追加的対策の趣旨及び内容
これまでの風しん対策は、乳幼児及び妊娠を希望する女性等を中心に行っていましたが、2018年の風しん患者報告の中心は、過去にワクチンを受けておらず、風しんウイルスに感染したことがない、抗体を保有していない成人男性でした。今般の追加的対象者の多くは働く世代の男性で、これまでにはなかった新たな取り組みとして実施されます。
2020年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催され、様々な国から多くの訪日客の増加が見込まれています。人の往来が活発化し、国内で流行している感染症の感染が拡大する恐れがあることが懸念されます。
そのため、早急に今後の風しんの発生及びまん延を予防するための対策が必要になっています。2019年4月から2022年3月31日までの時限措置として段階的に実施の予定です。
これによって、昨年秋以来の流行が縮小あるいは収束する可能性については、予想はできません。
対象者
1962年(昭和37年)4月2日から1979年(昭和54年)4月1日までの間に生まれた男性(現在39歳から56歳の男性)。
風しんの症状と予防
風しんは、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症です。症状が現れない不顕性感染から、重篤な合併症(脳炎や血小板減少性紫斑病)併発まで幅広く、臨床症状のみで風しんと診断することは困難な疾患です。男女ともにワクチンを受けて、まず風しんの流行を抑制し、女性は感染予防に必要な免疫を妊娠前に獲得しておくことが重要です。そのためには1歳以上で2回の予防接種を受けておくことが求められています。
▼風しんとは「動画」で解説
先天性風しん症候群とは
妊娠20週頃までの女性が風しんウイルスに感染すると、胎児にも風しんウイルスが感染して、眼、耳、心臓に障害をもつ先天性風しん症候群の児が生まれる可能性があります。妊娠中は風しん含有ワクチンの接種は受けられず、受けた後は2か月間妊娠を避ける必要があることから、女性は妊娠前に2回の風しん含有ワクチンを受けておくこと及び妊婦の周囲の者に対するワクチン接種を行うことが重要です。また、30~50代の男性で風しんに罹ったことがなく、風しん含有ワクチンを受けていないか、あるいは接種歴が不明の場合は、早めにMRワクチンを受けておくことが奨められます。風しんはワクチンで予防可能な感染症です。
先天性風しん症候群の発生を防ぐためには
妊婦への感染を防止することが重要であり、妊娠出産年齢の女性及び妊婦の周囲の者のうち感受性者を減少させる必要があります。また、風しんの感染拡大を防止するためには、30~50代の男性に蓄積した感受性者を減少させる必要があります。
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監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏