感染症・予防接種ナビに寄せられた皆様からの感染症経験談を紹介します。今回は水痘(水ぼうそう)の経験談です。日本では2014年10月から水痘ワクチンが定期接種化されたことから、5歳未満の水痘報告数が減少しました。一方で、水痘の感染者や入院例の中心となる年齢が年長児・成人へシフトしてきています。成人での感染は重症化のリスクが高いことから、ワクチンによる予防が重要です。
経験談1
愛知県(リネさん)発症時の年齢:12歳 感染経路(推測):父親・妹 予防接種:受けていた
帯状疱疹にかかった父から娘に水痘・帯状疱疹ウイルスに感染し、水痘(水ぼうそう)を発症した事例です。
【経験談】
父親が帯状疱疹にかかりかなり重症でした。でもうつらないと聞いていたので、食事は共にしていました。2週間後に妹4才が水ぼうそうにかかりました。予防接種をしていたので、顔と肩に少し疱疹ができただけで、わりと軽く済みましたが、その約3週間後、姉が水ぼうそうに。姉ももちろん予防接種をしていましたが、姉はお腹と背中に多くの疱疹ができました。
経験談2
兵庫県(まるこさん) 発症時の年齢:45歳 予防接種:受けていなかった
入院し治療を受けたケースです。成人の方が感染すると重症化のリスクが高くなるため予防接種が大切です。
【経験談】
年末年始の帰省後、帰宅すると37.5℃の熱。疲れが出たのかと思っていたが、翌日も同じくらいの熱が続き、夜には38℃で体もだるく入浴せず。翌日、頭にできものがある事に気付き、夜には浴室で上半身にできた多数の赤い発疹に驚き、翌早朝に皮膚科を受診。「もしかすると水ぼうそうかも、大人は重症化しやすいので大きい病院へ」と紹介状をいただき、すぐにその病院へ。その頃には歩行も困難なくらいダルくてしんどい。水ぼうそうかもしれないと伝えると、隔離され、水疱を採り検査されると、やはり水ぼうそうとのこと。頭痛もあり入院するか確認され、家に戻れる余裕はなくそのまま入院。アシクロビルの点滴が1日3回8時間おきに始まる。2日後には頭痛が激しくなり嘔吐し、髄液検査をしてもらうと髄膜炎を起こしていることが判明。食欲もなく、ほとんど食べられず、口の中にも水疱が。髄膜炎と判明してからはアシクロビルの濃度を倍にして投与される。少しずつ快方に向かい、発疹がかさぶたになる頃には隔離観察室から大部屋に移れた。発症から10日経っても頭痛の為、起き上がって食事を摂ることが出来ず、寝そべったまま口へ運ぶ。この頃には食欲は少しずつ出てきた。入院から14日目に退院。その後2週間、軽い頭痛が続いた。
経験談3
富山県(にっこさん) 発症時の年齢:8歳 予防接種:受けていた(1回のみ)
2014年10月から定期接種化しましたが、十分な免疫をつけるためワクチンは2回の接種が推奨されています。
【経験談】
先日、子供の額に虫刺されのような発疹ができました。翌日、それが2~3個増えて、ついに全身に発疹が広がってこれはおかしいと思い、小児科で水ぼうそうと診断されました。症状としては発疹と微熱だけで、遊べるほど元気でした。水ぼうそうのワクチンは1回打っていました。だから重症化しないで済んだんだと思います。でも、子供に帯状疱疹になるリスクを作ってしまったと思って後悔しています。任意接種で当時の母子手帳には1回の接種の推奨と書かれていたので、1回で十分だと思っていました。2回必要だと知っていればこんなことにならなかったのに。
<おことわり>ご紹介する経験談は、あくまでも投稿者個人の症状や意見です。
水痘(水ぼうそう)とは
水痘(水ぼうそう)は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に初めて感染(初感染)した時に発症する急性のウイルス感染症です。水痘の感染力は極めて強く、空気(飛沫核)感染、飛沫感染、接触感染によってウイルスは上気道から侵入し、ウイルス血症を経て、通常は2週間前後(10~21日)の潜伏期間を経て発病すると言われています。水痘の特徴といえば全身性の発疹であり、この発疹は最初に頭皮、次いで体幹、四肢の順に出現しますが、体幹部の発疹数が最も多くなります。水痘の感染発病を防ぐことのできる唯一の予防手段はワクチンの接種のみで、日本でも2014年10月から水痘ワクチンが定期接種となりました。
成人の水痘・妊婦の水痘
水痘(水ぼうそう)は、通常小児期に感染し、一般に軽症で終生免疫を得ることが多い感染症です。しかし成人期の初感染は重症化しやすく、水痘肺炎などの内臓合併症を伴いやすく注意が必要です。また、妊婦の初感染は、妊娠早期なら流産の、中期以降は胎児に先天性水痘症候群の危険性が生じ、後期の水痘肺炎は重症化することが知られています。
感染症・予防接種ナビでは、みなさまからの水痘(水ぼうそう)の経験談を募集しています
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏