国立感染症研究所の第43週(10/25~31)のデータによると、手足口病の感染報告数は、全国では少し減少に転じているものの、警報レベルの5人を超える数値の地域もみられます。
特に九州地方では佐賀県や宮崎県などで報告数が多く、引き続き注意が必要です。
手足口病の地域別・定点当たり報告数(10/25~31)
※定点当たり報告数とは、全国の医療機関の中から、感染症発生動向調査の観測用に抽出された医療機関を定点と呼びますが、その週(又は月)に定点一つ当たりでどの位の患者報告数があったかを表す数値です。
・佐賀県(8.87人)
・宮崎県(8.61人)
・長崎県(6.77人)
・大分県(6.22人)
・熊本県(5.84人)
・福岡県(5.74人)
手足口病は、夏場に多く見られる感染症で、例年は7月下旬に感染者数のピークを迎えます。しかし、2021年は8月中旬より流行をみせはじめました。
この点を、感染症専門医で、大阪府済生会中津病院に勤務する、安井良則医師にお話を伺いました。
いつ終息するのか
(安井医師)10月ごろに少し寒くなりはじめたことで、「夏かぜ」といわれる手足口病の感染者数が少なくなるように感じましたが、まだ西日本では注意が必要です。
ことしの夏に季節外れで流行したRSウイルス感染症のように、いつ流行して、いつ終息するのか予測がつかない状況となっています。
緊急事態宣言が明けたことで、人の動きが活発化してくると、各地に感染症が広がっていくおそれがあります。人の動きに合わせウイルスも広まります。
流行地に近い県や地域では、引き続き注意が必要です。
現時点では東日本で手足口病の流行はみられませんが、もし、東日本に感染症がひろがってしまうと、国内での流行の期間が長引く可能性も考えられます。
手足口病は、飛沫やウイルスの付着した人や、ものとの接触などにより感染します。手指衛生や、マスクの着用など、基本的な感染対策を引き続きおこなっていただきたいです。
予防方法は
一般的な感染対策は、手洗いをしっかりとすることと、排せつ物を適切に処理することです。
特に、保育施設などの乳幼児の集団生活では、感染を広げないために、職員と子ども達が、しっかりと手洗いをすることが大切です。
おむつを交換する時には、排せつ物を適切に処理し、しっかりと流水と石けんで手洗いをしてください。また、タオルの使いまわしは避けましょう。
手足口病は、治った後も比較的長い期間、便の中にウイルスが排せつされます。また、感染しても発病しないままウイルスを排せつしている場合もあると考えられることから、日頃からのしっかりとした手洗いが大切です。
◇感染症・予防接種ナビでは、皆さまからの手足口病の経験談を募集しています。
厚生労働省「手足口病に関するQ&A」
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏