季節性インフルエンザワクチンの予防接種が各地で開始されています。
厚生労働省は、季節性インフルエンザワクチンの供給に関して、2021年10月時点で、最新の供給予定量は約2,818万本の見込みとしています。新型コロナワクチン製造の影響で、供給量の多かった2020年よりも少し少ない供給量となり、供給時期も例年より少し遅めの12月中旬まで、継続的に供給されます。
毎年、インフルエンザワクチンを接種するべきか、迷っているという方もいらっしゃるかと思います。
冬になると、インフルエンザワクチンの接種が行われていますが、毎年打つのはどんな理由があるのでしょうか。また、接種しても感染する場合もありますが、ワクチンの効果はあるのでしょうか。
このような疑問に、感染症専門医で、大阪府済生会中津病院に勤務する、安井良則先生にお答えいただきました。
感染症の専門医の見解
(安井医師)現在のインフルエンザの流行状況は、国立感染症研究所の発表によると全国で10人ほどです。
一方で、WHOのインフルエンザ調査によると、中国でインフルエンザB型の流行がみられはじめました。
2020年は感染者数が少なかったものの、2021年は北半球では感染者数の報告が増え始めています。日本でも例年、流行する時期に入りますので、経過を見ていく必要があります。
ワクチンを毎年打つ理由ですが、インフルエンザウイルスは常に同じ型が流行するわけではありません。
ウイルスは、常に変化を続けており、以前に接種したワクチンの免疫では、発症を防ぎきれない可能性があります。
ワクチンもウイルスの変化に合わせてアップデートしていかなければなりません。
また、ワクチンの抗体価が、約5か月で低下することも毎年打つ理由のひとつです。
日本でのインフルエンザ流行時期は、例年12月から3月ですので、流行に備えて各医療機関では、10月くらいから接種を開始しています。流行が始まる12月までに接種し、ワクチンが効くようにしておくことが大切です。
ワクチンを接種しても、感染する場合があるのはなぜかという質問ですが、これは基本的にインフルエンザワクチンは感染を予防するワクチンではなく、発症を抑えるワクチンだからです。発症した場合には、重症化を防ぐ役割もあります。
ワクチンを接種したから何もしなくても大丈夫というわけではないので、うがいや手洗いの励行、マスクの着用や、流行時には人混みを避けるなど、基本的な感染対策が大切です。
流行前にワクチン接種の検討を
昨シーズンにインフルエンザの流行がみられなかったため、まだインフルエンザに一度もかかったことのないお子さんは、免疫がないと考えられます。初めてかかった時に、インフルエンザ脳症など重症化のおそれもありますので、流行前にワクチンを接種し、免疫をつけておくことをおすすめします。
引用:厚生労働省「ワクチンの供給状況について-インフルエンザ」
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏