内閣府によると、10月27日時点での国内のワクチン2回接種率は70.1%です。そのうち20代の2回接種率は57.06%と、以前よりもワクチンの接種率が伸びています。
一方で、ワクチンを接種した若者たちの中には、ワクチンの長期的な影響などのデータがまだ出ていない中の接種ということに、不安を覚える方もいるそうです。しかし、学校や職場での集団接種で、周りが打つから自分も打たなければいけないのではないかという気持ちで、接種したという方もいらっしゃるかもしれません。
今回は大学3年生で、就職活動中の女子大生に取材しました。
長期的な影響のデータがなくて心配
初めての接種前は、大学の友人とワクチンについて話す機会も多かったです。
一方、内容はSNSで得た知識が中心で「体に磁石が付くようになる」などの荒唐無稽なものから、「不妊になる」と言ったものまで様々でした。
そんなことは無いと頭では分かりつつも、漠然とした不安があったのも事実です。副反応はある程度、SNSやニュースで知っていましたが、長期的な影響などの情報が少ない中で、接種にためらいを感じる友人もいました。
それでも、ワクチンを接種したのは、大学の専攻科目で、病院や学校で実習があるため、出先での感染予防も含めて「接種しておくに越したことはない」と感じたためです。
接種と副反応
モデルナワクチンの集団接種を大学で、6月末に受けました。当時、ニュースでもモデルナワクチンの副反応の情報が多く、取り上げられており、接種前に不安はありました。
しかし、両親からの勧めもあり、接種に踏み切ることができました。両親や祖父母はファイザー製のワクチンを接種していましたので、モデルナ関連の副反応が大きく報道される事もあり、少し心配していたようです。
帰省見合わせで顔を合わせていないこともあり、早く接種してほしい気持ちもあったのかもしれません。
自身は不安の中での初回接種でしたが、副反応と思われるのは腕の痛み程度でした。
2回目は、腕の痛みに加え、気怠さと発熱がありましたが、幸いにも37℃台で収まりました。副反応について、身構えていた分、「こんなものか」程度でしたね。
一方、友人は、39℃台の発熱があった人もいたので、副反応と思われるものにも個人差があるのだなとも感じました。
就職活動への影響
大学3年生になり、現在は就職活動をしています。本来であれば、面接前に企業の活動などを実地で学べるインターン制度も、オンラインばかりです。
大学の講義など、オンラインは便利な面もありますが、やはり、就職先の雰囲気や設備、周りの環境やどんな仕事をしているかなど、画面だけでは分からないことも多いです。
就職活動は、人生を左右する大切なイベントです。
コロナ禍での採用で企業の方も大変かと思いますが、担当者の方には、就活生が何を求めているのか、知っておいて欲しいと思います。
大学時代
思い返せば、大学時代は、2年生からオンライン授業でした。サークル活動も大学側からの要請で休止となり、思い出らしい思い出が作れていません。
進学に合わせて、一人暮らしをしていますが、一人の時間が長くなりました。1人での時間を有意義に過ごすため、料理などの趣味を楽しみました。
10月に入り、緊急事態宣言も明け、徐々に飲食店も再開するなどしています。先日、友人と久しぶりに街中に出かけましたが、以前のように気軽に外食することができなくなりました。
友人と「GO TOキャンペーン」が再開したら、どこかに行きたいねとの話も出ますが、具体的な日程や、旅行先が挙がるわけでもありません。
まだ、心のどこかで警戒感が解けていないのかもしれません。
3回目接種は必要なのか迷っている
コロナワクチンは新しい種類のワクチンということもあり、正直不安の方が大きかったです。インフルエンザのワクチンなら、前からあるし、毎年打つ人もいるから怖くないと思います。
ワクチンは周りが打つから打たなければと言う気持ちで接種した人も多かったです。私は、自分の意思で接種しましたが、周りに感染した人もいないので、「打たなくてもよかったのでは?」と言う気持ちもあります。
3回目接種の話が出ていますが、そんなにたくさん回数を打って、効果があるのかなと思います。
自分自身が、すごくいいものだと感じた訳ではないので、周囲に勧めることもないですし、接種希望者を止める感じでもないです。
新型コロナ患者の診療にあたる医師は
コロナ患者の診察にあたる、大阪府済生会中津病院の安井良則医師に、3回目接種についてのお話を伺いました。
(安井医師)3回目の追加接種については、医療関係者からの接種を見込んでいますが、その他、どのように進めて行くのか、現状では分かっていません。
効果についても、海外での報告はありますが、これから国内でも見極めていく必要があります。
日本で承認されているコロナワクチンについては、2回の接種で、高い重症化予防効果などをみて取れました。3回目の接種でも、抗体価が高くなることに疑いはありません。
一般にワクチンについては、B型肝炎やお子さんの定期接種などでも複数回、必要なものも多くあります。どのワクチンであっても、時間の経過とともに抗体価は落ちて行きます。
若い世代の方は、仮に感染したとしても「自分たちは軽く済むだろう」と思われるかもしれません。
しかし、臨床の現場では、20代でも重篤化するケースも目にしました。新型コロナウイルス感染症は、どの世代であっても、警戒を要します。3回目の接種で備えておくことは、大切です。
今後、海外への渡航の際などに接種証明が必要になる可能性もありますし、帰省などの際に、自分と周りの方が接種を済ませていれば、万が一、感染したとしても重症化は防げる可能性が高いです。
若い世代に心筋炎などの副反応がみられた事例などもありますが、接種の効果と比較しながら、検討を進めてみてはいかがでしょうか。
<おことわり>ご紹介する経験談は、あくまでも個人の症状や意見です。
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取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏