国立感染症研究所によると、感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第43週(10/25~31)以降、増加が続いています。都道府県別の報告数が多い順は、福岡県(7.59)、埼玉県(7.04)、熊本県(6.54)です。
感染性胃腸炎は、細菌又はウイルスなどの感染性病原体による嘔吐、下痢を主症状とする感染症です。原因はウイルス感染(ロタウイルス、ノロウイルスなど)が多く、毎年秋から冬にかけて流行します。特に冬季は、ノロウイルスが原因とされる集団感染が多く発生しています。
ノロウイルス感染症のおもな症状
主な症状は、吐き気、嘔吐および下痢です。通常は便に血液は混じりません。発熱は軽度です。小児では嘔吐が多く、嘔吐・下痢は一日数回からひどい時には10回以上の時もあります。感染してから発病するまでの潜伏期間は1~2日と他の感染症と比較して短い方であり、症状の持続する期間も数時間~数日(平均 1~2 日)と比較的短期間です。
既に他の病気があったり、大きく体力が低下している等がなければ、重症化して長い間入院しなければならないことはまずありません。ごくまれに嘔吐した物を喉に詰めて、窒息することがありますので注意してください。
保育園等では、集団感染が発生する可能性もあるため注意しましょう
感染性胃腸炎の現在の状況について、大阪府済生会中津病院の安井良則医師に取材しました。
(安井医師)国立感染症研究所の第47週(11/18~28)のデータでは、全国的に患者報告数が増えています。
12月に入って、さらに感染性胃腸炎の報告が増えると予想されます。この時期、保育園等の集団生活では、乳幼児や1歳児を中心に流行します。
ノロウイルスが原因とされる集団感染が発生する可能性もありますので、要注意です。
例年、12月は患者報告数が増えますが、去年流行していなかったため、確実に多くなると考えられます。
特にノロウイルスにアルコール消毒は効果的ではないため、塩素系の消毒剤でしっかりと消毒することなど、基本的な感染対策を確認し、徹底しましょう。
ノロウイルス感染症による汚物の処理方法
ノロウイルスに関係していると考えられる嘔吐物や下痢便を発見した場合には、しっかりとペーパータオル等で拭き取り、取り除いたあとの場所を塩素系の消毒剤でしっかりと消毒することが大切です。
(1)嘔吐物や下痢便の処理をする時には、マスク、手袋、ゴーグルなどをして、直接ウイルスが体につかないようにする。
(2)処理をする人以外は近づかない。
(3)嘔吐物や下痢便をペーパータオルなどでよく拭き取り、ビニール袋に入れて密封して捨てる。
(4)汚物を取り除いた後の床には、まだノロウイルスが残っているので塩素系消毒薬で消毒する。
家庭用の塩素系漂白剤の原液を水で薄めたもので消毒剤ができる。(500mlのペットボトルに水を入れて、キャップ1杯の原液を加えると、およそ100倍に希釈した消毒液ができる。塩素濃度は約200ppm)
(5)汚物のあった場所を中心に広い範囲を消毒する。あちこちにウイルスが付着しているので、ドアノブ、階段の手すり、トイレの便座なども塩素系の消毒剤でこまめに拭きとり消毒する。
(6)タオルは別々に使い分ける。
ノロウイルス感染症にかかった人に対して注意すること
嘔吐、下痢をすることによって脱水症状になってしまうので、できるだけこまめに水分を与えることが一番大切です。
非常にまれですが、上を向いたまま寝ていて、嘔吐をしたことによって嘔吐物を喉に詰めて窒息する例があります。特に小さなお子さんや高齢者の場合、あお向けではなく横を向いて寝かせてあげてください。
◇感染症・予防接種ナビでは、みなさまから感染性胃腸炎(の経験談を募集しています。
引用:厚生労働省「感染性胃腸炎」
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏