。
・重症化予防・発症予防の観点から、ワクチンの追加接種を受けていただくことが効果的である。
【外出時について】
・外出の際は、混雑した場所や換気が悪く大人数・大声を出すような 感染リスクの高い場面・場所を避けることが必要。
・行動はいつも会う人と少人数で。飲食は、できるだけ少人数で黙食を基本とし、飲食時以外はマスクの着用を徹底することが必要。
【受診や検査について】
・ご自身やご家族の命を守るため、同時にオミクロン株による感染拡大防止のためにも、軽度の発熱、倦怠感など少しでも体調が悪ければ外出を控えるとともに、自治体等の方針に従って受診や検査をすることが必要。
引用:「第72回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」(令和4年2月16日開催)
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏