溶連菌感染症・3週連続減少したが、過去10年間の同時期と比較して8週連続最多
出典:国立感染症研究所感染症疫学センター 感染症発生動向調査週報 2015年第14週通巻第17巻第14号掲載資料
出典:国立感染症研究所感染症疫学センター 感染症発生動向調査週報 2015年第14週通巻第17巻第14号掲載資料
 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の定点当たり報告数は3週連続で減少しましたが、過去10年間の同時期と比較して8週連続最多となっています。
 適切な治療を行わなかった場合、リウマチ熱、急性糸球体腎炎など非化膿性の合併症を引き起こす可能性があります。発熱、咽頭痛などの疑わしい症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。最も患者数が増加する6~7月に向けて、長期にわたって、注意が必要です。

地域別情報

 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)が本格的な流行となっている都道府県は、山形県、富山県、石川県、鳥取県、山口県、鹿児島県 
  ※感染症アラート 2015年4月6日〜2015年4月12日 過去5年間の全国47都道府県の定点あたり報告数(厚生労働省・国立感染症研究所IDWR週報)の値の95%に相当するパーセンタイル点を超える値を本格的な流行としています。
 

症状

 潜伏期間は2~5日であり、その間の周囲への感染性はわかっていません。発症する場合は潜伏期間を経て突然の発熱と全身倦怠感、咽頭痛によって始まり、しばしば嘔吐を伴います。咽頭壁は浮腫状で扁桃には浸出液を伴っています。軟口蓋に点状出血がみられることがあり、更には特徴的な苺(イチゴ)舌(写真)が認められる場合があります。この苺舌ですが、発症早期には舌は白苔で覆われており、その後白苔が剥離した後で苺舌がみられます。
 発熱開始後12 ~24 時間すると点状紅斑様、日焼け様の皮疹が出現して猩紅熱と呼ばれる病態を呈することがあります。針頭大の皮疹により、 皮膚が紙ヤスリ様の手触りとなる事が特徴的です。この場合、通常顔面には皮疹はなく、額と頬が紅潮し、口の周りのみ蒼白にみえる(口囲蒼白)と言われています。

治療

 治療にはペニシリン系の抗菌薬やセフェム系抗菌薬の投与が推奨されており、投与期間はペニシリン系の場合は10日間、セフェム系の場合は5日間が推奨されています。これまでA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の治療にはペニシリン系抗菌薬を第1選択薬としてリウマチ熱や糸球体腎炎の合併を予防するために10日間投与することが推奨されてきました。しかし、ペニシリン投与後にも15~20%程度の患者が当初感染した血清型と同じ型のA群溶血性レンサ球菌を保有し続けると言われています。これは投与期間が長期に渡るために服薬のコンプライアンスが不十分となってしまう場合が少なくないこと、周囲からの再感染、咽頭部に常在する他のβラクタマーゼ産生菌の影響、菌が細胞内でも生育できること、患部にバイオフィルムが掲載されていて薬剤が浸透しにくい場合があること、等がその理由としてあげられています。除菌が困難な場合には、βラクタマーゼ阻害薬が配合されたペニシリン系抗菌薬や、セフェム系抗菌薬の10日間投与が推奨されています。また、ペニシリンアレルギーがある場合にはエリスロマイシン等のマクロライド系抗菌薬の投与が行われますが、マクロライド耐性菌である場合があり、慎重な対応が求められます。

感染経路

 主な感染経路は、発症者もしくは保菌者(特に鼻咽頭部に保菌している者)由来の飛沫による飛沫感染と濃厚な直接接触による接触感染です。物品を介した間接接触による感染は稀とされていますが、患者もしくは保菌者由来の口腔もしくは鼻腔由来の体液が明らかに付着している物品では注意が必要です。
 発症者に対しては、適切な抗菌薬による治療が開始されてから48時間が経過するまでは学校、幼稚園、保育園での集団生活は許可すべきではないとされています。

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
更新:2015/4/22

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