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日本国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者発生数は、5月中旬から6月中旬にかけては一旦落ち着いていましたが、6月下旬以降、東京都を中心に患者発生数の再増加が見られるようになりました。その影響は首都圏の周辺地域や大阪など他の大都市にもおよびつつあります。特にホストクラブやガールズバー、風俗店などのいわゆる夜の街で働いている若年者層の人たちの間で、新型コロナウイルスの感染が広がっていると推定されていますが、感染源が不明の患者や高齢者を含めた他の患者発生も相当数見られるようになってきており、日本国内において新型コロナウイルスの流行の再燃が危惧されています。
これまでの経験から、新型コロナウイルスは、口から発せられた飛沫を吸い込むことによる飛沫感染や、その飛沫を浴びた物品や患者の体に付着しているウイルスに接触し最終的には手にウイルスが付着した状態で鼻や口・目を触ることによって感染する接触感染が主な感染経路であると言われています。また、大きな声を出して歌ったり叫んだり、あるいは咳やくしゃみを繰り返している人の周囲では、一時的にエアロゾルが発生し、同じ空間内の離れている場所で感染した事例も報告されています。以上から、感染対策として重要なことは、人に飛沫を浴びせないためにマスクを着用することや、アルコールや流水石鹸による手指衛生を帰宅時や食事前などには必ず行うことです。それに加え、たとえ広い場所であっても密閉された空間内で不特定多数の人が歌ったり叫んだり大声を出したりしている場所にはできるだけ近づかないようにするべきであると思われます。
各国の状況
WHOの発表によると、2020年7月8日現在、世界の患者数は約1,166万人、死亡者数は約53万人を数えています。南半球に位置するブラジルなどの南米諸国やアフリカ諸国で患者発生数が増えているほか、アメリカ合衆国やインドなどでも増加が見られています。
日本国内の状況
厚生労働省によると7月8日現在、日本国内での新型コロナウイルス感染症の感染者は20,174例、入院治療等を要する者は1,862名、退院又は療養解除となった者は17,331名、亡くなったのは980名となっています。また9名が確認中とされています。都道府県別の数字は、
こちらで確認できます。
症状について
発熱・鼻水・のどの痛み・咳などといった、風邪のような症状から始まります。また、頭痛や強い倦怠感などが良く見られる症状です。下痢や味覚・嗅覚障害を伴うことも少なくはありません。症状の続く長さ(期間)については、風邪やインフルエンザと比べて長いという特徴があるようです。中国のデータによると、患者の8割は軽症で治癒するようです。一方、2割弱の患者では、肺炎の症状が強くなり、入院して酸素投与などの治療が必要になることがあります。重症化する場合は、発症から1週間前後で発熱や呼吸困難などの症状が悪化し、場合によっては人工呼吸器による管理が必要となる例も見られています。特に発症から10日間前後は、病勢が進行していく場合が多いですから、最初は軽症であると思っても、慎重な経過観察が必要です。
新型コロナウイルス感染症で重症化しやすいのは、高齢者と基礎疾患のある方と言われています。中国CDCのデータによると、高齢者ほど致死率が高くなることが示されています。こういった方は一般の方よりも早めに、帰国者・接触者相談センターに相談しましょう。
予防について
コロナウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染です。原則として空気感染はありません。最も重要な対策は、咳エチケットと手洗い・アルコール消毒など手指衛生を徹底することです。手洗いが大切な理由は、ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、自分の手にもウイルスが付着している可能性があるからです。外出先からの帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。また、感染拡大を防ぐため、人と人との距離を保つことが重要です。
また、2歳未満のお子さんは、熱中症や窒息の危険があるため、マスクは必要ありません。
感染拡大を避けるために
感染しやすい場所の特徴を理解しましょう。専門家会議によると、これまで集団感染が確認された場所に共通するのは、
(1)換気の悪い密閉空間
(2)多くの人が密集していた
(3)近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われた
という3つの条件(3つの密)が同時に重なった場所です。こうした場所ではより多くの人が感染していたと考えられます。これらの3つの条件が同時に揃う場所や場面をできるだけ予測し、避ける行動をとりましょう。また、これら3つの条件がすべて重ならないまでも、1つまたは2つの条件があれば、なにかのきっかけで3つの条件が揃うことがあります。3つの条件ができるだけ同時に重ならないようにすることが対策となります。
国の専門家会議は5月4日、新型コロナウイルスの感染拡大を予防するため、新しい生活様式(生活スタイル)の実践例を公表しました。これを参考に、日々の生活を点検してみましょう。
また、感染者を必要以上に非難・批判したり、差別的に扱うことは、感染状況の調査に悪影響を与えるだけでなく、社会的な息苦しさや不必要な不安を生み出すことになりるため、やめるべきです。(感染状況の変化を踏まえ、6月19日に一部の記載が変更されています。詳しくは
こちら。)
■参考リンク:
厚生労働省新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
■参考リンク:
厚生労働省新型コロナウイルス感染症について
■参考リンク:
厚生労働省新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(※報告日別新規陽性者数):7月8日
■参考リンク:
厚生労働省新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏