麻しんと思われる症状がある場合は、事前に医療機関に連絡してから受診を
2018年5月2日更新
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「知ってなっ得!感染症の予防」より
「知ってなっ得!感染症の予防」より
 麻しんは空気感染する感染症です。マスクを装着しても感染を防ぐことは困難です。麻しんの感染発症を防ぐ唯一の予防手段は、予めワクチンを接種して麻しんに対する免疫を獲得しておくことです。麻しんと風しんの混合ワクチンを1度接種すると95%、2度接種すると99%の免疫がつきます。

概要

 麻しんは「はしか」とも呼ばれ、パラミクソウイルス科に属する麻しんウイルスの感染によって起こる急性熱性発疹性の感染症です。麻しんウイルスは人のみに感染するウイルスであり、感染発症した人から人へと感染していきます。感染力は極めて強く、麻しんに対して免疫がない人が麻しんウイルスに感染すると、90%以上が発病し、不顕性感染は殆どないことも特徴の1つです。

症状

 麻しんウイルスの感染後、10~12日間の潜伏期の後に発熱や咳などの症状で発症します。38℃前後の発熱が2~4日間続き、倦怠感、咳、鼻みず、くしゃみなどの上気道炎症状と結膜炎症状(結膜充血、眼脂など)が現れて次第に増強していきます。乳幼児は、下痢、腹痛等の消化器症状を伴うことも少なくありません。

 この病初期の段階を『カタル期(または前駆期)』と呼んでいます。

 やや隆起した1mm程度の小さな白色の小さな斑点のことを「コプリック班」と呼びますが、病初期の段階に麻しんに特徴的な頬粘膜(口のなかの頬の裏側)に出現します。

 コプリック斑を見つけることによって、全身に発疹が出現する前に臨床的に麻しんと診断することが可能です。カタル期を過ぎると一旦解熱傾向となり、半日程度経過した後に高熱(多くは39℃以上)をきたすようになると同時に体表面に発疹が出現してきます。発疹は耳介後部、頚部、前額部から出始め、翌日には顔面、体幹部、上腕におよび、2日後には四肢末端にまで至ります。発疹ははじめ鮮紅色扁平ですが、まもなく皮膚面より隆起し、融合して不整形斑状(斑丘疹)となります。指圧によって退色し、一部には健常皮膚が残っています。次いで暗赤色となり、出現順序に従って退色していきます。この時期には高熱が続き、上気道炎や結膜炎の症状がより一層強くなります。この病態を示す時期を『発疹期』と呼びます。

 発疹出現から3~4日間続いた高熱は軽減して解熱傾向となり、上気道炎や結膜炎症状も軽減し、発疹は黒ずんだ色素沈着へと移行し、合併症等で重篤化していなければ発症後7~10日後に回復していきます。この期間を『回復期』と呼びます。しかし、麻しんを発症した場合はリンパ球機能などの免疫力が低下するため、しばらくは他の感染症に罹ると重症になりやすく、また体力等が戻って来るには結局1か月位を要することが珍しくありません。また、麻しんは発熱が1週間継続し、他の症状も強いため、たとえ合併症をきたさなくても入院を要することが少なくありません。完全に回復するまでには時間を要すること、また下記にあげるような合併症をきたす場合があること等を考慮すると、麻しんは未だに罹患した場合は重症な感染症であるといえます。

感染経路

 麻しんは麻しんウイルスが人から人へ感染していく感染症です。他の生物は媒介しません。人から人への感染経路としては空気(飛沫核)感染の他に、飛沫感染、接触感染もあります。麻しんは空気感染によって拡がる代表的な感染症であり、その感染力は強く、1人の発症者から12~14人に感染させるといわれています。麻しん発症者が周囲の人に感染させることが可能な期間(感染可能期間)は、発熱等の症状が出現する1日前から発疹出現後4~5日目くらいまでです。学校保健安全法施行規則では、麻しんに罹患した場合は解熱後3日間を経過するまで出席停止とされています。

予防

 麻しんは空気(飛沫核)感染する感染症です。麻しんウイルスの直径は100~250nmであり、飛沫核の状態で空中を浮遊し、それを吸い込むことで感染しますので、マスクを装着しても感染を防ぐことは困難です。麻しんの感染発症を防ぐ唯一の予防手段は、予めワクチンを接種して麻しんに対する免疫を獲得しておくことです。

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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