【感染症ニュース】新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 自粛・制限の緩和により再び患者数増の可能性も 今後1年以上は経済等の活動の制限と緩和を繰り返しながらウイルスと共存していくことになると予想される
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、緊急事態宣言の発出以降、日本では様々な対策・努力がなされ、5月に入り患者数の減少が見られています。今後、自粛や制限の緩和に伴い流行が再燃する可能性もあります。おそらく1年以上は新型コロナウイルスと人類は共存していかなければならず、患者数の増減により、制限と緩和を繰り返していかないといけないと予想されます。
各国の状況
WHOの発表によると、2020年5月11日現在、世界の患者数は約400万人、死亡者数は約27万人を数えています。
日本国内の状況
日本政府は4月7日、国内で感染者が急増している地域を中心に緊急事態宣言を発令しました。その後、4月16日に対象地域が全都道府県に拡大されました。期間は5月6日までとされていましたが、期間の延長が決まりました。また、東京都、大阪府、北海道、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、兵庫県、福岡県については特定警戒都道府県とされており、特に重点的に感染拡大の防止に向けた取組を進めていく必要があります。
厚生労働省によると5月10日現在、日本国内でのPCR検査陽性者は15,630人で、入院治療等を要するのは6,074人、うち重症なのは249人、退院又は療養解除となったのは8,514人、亡くなったのは621人となっています。また421人が確認中とされています。都道府県別の数字は、こちら
(
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000628918.pdf)で確認できます。
日本では、緊急事態宣言が発出されて以降、国をあげた様々な対策・努力がなされてきました。その結果、欧米を中心とした多数の患者数と死亡者数が見られた他の国々とは異なり、いわゆるオーバーシュートすることなく、5月に入り患者数の減少が見られています。人口あたりの死亡者数も、欧米各国と比べ、ここまでは非常に少なく抑えられています。
緊急事態宣言に伴うソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保や様々な自粛は、経済的には大きなダメージを伴うものであり、今後、様々な経済活動や教育等の自粛・制限の緩和がされていくこととなりますが、それに伴って、患者数が再び増加し、流行が再燃する可能性があります。おそらく今後1年間以上は、新型コロナウイルスと人類は共存していかなければならず、日本においても、患者数の増減により、経済活動や様々な社会的教育的活動の制限と緩和を繰り返していかないといけないと予想されます。
大切なことは、人々の生活をできるだけ守りながら、医療体制を崩壊させず人々の命を守っていくことです。そのためには、新型コロナウイルスとの共存していくことに合わせて、人々の生活様式、社会の形、そして医療の体制が変化していくことになると思われます。新型コロナウイルスが落ち着き、社会や人々の暮らしが以前に近い形となっていくには、まだまだ時間がかかりますが、新型コロナウイルスに対して正しい認識を持ち、また過度に恐れることなく、しっかりとこれからも前を向いて進んでいくべきであると思われます。
症状について
発熱・鼻水・のどの痛み・咳などといった、風邪のような症状から始まります。また、頭痛や強い倦怠感などが良く見られる症状です。下痢や味覚・嗅覚障害を伴うことも少なくはありません。症状の続く長さ(期間)については、風邪やインフルエンザと比べて長いという特徴があるようです。中国のデータによると、患者の8割は軽症で治癒するようです。一方、2割弱の患者では、肺炎の症状が強くなり、入院して酸素投与などの治療が必要になることがあります。重症化する場合は、発症から1週間前後で発熱や呼吸困難などの症状が悪化し、場合によっては人工呼吸器による管理が必要となる例も見られています。特に発症から10日間前後は、病勢が進行していく場合が多いですから、最初は軽症であると思っても、慎重な経過観察が必要です。
新型コロナウイルス感染症で重症化しやすいのは、高齢者と基礎疾患のある方と言われています。中国CDCのデータによると、高齢者ほど致死率が高くなることが示されています。こういった方は一般の方よりも早めに、帰国者・接触者相談センターに相談しましょう。
厚生労働省が相談・受診の目安を改訂
厚生労働省は5月8日、新型コロナウイルス感染症の相談・受診の目安を改訂しました。
少なくとも以下のいずれかに該当する場合には、すぐに相談するようにとされており、これらに該当しない場合の相談も可能とされています。
・息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合
・重症化しやすい方(※)で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合
(※)高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD等)等の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方
・上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合
症状が4日以上続く場合は必ず相談すること、症状には個人差があるため、強い症状と思う場合にはすぐに相談すること、解熱剤などを飲み続けなければならない方も同様とされています。
相談は、帰国者・接触者相談センター(地域により名称が異なることがあります)の他、地域によっては、医師会や診療所等で相談を受け付けている場合もあります。
予防について
コロナウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染です。原則として空気感染はありません。最も重要な対策は、咳エチケットと手洗い・アルコール消毒など手指衛生を徹底することです。手洗いが大切な理由は、ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、自分の手にもウイルスが付着している可能性があるからです。外出先からの帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。また、感染拡大を防ぐため、人と人との距離を保つことが重要です。
正しい手洗いの方法
手洗いは、新型コロナウイルスを含む感染症対策の基本です。
1.流水でよく手をぬらし、石けんをつける
2.石けんを泡立てて、手のひらをよくこする
3.手の甲をしっかりのばすようにこする
4.指の先・爪の間を念入りにこする
5.指の間を洗う
6.親指を反対の手でねじり洗いをする
7.手首も忘れずに洗う
8.流水で十分に洗い流す
9.清潔なタオルやペーパータオルでよく拭き、乾かす
手を洗う前に時計や指輪など外して、手首までしっかり洗えるようにしましょう。また、爪はなるべく短く切っておきましょう。
感染拡大を避けるために
感染しやすい場所の特徴を理解しましょう。専門家会議によると、これまで集団感染が確認された場所に共通するのは、
(1)換気の悪い密閉空間
(2)多くの人が密集していた
(3)近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われた
という3つの条件(3つの密)が同時に重なった場所です。こうした場所ではより多くの人が感染していたと考えられます。これらの3つの条件が同時に揃う場所や場面をできるだけ予測し、避ける行動をとりましょう。また、これら3つの条件がすべて重ならないまでも、1つまたは2つの条件があれば、なにかのきっかけで3つの条件が揃うことがあります。3つの条件ができるだけ同時に重ならないようにすることが対策となります。
国の専門家会議は5月4日、新型コロナウイルスの感染拡大を予防するため、新しい生活様式(生活スタイル)の実践例を公表しました。これを参考に、日々の生活を点検してみましょう。
(1)一人ひとりの基本的感染対策
●感染防止の3つの基本
1.身体的距離の確保
2.マスクの着用
3.手洗い
・人との間隔は、できるだけ2m(最低1m)空ける
・遊びにいくなら屋内より屋外を選ぶ。
・会話をする際は、可能な限り真正面を避ける。
・外出時、屋内にいるときや会話をするときは、症状がなくてもマスクを着用・家に帰ったらまず手や顔を洗う。できるだけすぐに着替える、シャワーを浴びる。
・手洗いは30秒程度かけて水と石けんで丁寧に洗う(手指消毒薬の使用も可)
※高齢者や持病のあるような重症化リスクの高い人と会う際には、体調管理をより厳重にする。
●移動に関する感染対策
・感染が流行している地域からの移動、感染が流行している地域への移動は控える。
・帰省や旅行はひかえめに。出張はやむを得ない場合に。
・発症したときのため、誰とどこで会ったかをメモにする
・地域の感染状況に注意する。
(2)日常生活を営む上での基本的生活様式
・まめに手洗い、手指消毒・咳エチケットの徹底
・こまめに換気・身体的距離の確保
・「3密」の回避(密集・密接・密閉)
・毎朝で体温測定、健康チェック。発熱又は風邪の症状がある場合はムリせず自宅で療養
(3)日常生活の各場面別の生活様式
●買い物
・通販も利用
・1人または少人数ですいた時間に
・電子決済の利用
・計画をたてて素早く済ます
・サンプルなど展示品への接触は控えめに
・レジに並ぶときは前後にスペース
●娯楽、スポーツ等
・公園はすいた時間、場所を選ぶ
・筋トレやヨガは自宅で動画を活用
・ジョギングは少人数で
・すれ違うときは距離をとるマナー
・予約制を利用してゆったりと
・狭い部屋での長居は無用
・歌や応援は、十分な距離かオンライン
●公共交通機関の利用
・会話は控えめに
・混んでいる時間帯は避けて
・徒歩や自転車利用も併用する
●食事
・持ち帰りや出前、デリバリーも
・屋外空間で気持ちよく
・大皿は避けて、料理は個々に
・対面ではなく横並びで座ろう
・料理に集中、おしゃべりは控えめに
・お酌、グラスやお猪口の回し飲みは避けて
●冠婚葬祭などの親族行事
・多人数での会食は避けて
・発熱や風邪の症状がある場合は参加しない
(4)働き方の新しいスタイル
・テレワークやローテーション勤務
・時差通勤でゆったりと
・オフィスはひろびろと
・会議はオンライン
・名刺交換はオンライン
・対面での打合せは換気とマスク
また、感染者を必要以上に非難・批判したり、差別的に扱うことは、感染状況の調査に悪影響を与えるだけでなく、社会的な息苦しさや不必要な不安を生み出すことになりるため、やめるべきです。
■参考リンク:
厚生労働省新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
■参考リンク:
厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解等(新型コロナウイルス感染症)
■参考リンク:
厚生労働省新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏