【感染症専門医が回答】急な嘔吐や下痢 家庭内や集団生活で人から人への感染に注意
2021年12月24日更新
イーコリとノロロン(びせいぶつ芸能社)
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 11月から12月にかけて、感染性胃腸炎の一つであるノロウイルス感染症の患者報告数が増え始めます。

 一方で、腸管出血性大腸菌の一つであるO157による感染症も、下痢などの症状が似ているため、違いが知りたいというご意見が「感染症・予防接種ナビ」に寄せられました。

 この疑問に感染症専門医で、大阪府済生会中津病院に勤務する安井良則医師に、ご回答いただきました。

菌とウイルスの違い

 O157などの(腸管出血性大腸菌感染症)は、有蹄類と呼ばれるひづめを持つ牛や羊の腸管にすんでいる菌が主な原因です。

 牛や羊の生肉や生レバーなどの内臓を加熱不十分で食べることにより、感染します。もしくは牛・羊由来の糞便が付着し汚染されたものからの糞口感染もあります。さらに、既に感染している人の手指を介した接触感染や、菌がのこっている糞便が付着し、糞口感染による二次感染も考えられます。

 (ノロウイルス感染症)は、ウイルスが原因です。既に感染している人の手指、吐物などの排出物によるヒトからヒトへの二次感染がもっとも多い感染経路です。ウイルスがのこっている糞便を介した、糞口感染による可能性も考えられます。ノロウイルスに汚染された貝類や食物を加熱不十分で食べて、感染した事例もあります。

潜伏期間

 (腸管出血性大腸菌感染症)が3〜5日、(ノロウイルス感染症)は1〜2日と短期間で症状が出ます。

おもな症状

 (腸管出血性大腸菌感染症)は激しい腹痛を伴う水溶性の下痢、その後に血便が出ます。重症化した場合、溶血性尿毒症症候群(HUS)などの合併症により、命の危険があります。

 (ノロウイルス感染症)は、1日に数回〜10回ほどの嘔吐・下痢が続きますが、症状は短期間であり、予後はおおむね良好です。

治療方法

 どちらも特異的な治療薬はなく、脱水症状にならないよう、電解質を含んだ水分補給などの対症療法が中心となります。通常、下痢止めは菌やウイルスを体内にとどめてしまうおそれがあるため、用いません。

予防方法

 どちらも流水と石鹸での手洗いを入念にしましょう。加熱用の食材は中心部まで加熱することが大切です。

 (腸管出血性大腸菌感染症)は、調理器具を加熱用と生食用のもので使い分けてください。使用後は、熱湯での消毒やアルコール系消毒剤による消毒も効果的です。

 (ノロウイルス感染症)には、アルコール系消毒剤での消毒はあまり効果がありませんので、次亜塩素酸ナトリウム系(塩素系消毒剤)で消毒しましょう。ノロウイルスは少量のウイルスでも感染がひろがります。二次感染を防ぐために、患者の汚物処理の際は次亜塩素酸ナトリウム系(塩素系消毒剤)で、しっかりと拭き取り消毒をしましょう。

引用:厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」
「腸管出血性大腸菌Q&A」
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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