【新型コロナウイルス感染症】第5波の特徴とこれまでの流行の違いについて
2021年9月2日更新
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全国の新型コロナウイルスの新規感染者数の推移
全国の新型コロナウイルスの新規感染者数の推移
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 新型コロナウイルス感染症の第5波が到来しています。大阪府でも、新規感染者数が増加傾向にあります。私が診療にあたる患者は、現状20代から50代が多く、60代以上の高齢者はいません。最近は、高齢者施設での集団感染事例を耳にすることも少なくなりました。これは、ワクチンが高齢者から接種され始めたことから、接種の効果が出ていると考えられます。

 今回の第5波について感じるのは、4~6月頃の第4波の時と比べ、「重症者の割合が低い」印象です。大阪府が発表した、7月20日時点の重症病床の使用率も10.8%にとどまっています。

デルタ株

 これまでの流行の中心は、イギリス由来のアルファ株でしたが、インド由来のデルタ株の検出も増えつつあり、置き換わりが進んでいるものとみられます。厚生労働省によると、7月12日現在、全国で437例確認されており、前回公表された7月7日から133例増加しています。デルタ株に対するワクチンの効果については、世界各国から様々なデータが上がっており、調査が進められている段階です。

若い世代からまん延の懸念

 気がかりなのは、まだワクチンが行き届いていない行動範囲の広い若い年齢層に感染が広がっていることです。重症化する懸念が少ないと油断し、感染への警戒が薄れることで、周囲にウイルスをまん延させてしまう可能性は否定できません。重症化される方の割合が低いと言っても重症者は一定の割合で出ます。若い世代がまん延させ、感染の裾野が広がった状態で入院患者の受け入れが始まれば、再び医療のひっ迫を招きます。

 特に、感染力が強いとされているデルタ株が拡まれば、過去最大の感染者数になると危惧しています。

 現在も感染が拡がっていることに留意しながら、マスク着用などの対策は、絶対に継続してください。ワクチンを既に接種された方も同様です。たとえワクチンを接種していたとしても、感染や発症しないわけではなく、ウイルスを運びかねません。

特に注意が必要なのは…

 基礎疾患のある方や妊婦の方は、新型コロナウイルス感染症に罹患すると重症化しやすい傾向にあります。特に注意してください。

 夏休みや東京オリンピックが始まりますが、免疫疾患やがん患者などワクチンを打ちたくても打てない人が、周囲にいることを理解することが大切です。

 私自身、コロナに感染し重症化した妊婦を診察した経験があります。妊婦の症状がひどくなれば胎児に与える影響も大きくなります。妊娠中の女性には感染してほしくありません。

 ワクチン接種は進んでいますが、残念ながら、社会全体を守るほどには、じゅうぶんなワクチンが行き届いていないのが現状です。

 ワクチンがある程度行き渡るのは、11月頃と予測しています。これから、新たな変異株が出現する可能性もまだあります。

 本来なら、楽しい思い出をたくさん作れるはずの夏休みですが、医師の立場としては、もうしばらくは我慢を続けてほしいと思います。

感染症予防接種ナビでは、新型コロナウイルスに感染した方や新型コロナワクチンを接種した方からの経験談を募集しています。

取材:大阪府済生会中津病院 安井良則医師
出典:大阪府「新型コロナウイルス感染症関連特設サイト モニタリング指標 重症病床使用率」
   厚生労働省「第43回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」資料4 新型コロナウイルス感染症(変異株)への対応等

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