【感染症ニュース】伝染性紅斑(りんご病) 患者数が増加 今後2015年以来の流行となる予想 特に妊婦の感染に注意
2018年11月29日更新
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図:伝染性紅斑定点当たり報告数<br />情報元:IDWR 11月12日~11月18日(第46週)
図:伝染性紅斑定点当たり報告数
情報元:IDWR 11月12日~11月18日(第46週)
 2018/11/12~11/18(第46週)の伝染性紅斑の患者報告数は1,921人で、例年と比べて患者数が増加しており、今後2015年以来の大きな流行となることが予想されます。特に妊婦が感染すると流産の原因となることがありますので、注意が必要です。

 4~5歳を中心に幼児、学童に好発する感染症で、単鎖DNAウイルスであるヒトパルボウイルスB19が病原体です。典型例では両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」と呼ばれることがありますが、実際には典型的な症状ではない例や症状が現れないケースもあり、様々な症状があることが明らかになっています。感染後約1週間で軽い感冒様症状を示すことがありますが、この時期にウイルス血症を起こしており、ウイルスの体外への排泄量は最も多くなります。

患者数の動向

 IDWRの速報データによると
 2018/10/22~10/28(第43週)は定点把握疾患、報告数が1,582件(0.5)
 2018/10/29~11/4(第44週)は定点把握疾患、報告数が1,402件(0.44)
 2018/11/5~11/11(第45週)は定点把握疾患、報告数が2,030件(0.64)
 2018/11/12~11/18(第46週)は定点把握疾患、報告数が1,921件(0.61)

 例年と比べて患者数が増加

地域別情報

 2018/11/12~11/18(第46週)の速報データによると患者数が多い都道府県ランキング
 ・宮城県(4.25)
 ・新潟県(1.63)
 ・東京都(1.48)
 ・神奈川県(1.45)
 ・埼玉県(1.18)
 
 ( )内の数字は定点当り報告数です。

症状

 感染後10~20日で現れる両頬の境界鮮明な紅斑があります。続いて腕、脚部にも両側性にレース様の紅斑がみられます。体幹部(胸腹背部)にまでこの発疹が現れることもあります。発熱はあっても軽度です。本疾患の大きな特徴として、発疹出現時期を迎えて伝染性紅斑と診断された時点では、抗体産生後であり、ウイルス血症はほぼ終息し、既に他者への感染性は、ほとんどないといわれています。

 成人の場合、両頬の蝶形紅斑は少ないですが、合併症である関節痛・関節炎の頻度は、成人男性では約30%、成人女性では約60%と高率です。(小児では約10%以下)

 妊婦が感染すると、胎児水腫や流産の可能性があります。妊娠前半期は、より危険性が高いといわれていますが、後半期にも胎児感染は生じるとの報告があります。その他、溶血性貧血患者が感染した場合の貧血発作を引き起こすことがあり、他にも血小板減少症、顆粒球減少症、血球貪食症候群等の稀ですが重篤な合併症が知られています。

感染経路と対策

 通常は飛沫感染もしくは接触感染ですが、まれにウイルス血症の時期に採取された血液製剤からの感染の報告があります。本症は紅斑出現の時期には殆ど感染力はありませんが、反対にウイルス排泄時期には特徴的な症状が現れないため診断に至らず、効果的な二次感染の予防策はありません。

伝染性紅斑(りんご病)について詳しく見る

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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