国立感染症研究所によると、第38週(9/20~26)までの手足口病の報告数が、九州地方の一部で増加傾向となっています。
先週の37週(9/13~19)の報告数より、増加傾向がみられたのは、九州地方では鹿児島県と熊本県を除く5県です。
熊本県では36週(9/12~19)まで手足口病が県内で流行しましたが、その後は緩やかに減少傾向となっています。
一方、大分県では、定点当たりの報告数が、先週の4.56人から2倍近くの8.44人と報告されており、注意が必要です。
今シーズンの手足口病の流行について、感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院に勤務する安井良則医師に、お話を伺いました。
手足口病の全国的な流行に注意
(安井医師)国立感染症研究所が公表した第38週(9/20~26)のデータは、医療機関の休診が多いシルバーウィークにあたる週ですので、本来であれば、患者数の報告が少ない時期です。
今シーズンは、報告数がかなり上がっていることから、手足口病の流行に注意すべきです。
現在の流行の中心地は九州地方ですが、九州地方から中国地方や四国地方、近畿地方へと、徐々に大都市圏を中心に広がっていくことが懸念されます。
手足口病も季節性インフルエンザなどと同じく、ここ2シーズンは流行していませんでした。
しかし今年はRSウイルス感染症のように、ひとたび流行が始まると、全国的に大流行となるおそれもありますので、引き続き注意が必要です。
手足口病とは
手足口病は、口の中や、手足などに水疱性の発疹が出る、ウイルスの感染によって起こる感染症です。子どもを中心に、主に夏に流行します。
感染経路は、飛沫感染、接触感染、糞口感染(便の中に排泄されたウイルスが口に入って感染することです)が知られています。
特に、この病気にかかりやすい年齢層の乳幼児が集団生活をしている保育施設や幼稚園などでは注意が必要です。
理由は、子ども達同士の生活距離が近く、濃厚な接触が生じやすい環境であることや、衛生観念がまだ発達していないことから、施設の中で手足口病の患者が発生した場合には、集団感染が起こりやすいためです。
また、乳幼児では原因となるウイルスに感染した経験のない者の割合が高いため、感染した子どもの多くが発病します。
感染してから3~5日後に、口の中、手のひら、足底や足背などに2~3mmの水疱性発疹が出ます。発熱は約3分の1にみられますが、あまり高くならないことがほとんどであり、高熱が続くことは通常はありません。
ほとんどの発病者は、数日間のうちに治る病気です。
しかし、まれですが、髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症のほか、心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺など、さまざまな症状が出ることがあります。
なお、近年、コクサッキ―ウイルスA6感染により手足口病の症状が消失してから、1か月以内に、一時的に手足の爪の脱落を伴う症例も報告されていますが、自然に治るとされています。
「感染症・予防接種ナビ」にも、大分県から、手足口病に感染された方の経験談が寄せられました。
大分県 のび犬さん 26歳
1日目…深夜に悪寒で目が覚める。この時点では発熱なし。暖かい格好をして眠る。嘔吐と下痢の症状も出る。
2日目…内科受診。この時38℃まで発熱。血液検査及び診察結果から腸炎と診断。抗生物質と解熱剤を服用する。
嘔吐及び下痢は無くなったが、熱だけは下がらずに40℃前後をうろうろするようになる。
3日目…腸炎ではないと思い、再度、内科受診。
少し喉に腫れが見られたため、喉の炎症を抑える薬と抗生物質、解熱鎮痛剤を処方され、服用する。発熱はこの時から落ち着きだした。
4日目…喉の痛みが酷くなる。解熱鎮痛剤の効果もほとんど感じられず、食べ物はうどん、そうめんなどと流動食しか食べられなくなる。
この日の夕方頃、手足に数個、発疹を確認。夜には手のひらや足の甲、口唇や喉に多数の水疱や発疹を発見。
5日目…手足口病と確定診断をうける。喉の痛みはさらに激しくなり、夜中に喉の痛みで何度も目を覚ますように。つばを飲み込むことも耐え難い苦痛でした。
6日目…症状変わらず。
7日目…少し症状が落ち着き始める
8日目…さらに症状がやわらぎ、刺激物以外は口に出来るようになる。
9日目…8日目と同じ
10日目…まだ発疹や水疱は残るが、感覚的にはピーク時の10分の1程度、症状は落ち着く。
まだ発疹は完全に消えておりませんが、現在は日常生活を送っております。
ちなみに会社は、トータルで5日休みました。
発熱時は一時40℃超えの状態にまでなり、明らかに普通の風邪とは違う感じでした。
現在は有効な治療法も無く、対処療法のみで本人の免疫力を頼りに治すしかない病気のようなので、まずはこの病気にかからない、発症させないことが大事だと思います。
ストレスを溜め込まず、しっかり食事を取り、しっかり休息を取ること。
そして子供の使った食器類は使わない。残したご飯を食べない。
鼻水やよだれなど拭き取った後は、消毒なり手洗いなり絶対にする。
オムツやトイレのお手伝い後も、消毒、手洗いをする。
以上は、最低限意識して、心掛ける必要があります。手足口病、なめてました。
手足口病の予防対策は
一般的な感染対策は、接触感染を予防するために手洗いをしっかりとすることと、排泄物を適切に処理することです。
特に、保育施設などの乳幼児の集団生活では、感染を広げないために、職員とこども達が、しっかりと手洗いをすることが大切です。
おむつを交換する時には、排泄物を適切に処理し、しっかりと手洗いをしてください。
手洗いは流水と石けんで十分に行ってください。また、タオルの共用はしてはいけません。
手足口病は、治った後も比較的長い期間便の中にウイルスが排泄されますし、また、感染しても発病しないままウイルスを排泄している場合もあると考えられることから、日頃からのしっかりとした手洗いが大切です。
◇感染症予防接種ナビでは、みなさまから手足口病の経験談を募集しています
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
引用:厚生労働省「手足口病に関するQ&A」