【新型コロナウイルス感染症】ファイザー・モデルナのワクチンを比較 大切なのは効果とリスクを理解し判断すること
2021年9月2日更新
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 7月15日の東京都の感染者数は1,308人で、2日連続で1,000人を超えました。感染の再拡大のスピードが早まり第5波が到来しています。東京都の年代別の新規感染者数を見ても、ワクチン接種を済ませていない20代など若い世代で、大きく伸びています。

 一方、ワクチン接種が早めに始まった70歳以上の感染者数の伸びは限定的で、接種の効果が出ている可能性もあります。これまでは、40-50代が繁華街などから家庭に持ち込むケースが多い印象がありましたが、学校でのクラスター発生事案も出始めたことから、今後は、学校から家庭に持ち込まれるケースも増えるのではないかと危惧しています。

mRNAワクチンについて

 今回は、厚生労働省が承認し、予防接種法に基づいて接種できる「ファイザー」「モデルナ」の2つのワクチンの効果を比較したいと思います。2つのワクチンは、共に「mRNA(メッセンジャーアールエヌエー)」を用いたワクチンです。mRNAワクチンでは、ウイルスを構成するタンパク質の遺伝情報を投与します。その遺伝情報をもとに、体内でウイルスのタンパク質を作り、そのタンパク質に対する抗体が作られることで免疫を獲得します。これまでのワクチン(不活化ワクチン、組換えタンパクワクチン、ペプチドワクチン)とは違う新しい技術で出来ています。

 厚生労働省によると、当初、mRNAワクチンは「発症を防ぐ」のであって感染そのものを防ぐかどうかは分かっていないと言われていましたが、「感染を防ぐ効果」も分かってきました。あまり大差ないのではと思われるかもしれませんが、ワクチン接種者が感染しにくくなるということは、接種者がその周りの人に感染を広げる可能性が低くなるということです。

【ファイザー社のワクチンについて】
 ・接種対象者は12歳以上の方です。
 ・通常は、三角筋(上腕の筋肉)に、1回0.3mLを筋肉注射という方法で接種します。
 ・1回目の接種後、通常、3週間の間隔で2回目の接種を受けてください。
 ・有効性について、発症予防効果は約95%と報告されています。

【モデルナ社のワクチンについて】
 ・接種対象者は18歳以上の方です。 ※厚生労働省は、接種対象を12歳以上に引き下げることを検討しており、今後審議される予定です。
 ・通常は、三角筋(上腕の筋肉)に、1回0.5mLを筋肉注射という方法で接種します。
 ・1回目の接種後、通常、4週間の間隔で2回目の接種を受けてください。
 ・有効性について、発症予防効果は約94%と報告されています。

副反応について

 7月7日に開催された第63回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会に提出された資料によると、両社のワクチンによる主な副反応は以下のとおりです。

【ファイザー社】
 ・注射部位の痛み(85.6%)
 ・疲労(66.0%)
 ・頭痛(59.4%)
 ・筋肉痛(38.8%)
 ・悪寒(36.0%)
 ・関節痛(23.0%)
 ・発熱(16.8%)

【モデルナ社】
 ・注射部位の痛み(92.0%)
 ・疲労(70.0%)
 ・頭痛(64.6%)
 ・筋肉痛(61.5%)
 ・関節痛(46.3%)
 ・悪寒(45.5%)
 ・発熱(15.7%)

 副反応については、ややモデルナ社の方が出やすい統計が出ています。一方、この統計については、ファイザー社のワクチンは高齢者が先行して接種していることや、モデルナ社は、職域接種で働き盛りの若い方たちが多く接種していることも考えながら読み解く必要があります。

 またモデルナ社ワクチンの副反応で特徴的なのは、「モデルナアーム」と呼ばれる遅発性反応です。接種後7日目以降に注射部位の痛み、腫れ、紅斑等が認められることがあるようです。

【大阪府済生会中津病院安井医師の見解】
 いずれのワクチンでも、副反応の報告はありますが、アナフィラキシーなど重篤な症状が現れるケースは稀です。また、私自身がファイザー社のワクチンの接種を担当しましたが、若い人で発熱があった割合はもう少し高い印象です。逆に高齢者で発熱があった人は、少ない印象でした。国内では、高齢者へのファイザー社ワクチンの接種から始まっています。そのため、発熱の割合が少ないとも考えられます。今後、国が発表する資料で推移を注視したいと思います。

接種について

 身の回りで、副反応について話される機会も多いかと思いますが、アナフィラキシーなど重篤なケースは、きわめて稀です。大切なのはワクチンを接種する意義であり、接種が早めに始まった高齢者の新規感染者数が少ないことは、接種した効果が現れている可能性を意味しているのではないでしょうか。副反応も含めた接種の効果と感染での重症化リスクについて、知った上で、自身で判断することが大切です。

 またワクチンの供給不足問題や、地域によって接種率に偏りが出ていることが浮き彫りとなっています。免疫不全や基礎疾患などがあり、本当にワクチンが必要な人が接種できるのか気がかりです。健康に不安のある方は、一度、かかりつけ医などにワクチン接種について相談してみてはいかがでしょうか。

感染症予防接種ナビでは、新型コロナウイルスに感染した方や新型コロナワクチンを接種した方からの経験談を募集しています。

引用:厚生労働省:新型コロナワクチンQ&A
  厚生労働省:第63回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 参考資料1新型コロナワクチン「コミナティ筋注」(ファイザー株式会社)添付文書, 参考資料2 新型コロナワクチン「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」(武田薬品工業株式会社)添付文書

取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長・国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員・安井良則氏

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