水痘の報告数は過去10年間と比較して大きく減少 今後高齢者を中心に帯状疱疹発症者が増加する可能性
情報元:IDWR2015年第23週(2015年6月1日~2015年6月7日) 監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
情報元:IDWR2015年第23週(2015年6月1日~2015年6月7日) 監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
 水痘(水ぼうそう)は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に初めて感染(初感染)した時に発症する急性のウイルス感染症です。水痘は麻疹と並んで感染力が極めて強く、水痘に対する免疫がなければ感染後2週間程度の潜伏期間を経て発疹が出現します。日本では小児を中心に年間数十万人が水痘に罹患していましたが、2014年10月からようやく水痘ワクチンが定期接種となったために、今年に入り水痘の報告数は過去10年間と比較して大きく減少した状態が続いています。今後も水痘の発症報告数は、過去10年間と比較して低い数値で推移していくものと思われます。

 一方、水ぼうそう(水痘)患者数が減少していくと水ぼうそう(水痘)のウイルスに感染する機会も減少していくために、今後高齢者を中心に、帯状疱疹の発症者が増加してくる可能性があります。これまでは過去に水ぼうそう(水痘)を発病した人も、感染することによって水ぼうそう(水痘)に対する免疫が増強し、それによって発症を抑える結果となっていたためです。

 では、やはり定期接種などせずに、水ぼうそう(水痘)がこれまでのように日本国内で流行し続ける方がいいのでしょうか?それでは毎年たくさんの子ども達が水ぼうそう(水痘)を発病することによって、いつまでたっても将来帯状疱疹を発症する人の数を減らすことはできないと思われます。

 一時的に帯状疱疹の発症者数は増加するかもしれませんが、現在行われている水ぼうそう(水痘)ワクチンの定期接種は、将来大きく帯状疱疹の発症者を減少させるために重要であることを理解していただきたいと思います。

 また、過去に水ぼうそう(水痘)に罹患したことがある成人が、今後帯状疱疹を発症する可能性を減らすことを目的として、成人を対象(60歳以上)とした水ぼうそう(水痘)ワクチンの接種が既に米国等では行われています。我が国の成人の大半は過去に水ぼうそう(水痘)に罹患した経験があり、高年齢となるにつれて少なからぬ人達が帯状疱疹を発症していくことになると予想されます。今後我が国でも過去に水ぼうそう(水痘)に罹患した人に対する帯状疱疹の予防対策としてのワクチン接種の有用性について、検討されていくこととなると思われます。

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
更新:2015/6/26

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