冬になると、毎年のように流行する季節性インフルエンザですが、ここ2年ほど流行がみられません。
昨年は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、マスク着用や手指の消毒といった、基本的な感染対策をしている人が多く、それによって季節性インフルエンザの目立った流行がみられなかったという見方もあります。
季節性インフルエンザは毎年世界中で流行し、日本での流行は、例年11月下旬から12月上旬にかけて始まり、1月下旬から2月上旬にピークを迎え、3月頃まで続きます。
厚生労働省は、季節性インフルエンザを予防する有効な手段として、流行前のワクチン接種や、外出後の手洗い等をあげています。通常は、12月中旬までにワクチン接種を終えることが望ましいとされています。
一方で、新型コロナワクチンの接種もすすめられている今、インフルエンザのワクチンはいつ打つべきなのでしょうか。また、同時期に打つことはできるのでしょうか。
この点について、感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則先生にお話を伺いました。
インフルエンザワクチンについて
(安井医師)季節性インフルエンザのワクチンと、新型コロナワクチンの同時接種については、9月17日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の中で提言をまとめました。
その資料によると、「新型コロナワクチンと他疾病のワクチン(季節性インフルエンザワクチン等)との同時接種に関しては、安全性に関する十分な知見が得られていないことから、現時点では原則として13日以上空けることとする」とされています。
あくまで、現時点での見解ですので、資料では「更なる科学的知見を収集し、一定の接種間隔をおくか否か引き続き検討する」と続けています。
季節性インフルエンザワクチンの接種時期に関して、新型コロナワクチンを既に接種済みの方は、インフルエンザの本格的な流行前に、早めに接種することをおすすめします。また、これから新型コロナワクチンを受ける予定のある方は、原則13日以上あけてからインフルエンザのワクチン接種が可能となります。
ここ2年は季節性インフルエンザの本格的な流行がみられなかったことで、新生児や幼児は、感染したことがない可能性が考えられます。そのため、インフルエンザにかかったことのない子どもが、初めて感染した場合、症状が重くなりやすいです。
特に、幼稚園児や小学校低学年の子どもは、インフルエンザにかかりやすく、そこから感染が広がりやすい傾向にあります。今年、大流行したRSウイルス感染症のように、ひとたび流行すると、またたく間に感染がひろがりますので、注意が必要です。
重症化を防ぐためにも、インフルエンザワクチンの接種をおすすめします。
インフルエンザワクチンの供給量は…
厚生労働省によると、今冬のインフルエンザシーズンのワクチンの供給予定量は、令和3年8月時点で、約2,567 万本から約2,792万本の見込みとしています。
昨年は、10月第5週の時点で、供給量全体の90%程度のワクチンが出荷済みでしたが、今冬はこれよりも遅れたペースで供給される見込みで、11月から12月中旬頃まで継続的にワクチンが供給される予定としています。
ここ2年、流行がみられなかったことで、今シーズンは流行する可能性も考えられる季節性インフルエンザですが、今年はRSウイルス感染症や手足口病のように、季節外れで感染症が流行するケースもみられています。
本来の流行シーズンではないところで、流行して感染するおそれもありますので、手洗いの励行など基本的な感染対策を行いつつ、インフルエンザのワクチン接種も含めて、検討されることをおすすめします。
引用:厚生労働省「インフルエンザQ&A」
「季節性インフルエンザワクチンの供給について」(令和3年9月10日通知)
「第24回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会」(令和3年9月17日開催)
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏