【感染症ニュース】手足口病 例年と比べ患者発生数は異常に低い水準のままであるが今後も患者数が増加する可能性あり
2020年7月9日更新
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図.手足口病 流行のようす(第26週)<br /> 監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
図.手足口病 流行のようす(第26週)
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
 手足口病の患者数は、学校・幼稚園等の休校・休園や新型コロナウイルス感染症対策のためのソーシャルディスタンスの影響等もあり、患者発生数が例年と比べ非常に低い水準となっていますが、例年7月中旬から下旬にかけて流行のピークを迎えます。今後、患者発生数が増加する可能性があり、また、学校・幼稚園等の夏休みが短縮されれば、患者数の増加傾向が8月も続く可能性があります。

 手足口病(hand, foot and mouth disease:HFMD)は、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性のウイルス性感染症であり、乳幼児を中心に主に夏季に流行し、例年7月頃に流行のピークを迎えます。

 口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性のウイルス性感染症であり、乳幼児を中心に主に夏季に流行します。

患者数の動向

 IDWRの速報データによると
 2020/6/8~6/14 (第24週)は、定点把握疾患(週報告)が406件(0.13)
 2020/6/15~6/21(第25週)は、定点把握疾患(週報告)が390件(0.12)
 2020/6/22~6/28(第26週)は、定点把握疾患(週報告)が333件(0.11)

地域別情報

 6月22日~6月28日(第26週)の速報データによる、定点当たり報告数が最も多い順
 鹿児島県(0.45)
 熊本県(0.4)
 高知県(0.36)
 滋賀県(0.28)
 香川県(0.21)

症状

 従来のCA16およびEV71による手足口では、3~5日間の潜伏期間の後に、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2~3mmの水疱性発疹が出現してきます。発熱は約3分の1に認められますが軽度であり、高熱が続くことは通常はありません。通常は3~7日の経過で軽快し、水疱の跡が痂皮(かさぶた)となることもありません。

感染経路

 手足口病の感染経路としては飛沫感染、接触感染、糞口感染があげられます。

治療方法

 特異的な治療法はなく、抗菌薬の投与は意味がありません。発疹に痒み(そう痒感)などを伴うことは稀であり、抗ヒスタミン薬の塗布を行うことはありますが、通常は外用薬としての副腎皮質ステロイド剤は用いられません。口腔内病変を伴いますので、乳幼児の場合は刺激にならないように柔らかめで薄味の食べ物が奨められますが、水分が不足しないように、経口補液などで水分を少量頻回に与えることのほうがより重要です。時には脱水を防ぐために経静脈補液が必要となる場合もあります。発熱に対しては、通常は解熱剤なしで経過観察が可能です。しかし、元気がない(ぐったりしている)、頭痛、嘔吐、高熱、2日以上続く発熱などの場合には髄膜炎、脳炎など中枢神経系の病変の合併に注意する必要があります。ステロイド剤の多用が症状を悪化させることが示唆されています。

予防法

 保育園や幼稚園などの乳幼児施設においての流行時の感染予防は手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となります。しかし、本疾患は主要症状が回復した後も比較的長期間に渡って児の便などからウイルスが排泄されることがあり、加えて流行時には無症状病原体保有者も相当数存在していると考えられるため、発症者のみを隔離したとしても、効果的な感染拡大防止策となるとは考え難いです。基本的には軽症疾患であることを踏まえ、回復した児に対して長期間の欠席を求めることも得策ではありません。

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監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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