【感染症ニュース】新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 緊急事態宣言発令から2週間が経過 日本国内の今後の流行について抑制か拡大かの重大な岐路に差し掛かりつつある
2020年5月14日更新
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人と人との距離を保つことが重要
人と人との距離を保つことが重要
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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、4月7日に緊急事態宣言が発令されて2週間が経過しました。これからの国内の患者発生者は、主に緊急事態宣言後に感染した人たちとなっていきます。日本国内の対策が功を奏し、流行が抑制されていくか、あるいは患者数が急増していき、さらに流行が大きく拡大していくかについては、今後の患者数の推移を見ればある程度予想されていくものと思われます。たとえ流行が抑制傾向となっていたとしても、いまここで多くの国民の方々が行っている人と人との距離を取ることやいわゆる「3つの密」を避ける、出勤を控えるなどの対策の手を緩めると、ほぼ間違いなく再び患者数が増加していくことが予想されます。これらのことを踏まえて、これからの数週間は、日本の流行を左右する重大な時期であるととらえ、皆様ができる対策をしっかりと続けていただくようお願いします。

各国の状況

 WHOの発表によると、2020年4月20日現在、世界の患者数は約231万人、死亡者数は約15万人を数えています。特にイタリア・スペイン・フランス・アメリカなどの欧米地域で患者数の急増が見られています。

日本国内の状況

 日本政府は4月7日、国内で感染者が急増している地域を中心に緊急事態宣言を発令しました。その後、4月16日に対象地域が全都道府県に拡大されました。期間は5月6日までの1か月程度としています。また、東京都、大阪府、北海道、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、兵庫県、福岡県については特定警戒都道府県とされており、特に重点的に感染拡大の防止に向けた取組を進めていく必要があります。また厚生労働省は4月2日、軽症・無症状の人は、自宅や宿泊施設など病院以外の施設での療養を都道府県に求めました。一部の地域ではこの取り組みが進みつつあります。

 厚生労働省によると4月20日現在、日本国内の感染者は10,751例で、内訳は、患者6,656例、無症状病原体保有者704例、陽性確定例(症状有無確認中)3,391例となります。国内の死亡者は171名です。また、国内での退院者は、1,239名となりました。

 3月下旬以降、東京を中心とした首都圏や、大阪を中心とした関西圏で患者数が大幅に増加しており、そういった地域から就職や帰省などで地方へ移動した感染者が地方で感染を広げる事例が増えてきています。こういった事例が続くと、都市圏だけでなく地方でもクラスターが発生し、医療崩壊につながる可能性があります。

 クラスター発生から高齢者への感染が起こると、重症例や死亡例が出ることも珍しくはありません。中国の例でも言われていますが、この感染症は、年齢層や基礎疾患の有無によって重篤度が異なる場合が多く、特に発症後に重症化する可能性が高い高齢者層や障害を持った方々をいかに守っていくかということも対策の重要な要素であると思われます。

予防について

 コロナウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染です。原則として空気感染はありません。最も重要な対策は、咳エチケットと手洗い・アルコール消毒など手指衛生を徹底することです。手洗いが大切な理由は、ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、自分の手にもウイルスが付着している可能性があるからです。外出先からの帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。また、感染拡大を防ぐため、人と人との距離を保つことが重要です。

正しい手洗いの方法

 手洗いは、新型コロナウイルスを含む感染症対策の基本です。

 1.流水でよく手をぬらし、石けんをつける

 2.石けんを泡立てて、手のひらをよくこする

 3.手の甲をしっかりのばすようにこする

 4.指の先・爪の間を念入りにこする

 5.指の間を洗う

 6.親指を反対の手でねじり洗いをする

 7.手首も忘れずに洗う

 8.流水で十分に洗い流す

 9.清潔なタオルやペーパータオルでよく拭き、乾かす

 手を洗う前に時計や指輪など外して、手首までしっかり洗えるようにしましょう。また、爪はなるべく短く切っておきましょう。

感染拡大を避けるために

 自分が発熱や呼吸器症状をきたしている場合は、たとえ症状が比較的軽度であっても、職場や学校など長時間にわたって特定の人と接する場所に行くことをやめ、自宅で休むことを心がけてください。特に、10~30代の若い年齢の方々は、行動範囲が広く、症状に乏しく、自覚することなく周囲の人へ感染を広げてしまう可能性があります。たとえ風邪のような症状だけであっても、不特定多数の人が集まるようなイベント・場所・屋内施設などに行くことはできる限り自粛するようお願いします。

 感染しやすい場所の特徴を理解しましょう。専門家会議によると、これまで集団感染が確認された場所に共通するのは、

 (1)換気の悪い密閉空間

 (2)多くの人が密集していた

 (3)近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われた

 という3つの条件が同時に重なった場所です。こうした場所ではより多くの人が感染していたと考えられます。これらの3つの条件が同時に揃う場所や場面をできるだけ予測し、避ける行動をとりましょう。また、これら3つの条件がすべて重ならないまでも、1つまたは2つの条件があれば、なにかのきっかけで3つの条件が揃うことがあります。3つの条件ができるだけ同時に重ならないようにすることが対策となります。

 見ず知らずの人がたくさんいるところに行くことはできるだけ避けてください。そのうえで、正しい手洗いをきちんと実践し、少しでも感染のリスクを抑えるよう努力しましょう。

 また、感染者を必要以上に非難・批判したり、差別的に扱うことは、感染状況の調査に悪影響を与えるだけでなく、社会的な息苦しさや不必要な不安を生み出すことになりるため、やめるべきです。

正しい情報を発信している人を見つけておく

 ネット上をはじめとして、多くのメディアで情報があふれていますが、どの情報が正しいかを見極めることはとても大切です。

 情報に接した際、その情報は誰が発したものか、出典を必ず確認しましょう。そして、たとえ医者が発言・執筆した内容でも、感染症の専門医でなければ、正しいとは限りません。感染症の専門医や公的な研究機関、厚生労働省などの公的情報を参考にしましょう。「テレビに出てる人が言っていた」、「SNSに書いてあった」というだけで、鵜呑みにするのは危険です。

 また、物資が不足しているなどといった感染症に直接かかわらない情報も、正しいものかをきちんと判断することは大切です。トイレットペーパーやティッシュペーパーが不足している情報がありましたが、厚生労働省が「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」の中で、“通常どおりの生産・供給が行われており、今後とも不足する懸念はない"と回答し、日本家庭紙工業会のリリースを掲載しています。むやみに買い占めなどを行うことで、必要な方に物資が届かないといったことが起きるなど、悪循環を生みだしてしまいます。

 また、一部報道で言われているBCGワクチンの新型コロナウイルスに対する効果は、現時点では全く検証されていません。本来接種されるべき子供に対して提供されなくなるなどの影響を考えると、現時点での安易な接種や間違った方法での接種は避けるべきです。

 過度に心配しパニックになることなく、情報を正しく理解し、自身の感染予防と万が一の際の適切な行動につなげることが、いま最も大切です。

 なお、このサイト、感染症・予防接種ナビ は、感染症の専門家の監修・取材協力により、正しく信頼できる情報発信を目指して運営しています。

■参考リンク:厚生労働省新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)

■参考リンク:厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解等(新型コロナウイルス感染症)

■参考リンク:厚生労働省新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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