【感染症ニュース】新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 感染経路・予防法・致死率など正しい情報を知ることが重要
2020年2月13日更新
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国立感染症研究所で分離された <br />新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真 (提供元:国立感染症研究所)
国立感染症研究所で分離された
新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真 (提供元:国立感染症研究所)
 中国国内において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大が続いています。日本国内においても、主に湖北省への滞在歴・渡航歴がある人を中心に、患者発生が見られています。新型コロナウイルス感染症の感染経路は、飛沫感染および接触感染です。主な症状は、発熱・咳・倦怠感であり、SARS・MERSでみられていた下痢を伴う消化器症状は比較的少ないといわれています。対策として最も重要なことは、咳エチケットと手洗いやアルコールなどによる手指衛生を徹底することに変わりありません。難しいかもしれませんが、できるかぎり正確な情報を得る努力をしていただき、過度に心配することなくこれらの基本的な対策をしっかりと行ってください。

概要

 2019年末頃より「新型コロナウイルス」が出現しました。中国の武漢市を中心に、湖北省から中国全土にとどまらず、日本を含めた世界各国で感染発症者が認められています。中国の発表によると、2020年2月2日現在、患者発生数は中国国内で14,423人と連日数千人規模で増え続けており、死亡者数も304人となっています。単純計算すると致死率は2.1%となります。ちなみに先進国における麻しん(はしか)の致死率は0.2%、インフルエンザは0.1%弱とされています。致死率2.1%の未知の感染症が中国を起点に世界中に広がり、やがて日本も飲み込まれるとしたら、一般の方々のみならず、最前線に立たないといけない医療従事者も怖いと思います。その上、多くのメディアは、多くの人が怖いと思う情報を何度も何度も強調して報道していますので、怖さが増幅されてしまいます。

明らかになってきていることは ~感染経路と予防・対策~

 まず、ウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染です。最も重要な対策は、咳エチケットと手洗い・アルコール消毒など手指衛生を徹底することです。咳エチケットは、個人が咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえることです。

 原則として空気感染はないので、テレビメディアで映像が頻繁に流れている陰圧室は重要ではありません。SARSでは当初、医療従事者への感染が問題となりましたが、マスクの着用が感染発病を抑える結果となったとの論文が、香港やシンガポールから出ています。

臨床情報

 潜伏期間は、3~6日と書かれている文献と、平均5.4日と書かれているものがありました。主な症状は発熱と咳、倦怠感などです。SARSやMERSでは、下痢症状の頻度も少なくありませんでしたが、新型コロナウイルス感染症では3%程度と、今のところ少ないとされています。SARS、MERSと同様に、成人の発病、高年齢者での重症化と死亡が目立ちます。一方でまだ詳細なデータはありませんが、小さな子ども(小児)は、感染していても症状がほとんどなく経過するのではと予想されます。

致死率について

 2020年2月1日現在では、致死率は、中国全土では2.19%、武漢市5.97%、湖北省(武漢以外)1.45%、湖北省以外の中国全土0.22%となっています。なぜこんなにも致死率に差があるのでしょうか。

 報道等でも明らかになっていますが、武漢市とその周辺の地域では、殺到する患者に追われて医療体制が破綻してしまっているといっても過言ではなく、現時点では重症例のみを診断し、治療を行っていると考えられることから、非常に致死率が高くなってしまっているということが言えます。死亡者数はどのような状況であっても、正確性がある程度期待できますから、死亡者数から逆算した湖北省の実際の患者数は、10万人を超えていると推定されます。中国の他地域よりもまだもう少し致死率は低い可能性があります。

正しい情報を参考に

 難しいかもしれませんが、できるかぎり正確な情報を得る努力をしていただき、過度に心配することなく基本的な対策をしっかりと行ってください。SNSなどの匿名情報ではなく、厚生労働省や国立感染症研究所といった公的機関の情報を参考にすることが重要です。

参考リンク:厚生労働省新型コロナウイルスに関するQ&A

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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