【感染症ニュース】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者の症状が川崎病の症状に似ている場合も 今後重要なポイントになる可能性 さらなる症例解析の積み重ねが重要
2020年7月22日更新
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国立感染症研究所で分離された<br />新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真 (提供元:国立感染症研究所)
国立感染症研究所で分離された
新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真 (提供元:国立感染症研究所)
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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、自然治癒傾向が強い感染症だと言われていますが、一部の発病者は急性増悪して、重症化する場合があると言われています。特に高齢の方や基礎疾患を持った方では、そのリスクが高くなると言われています。

 重症化には、免疫系の暴走によるサイトカインストームが大きくかかわっているとも言われています。特に最近では、全身の血管系の炎症やそれに伴う血液の凝固線溶系の異常が重症化に大きくかかわっていると考えられてきています。この血管系の炎症が、小児における川崎病の症状とよく似ているのではないかとも言われており、このことが新型コロナウイルス感染症の流行地域において、子どもの間で川崎病様の症状を持った例が増加している原因ではないかと言われています。

 ただ、日本においては、海外の情報を受けて、国内における川崎病の報告数が新型コロナウイルス感染症の流行に伴って増加していないか、調査が行われつつありますが、今までのところ、増加しているという報告はありません。ただ、この川崎病様の血管系の病態が海外の子どもにおいて増加していることが、今後新型コロナウイルス感染症の重症化の病態と対面していく上において、重要なポイントとなる可能性があり、今後さらに症例解析を積み重ねていくことが重要となってくると思われます。

各国の状況

 WHOの発表によると、2020年6月1日現在、世界の患者数は約605万人、死亡者数は約37万人を数えています。特に南半球に位置するブラジルなどの南米諸国やアフリカ諸国では、今後患者発生数が急増していくことが危惧されています。

日本国内の状況

 4月7日に発出された緊急事態宣言は、5月25日に解除されましたが、一部の地域で患者発生やクラスターの発生が見られています。新しい生活様式を参考に、感染を予防しましょう。

 厚生労働省によると6月1日現在、日本国内でのPCR検査陽性者は16,724人で、入院治療等を要するのは1,341人、うち重症なのは113人、退院又は療養解除となったのは14,481人、亡くなったのは894人となっています。また12人が確認中とされています。都道府県別の数字は、こちら (https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000636131.pdf)で確認できます。

症状について

 発熱・鼻水・のどの痛み・咳などといった、風邪のような症状から始まります。また、頭痛や強い倦怠感などが良く見られる症状です。下痢や味覚・嗅覚障害を伴うことも少なくはありません。症状の続く長さ(期間)については、風邪やインフルエンザと比べて長いという特徴があるようです。中国のデータによると、患者の8割は軽症で治癒するようです。一方、2割弱の患者では、肺炎の症状が強くなり、入院して酸素投与などの治療が必要になることがあります。重症化する場合は、発症から1週間前後で発熱や呼吸困難などの症状が悪化し、場合によっては人工呼吸器による管理が必要となる例も見られています。特に発症から10日間前後は、病勢が進行していく場合が多いですから、最初は軽症であると思っても、慎重な経過観察が必要です。

 新型コロナウイルス感染症で重症化しやすいのは、高齢者と基礎疾患のある方と言われています。中国CDCのデータによると、高齢者ほど致死率が高くなることが示されています。こういった方は一般の方よりも早めに、帰国者・接触者相談センターに相談しましょう。

予防について

 コロナウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染です。原則として空気感染はありません。最も重要な対策は、咳エチケットと手洗い・アルコール消毒など手指衛生を徹底することです。手洗いが大切な理由は、ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、自分の手にもウイルスが付着している可能性があるからです。外出先からの帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。また、感染拡大を防ぐため、人と人との距離を保つことが重要です。

 また、2歳未満のお子さんは、熱中症や窒息の危険があるため、マスクは必要ありません。

感染拡大を避けるために

 感染しやすい場所の特徴を理解しましょう。専門家会議によると、これまで集団感染が確認された場所に共通するのは、

 (1)換気の悪い密閉空間

 (2)多くの人が密集していた

 (3)近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われた

 という3つの条件(3つの密)が同時に重なった場所です。こうした場所ではより多くの人が感染していたと考えられます。これらの3つの条件が同時に揃う場所や場面をできるだけ予測し、避ける行動をとりましょう。また、これら3つの条件がすべて重ならないまでも、1つまたは2つの条件があれば、なにかのきっかけで3つの条件が揃うことがあります。3つの条件ができるだけ同時に重ならないようにすることが対策となります。

 国の専門家会議は5月4日、新型コロナウイルスの感染拡大を予防するため、新しい生活様式(生活スタイル)の実践例を公表しました。これを参考に、日々の生活を点検してみましょう。

 また、感染者を必要以上に非難・批判したり、差別的に扱うことは、感染状況の調査に悪影響を与えるだけでなく、社会的な息苦しさや不必要な不安を生み出すことになりるため、やめるべきです。


■参考リンク:厚生労働省新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)

■参考リンク:厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解等(新型コロナウイルス感染症)

■参考リンク:厚生労働省新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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