【感染症ニュース】「Go To Eat」再開 ワクチン反対派だった32歳・女性飲食店従業員が思うこと 接客業に携わる方の感染対策は
2021年11月19日更新
半年以上前に更新された記事です。

 2021年10月から国が再開した「Go To Eat」キャンペーンは、感染対策に取り組む飲食店や、食材を供給する農林漁業者を応援するものです。

 参加対象となっている飲食店には、消毒液の準備や徹底した換気などが求められます。自粛生活が続いた利用者にとっては、プレミアム付き食事券の販売や、オンライン飲食予約サイトでポイントが付与されるため、うれしい話かもしれません。

 一方で、対象となる事業者は、どのように思っているのでしょうか。

 中国地方に住む、飲食店に勤務する32歳の女性を取材しました。

飲食店従業員

 イタリアンレストランに勤務し、接客に従事しています。

 勤務先の飲食店は、お客さんとの距離も近く、従業員との会話を楽しむために来店されるお客様も、コロナ流行前は、数多くいらっしゃいました。

 しかし、2020年4月の緊急事態宣言以降、客足は遠のき、お店自体も休業と再開を繰り返すなど、苦しい時期が続きました。

 2021年10月の緊急事態宣言明けから、徐々にお客さんは戻りつつありますが、不安なのは、経営だけではありません。

 やはり、サービス業なので、従業員とお客様の間で感染が拡がることを恐れています。

 常連さんも多く、健康に関する話題なども出るので、基礎疾患をお持ちの方がいらっしゃることも知っていましたが、感染されないよう祈ることしかできませんでした。

ワクチン接種について

 ワクチンについて、私は夏ごろまで接種する気は、全く起きませんでした。

 理由は、「新しいものを接種する怖さ」と「副反応が起きたときに、働けるか不安があった」からです。

 ワクチン自体への怖さもありましたが、「副反応」が長引いたときに働けなくなる不安は、大きかったです。

 飲食店の仕事は激務で、8時間立ち続けての接客もザラですし、お店は休業していても、再開に向け、バックヤードで倉庫や在庫の管理などもしなくてはなりません。収入面での不安もあったので、やはり接種を決意できずにいました。

動機

 思いが接種に傾いたのは、緊急事態宣言があける前の2021年9月頃です。

 「ワクチン検査パッケージ」に関するニュースを見たとき、来店されるお客さんは、接種証明の提示などが必要とされていましたが、従業員の接種については触れられていませんでした。

 「GoToEat」はお客さんの接種証明は必要ないかもしれませんが、お迎えする側として、GoToEatの対象店舗になるなら、従業員のワクチン接種は必要かなと思います。

 新型コロナウイルスの感染ルートは、お客様同士もありますが、従業員とお客様での感染の可能性もあります。大切なお客様を守るためにも、従業員もワクチン接種が必要なのではないかと思いました。

 迷いはありましたが、お客さんに快適な時間と場所を提供したい思いで、この仕事に就いたことや、再開後に来店されるお客さんの安全も考え、接種を決意しました。

 お客さんには接種を求めるのに、従業員が接種しない訳にはいきませんので。

接種

 接種は、自治体の行う集団接種でした。予約が取りづらいと聞いていましたが、平日であればインターネットで意外とすぐに予約がとれました。

 申し込んだ自治体は、新規受付が10月末で一旦停止となっていたので、タイミング的にはよかったと思います。

 一方で、接種後の副反応か、翌日から接種部位の筋肉痛や38℃台の発熱があり、仕事を2日間ほど休む結果になってしまいました。

 2度のワクチン接種は、お店が休業中だったこともあり、ワクチン休暇もすんなりともらえました。

 副反応については、恐れていたほどでは無かった印象です。

感染対策として

 従業員同士でも、ワクチンについて話す機会がありましたが、職場では「自己判断」となりました。

 しかし、私の周りの従業員のほとんどが、「Go To Eat」再開前に接種を済ませました。サービス業に関わる方は、お客さんと、会話をしたり、何らかの接点があると思います。

 どれだけ感染対策をしていたとしても、自分が無症状のままお客さんに広めてしまう可能性もあるでしょう。

 仮に感染しても重症化が予防できるなら、ワクチン接種はお互いにとって安心材料になると思います。

 ワクチン反対派で、ギリギリまで接種しなかった私が言うのは、少しおこがましいかもしれません。

 コロナ前のお客さんとの日常を取り戻していくためにも、接種できる方は、打った方がいいのかなと思います。

コロナ感染者の治療にあたる医師からは

 新型コロナ患者の治療にあたる、大阪府済生会中津病院の安井良則医師からは、接客業に携わる方を含め、周りの方が感染するリスクを減らすためにも、ワクチン接種の検討をすすめています。

 (安井医師)飲食業など不特定多数との接触のあるお仕事の方は、特にワクチンを接種してほしい業種の一つです。

 様々な方が、来店されると思いますが、感染者を見分けることは難しいです。

 感染機会は多いと認識した上で、自分や周囲を守るためにも、接種をご検討頂きたいと思います。

 また、従業員の方は、お客さんに検温や手指衛生を求める立場でもあります。

 快適な空間を提供するためにも、お店でクラスターが発生しないためにどのような配慮をすべきか、もう一度、見直してみることも大切かもしれません。

Go To Eatキャンペーン事業

 2020年10月に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う外出の自粛などの影響により、売り上げが落ち込んでいる飲食業に対し、Go To Eatキャンペーン事業が、各自治体で開始されました。しかし新型コロナの感染拡大を受け、2か月後の12月から食事券の販売が停止されていました。

 各自治体により、対応は異なりますが、新規感染者数が減少したことやコロナワクチンの接種が進んでいることから、Go To Eatキャンペーン事業を再開しています。

◇感染症・予防接種ナビでは、新型コロナウイルスに感染した方や新型コロナワクチンを接種した方からの経験談を募集しています。

取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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