例年、12月はノロウイルス感染症の患者報告数が増え始めます。
国立感染症研究所の第48週(11/29~12/5)のデータによると、ノロウイルス感染症を含む感染性胃腸炎の定点当たり報告数は、増え始めています。
地域別にみると、埼玉県(9.09)、長崎県(9.02)、福岡県(8.73)の順に、患者報告数が多い県となっています。
感染性胃腸炎、特にノロウイルス感染症の流行について、大阪府済生会中津病院の安井良則医師に取材しました。
ヒトからヒトへの感染により広がっていく
(安井医師)感染性胃腸炎の患者報告数が増え始めているとのことですが、この時期は特にノロウイルスによる感染が増えていると考えられます。
ノロウイルス感染症の原因としては、ヒトからヒトへの感染により広がっていくことがほとんどです。ヒトの体内で増殖したノロウイルスが、手指を介して食品に付着し、汚染された食品を食べた人が感染します。
ノロウイルス感染し、発症した人の吐物・糞便に含まれるウイルスの二次感染も考えられます。患者の吐物などの適切な処理がされず、その場に残ったウイルスがホコリとともに舞い上がったものを吸い込んで、感染する場合もあります。
調理に関して、加熱が必要な食品は、85℃以上で1分以上しっかり加熱しましょう。
また、患者の吐物・糞便の処理には、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系消毒剤)を使用し、ウイルスが残らないよう拭き取り消毒をして、二次感染を防ぎましょう。
ノロウイルスに関連する汚物の処理
ノロウイルスに関係していると考えられる嘔吐物や下痢便を発見した場合には、しっかりとペーパータオル等で拭き取り、取り除いたあとの場所を次亜塩素酸ナトリウム(塩素系消毒剤)でしっかりと消毒することが大切です。
(1)嘔吐物や下痢便の処理をする時には、マスク、手袋、ゴーグルなどをして、直接ウイルスが体につかないようにする。
(2)処理をする人以外を近づけないようにする。
(3)嘔吐物や下痢便をペーパータオルなどでよく拭き取り、ビニール袋に入れて密封してから捨てる。
(4)汚物を取り除いた後の床には、まだノロウイルスが残っているので次亜塩素酸ナトリウム(塩素系消毒剤)で消毒する。家庭用の塩素系漂白剤の原液を水で薄めたもので消毒剤ができる。(10倍以上に薄めて、濃度500ppmで消毒)
(5)汚物のあった場所を中心に広い範囲を消毒する。ノロウイルス感染症を発症されている方は体のあちこちにウイルスが付着しているのでドアノブ、階段の手すり、トイレの便座なども次亜塩素酸ナトリウム(塩素系消毒剤)でこまめに拭き取り消毒する。
(6)タオルは別々に使い、使いまわしを避ける。
もし、嘔吐物や下痢便が服についてしまったら、捨てるか、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系消毒剤)につけるか、85℃以上の熱湯で煮沸消毒を行いましょう。
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏