【7月に注意してほしい感染症】【No.1】新型コロナウイルス感染症【No.2】RSウイルス感染症【No.3】咽頭結膜熱【No.4】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)
7月に注意してほしい感染症 について、流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。
【No.1】新型コロナウイルス感染症
2度目の緊急事態宣言も解除されましたが、すでに東京などではリバウンドの兆候がみられます。人流の影響により今後再び感染が拡がることが予測され、大都市を中心に第5波への警戒が必要です。
また、新たな変異株として懸念されているデルタ株(インドで最初に検出された変異株)は、従来株に比べ感染力が高いとされています。加えて、東京オリンピックの開催に伴い、多くの人が移動することで、首都圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)を中心に全国へ感染が拡大することが懸念されます。
現在、高齢者のみならず、職場や学校などでもワクチンの接種が本格化していますが、ワクチンを接種したからといって感染しないわけではありません。ワクチンを接種した人も、引き続きマスクの着用や3密の回避など、感染対策を継続しましょう。
【No.2】RSウイルス感染症
RSウイルス感染症が季節外れの流行をみせています。国立感染症研究所によると、2021年第24週(6/14~6/20)の患者報告数は、三重県や静岡県などで前週(6/7~6/13)より増加しています。また、神奈川県や東京都を中心に関東地方でも患者報告数の増加がみられます。
今年に入り、西日本を中心に感染が拡がっていましたが、徐々に東日本へ流行が移りつつあるようです。特に人口の多い首都圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)で流行すると、たちまち全国へ感染が拡がることが懸念されます。
RSウイルス感染症は特に1歳未満の乳児が感染すると重症化しやすいです。主な症状は発熱や咳で、新型コロナウイルス感染症と似ています。
感染経路は飛沫感染や接触感染です。手洗いと消毒による手指衛生のほか、マスクを着用して子どもに接するなど、予防を徹底しましょう。
【No.3】咽頭結膜熱
例年、5~6月が流行のピークであるため、7月は患者報告数も徐々に減少していくことが予測されます。しかし、昨年に比べると高い水準で推移しているため、今後も患者発生動向に注意が必要です。
咽頭結膜熱の主な症状は、発熱、咽頭炎、結膜炎です。通常感染してからの潜伏期間は5~7日で、症状がある期間は3~5日といわれています。
感染経路は、主に接触感染です。原因となるアデノウイルスは感染力が強く、直接接触だけではなく、タオル、ドアの取っ手、階段やエスカレーターの手すりなど、不特定多数の人が触る物を介した間接接触でも感染が拡がります。
感染対策として、最も重要なことは手指の衛生であり、流水・石鹸による手洗いが最も効果的です。
【No.4】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症) は小児の集団生活で気をつけてほしい感染症です。患者報告数は低く推移していますが、例年であれば6~7月は流行期であるため、今月は注意が必要です。
感染すると、2~5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身の倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしば嘔吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。
主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。子ども同士の接触頻度が高い保育園や小学校などで感染が拡がるケースが多いです。また、家庭内においても兄弟間(姉妹間)で感染することもあります。
感染の予防には、手洗い、うがい、咳エチケットなどが有効です。
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長・国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏