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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は現在、中国以外 特にイタリア・スペイン・フランスなどのヨーロッパの地域で患者数の急増が見られています。日本では今のところ、ヨーロッパ諸国のような患者数が急増している地域と比べて、患者数・死亡者数の増加は比較的緩やかです。しかし今後、患者数が全国的に急増するようなことがあれば、死亡者数の急激な増加および医療体制の崩壊につながっていくことも十分に考えられるため、国をあげた対策の手を現時点で緩めることはすべきではないと思われます。
各国の状況
WHOの発表によると、2020年3月16日現在、世界の患者数は約168,000人、死亡者数は約6,600人を数えています。これまで約80,000人の患者発生数と約3,200人の死亡者数を数えていた中国では、患者発生および死亡者数の増加は落ち着きつつあります。しかし、中国以外の地域での患者数が増加しつつあり、特にイタリア・スペイン・フランスなどのヨーロッパの地域で患者数の急増が見られています。
日本国内の状況
日本では、1月中から約2ヶ月にわたって患者の国内発生が見られていますが、今のところヨーロッパ諸国のような患者数が急増している地域と比べて、患者数および死亡者数の増加は比較的緩やかです。今のところ医療体制の崩壊も危惧されていません。しかし今後、患者数が全国的に急増するようなことがあれば、死亡者数の急激な増加および医療体制の崩壊につながっていくことも十分に考えられるため、新型コロナウイルス感染症に対する国をあげた対策の手を現時点で緩めるべきではないと思われます。
日本国内では、いくつかのクラスターの発生が見られていますが、今のところそこから大規模な流行につながることはなく、対処されているように見えます。しかし、クラスター発生から高齢者への感染が起こると、重症例や死亡例が出ることも珍しくはありません。中国の例でも言われていますが、この感染症は、年齢層や基礎疾患の有無によって重篤度が異なる場合が多く、特に発症後に重症化する可能性が高い高齢者層や障害を持った方々をいかに守っていくかということも対策の重要な要素であると思われます。
症状と経過について
国の専門家会議によると、以下のことが言われています。
中国からの2020年2月20日時点での報告では、感染が確認された症状のある人の約80%が軽症、13.8%が重症、6.1%が重篤となっています。また、広東省からの2020年2月20日時点の報告では、重症者125名のうち、軽快し退院したものが26.4%、状態が回復しつつある者が46.4%となっています。
日本国内では、2020年3月6日までに、感染が確認された症状のある人366例のうち、55例(15%)は既に軽快し退院しています。重症化する患者さんも、最初は普通の風邪症状(微熱、咽頭痛、咳など)から始まっており、その段階では重症化するかどうかの区別をつけるのは、依然として難しい状況です。日本では、死亡者数は大きく増えていません。このことは、限られた医療資源のなかであっても、日本の医師が重症化しそうな患者さんの多くを検出し、適切な治療をできているという、医療の質の高さを示唆していると考えられます。
大切なこと
1.感染拡大を阻止すること
2.自分がかからないよう予防すること
3.正しい情報を正しく理解すること
それぞれについて、詳しく解説します。
1.感染拡大を阻止するには
感染拡大を阻止するには、国民ひとりひとりの協力が不可欠です。
●感染しやすい場所の特徴を理解し避ける
これまで集団感染が確認された場所に共通するのは、
(1)換気の悪い密閉空間
(2)多くの人が密集していた
(3)近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われた
という3つの条件が同時に重なった場所です。こうした場所ではより多くの人が感染していたと考えられます。これらの3つの条件が同時に揃う場所や場面をできるだけ予測し、避ける行動をとりましょう。また、これら3つの条件がすべて重ならないまでも、1つまたは2つの条件があれば、なにかのきっかけで3つの条件が揃うことがあります。3つの条件ができるだけ同時に重ならないようにすることが対策となります。
●重症化した患者への適切な医療のため 医療体制の崩壊をさせない
新型コロナウイルス感染症に感染し発病した場合、大半の例では軽症または中等症までで治っていくと言われています。一方、高齢の方や、糖尿病や呼吸器疾患などの基礎疾患を持った方々は、重症化する場合があると言われています。最も重要なのは、“重症化する可能性のある方々"ができる限り感染しないような環境を作り、万が一感染・発病した場合は、すぐに適切な医療が受けられるようにすることです。
これが大切な理由は、日本国内における新型コロナウイルス感染症の流行を抑制し、たとえ流行が抑えられなくなっても、流行の開始・ピークを少しでも遅らせなければならないからです。こうした理解がないままでいると、医療機関に患者が殺到して地域の医療体制が崩壊し、重症者に十分な医療が行き届かなくなることによって、亡くなってしまう人が増加してしまいかねません。
●感染を広げないための行動を心がける
自分が発熱や呼吸器症状をきたしている場合は、たとえ症状が比較的軽度であっても、職場や学校など長時間にわたって特定の人と接する場所に行くことをやめ、自宅で休むことを心がけてください。特に、10~30代の若い年齢の方々は、行動範囲が広く、症状に乏しく、自覚することなく周囲の人へ感染を広げてしまう可能性があります。たとえ風邪のような症状だけであっても、不特定多数の人が集まるようなイベント・場所・屋内施設などに行くことはできる限り自粛するようお願いします。
厚生労働省のホームページの「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」によると、新型コロナウイルスに感染している疑いがある場合は、帰国者・接触者相談センターに相談しましょう。その際、必要があると認められた場合は、専門の医療機関(帰国者・接触者外来)が紹介されます。
また、複数の医療機関を受診することは控えましょう。
医療機関を受診する際には、マスクを着用するほか、手洗いや咳エチケット(咳やくしゃみをする際に、マスクやティッシュ、ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえる)を徹底しましょう。
2.自分が感染しないために
コロナウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染です。原則として空気感染はありません。最も重要な対策は、咳エチケットと手洗い・アルコール消毒など手指衛生を徹底することです。
手洗いが大切な理由は、ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、自分の手にもウイルスが付着している可能性があるからです。外出先からの帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。
また、できる限り混雑した場所を避けること、十分な睡眠をとることも重要です。
3.正しい情報を発信している人を見つけておく
ネット上をはじめとして、多くのメディアで情報があふれていますが、どの情報が正しいかを見極めることはとても大切です。
情報に接した際、その情報は誰が発したものか、出典を必ず確認しましょう。そして、たとえ医者が発言・執筆した内容でも、感染症の専門医でなければ、正しいとは限りません。感染症の専門医や公的な研究機関、厚生労働省などの公的情報を参考にしましょう。「テレビに出てる人が言っていた」、「SNSに書いてあった」というだけで、鵜呑みにするのは危険です。
また、物資が不足しているなどといった感染症に直接かかわらない情報も、正しいものかをきちんと判断することは大切です。トイレットペーパーやティッシュペーパーが不足している情報がありましたが、厚生労働省が「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」の中で、“通常どおりの生産・供給が行われており、今後とも不足する懸念はない"と回答し、日本家庭紙工業会のリリースを掲載しています。むやみに買い占めなどを行うことで、必要な方に物資が届かないといったことが起きるなど、悪循環を生みだしてしまいます。
過度に心配しパニックになることなく、情報を正しく理解し、自身の感染予防と万が一の際の適切な行動につなげることが、いま最も大切です。
なお、このサイト、感染症・予防接種ナビ は、感染症の専門家の監修・取材協力により、正しく信頼できる情報発信を目指して運営しています。
■参考リンク:
厚生労働省新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
■参考リンク:
厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策専門家会議
■参考リンク:
厚生労働省新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏