問21 SFTSウイルスはどのようなウイルスですか?

答 SFTSウイルスは、フェヌイウイルス(旧ブニヤウイルス)科バンダウイルス(旧フレボウイルス)属に分類される、三分節1本鎖RNAを有するウイルスです。SFTSウイルスは酸や熱に弱く、一般的な消毒剤(消毒用アルコールなど)や台所用洗剤、紫外線照射等で感染性がなくなります。

問22 日本で見つかったSFTSウイルスは、中国や韓国で見つかっているものと同一のウイルスですか?

答 日本で見つかったSFTSウイルスは、中国や韓国のSFTSウイルスとは、遺伝子レベルでわずかに異なりますが、性質は同じです。

問23 潜伏期間はどのくらいですか?

答 (マダニに咬まれてから)5日~2週間程度とされています。ヒトからヒトへの感染事例(患者から医療従事者への感染)やネコに咬まれて感染する場合には潜伏期間は、より短い場合があります。

問24 SFTSにかかると、どのような症状が出ますか?

答 発熱、消化器症状(食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が出現します。時に頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹、呼吸不全症状、出血症状(歯肉出血、紫斑、下血)が出現します。

問25 検査所見の特徴はどのようなものですか?

答 血小板減少(10万/mm3未満)、白血球減少、血清電解質異常(低Na血症、低Ca血症)、血清酵素異常(AST、ALT、LDH、CKの上昇)、尿検査異常(タンパク尿、血尿)などが見られます。 骨髄検査が実施される場合が比較的多く、骨髄検査ではほぼ全例で血球貪食症候群の所見が認められます。

問26 どのようにして診断すればよいですか?

答 診断にはウイルス学的な検査が必須です。発熱、消化器症状、血小板減少、白血球減少、AST・ALT・LDHの上昇を認めた場合、本疾患を疑います。ただし、全ての症状や検査所見が認められる訳ではありません。また、患者がマダニに咬まれたことに気がついていなかったり、刺し口が見つからなかったりする場合も多くあります。そのためマダニに咬まれたことが確認されず、さらに上記すべての症状や検査結果が認められない場合であってもSFTSは否定できません。また、体調の悪い動物の体液と接触した数日後に発熱、全身倦怠感、消化器症状等の症状が出現した患者を診た場合には、SFTSも鑑別診断に挙げる必要があります。SFTSが疑われる場合には、最寄りの保健所に報告するとともに、検査を依頼して下さい。地方衛生研究所や国立感染症研究所においてウイルス学的検査が実施されます。
参考:国立国際医療センター「SFTS診療の手引き

問27 鑑別を要する疾患は何ですか?

答 SFTSと同様の症状を呈し得る疾患は様々なものが考えられます。初期症状は急性胃腸炎、インフルエンザ様疾患の症状と類似し区別がつきません。具体的には、刺し口がある場合には、ダニ媒介疾患であるつつが虫病、日本紅斑熱、ライム病、エーリキア症及びアナプラズマ症が鑑別疾患として挙げられます。また、上気道炎、胃腸炎などの感染症も鑑別疾患として挙げられます。SFTSでは、骨髄検査が実施されることが多く、ほとんどの患者で血球貪食症候群の所見が認められます。そのため、SFTSウイルス以外のウイルスによる血球貪食症候群や敗血症、膠原病・血管炎として、血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒素症候群(HUS)、全身性エリテマトーデス、悪性疾患として血液腫瘍疾患(白血病や悪性リンパ腫)なども鑑別疾患に挙げられます。

問28 SFTSが疑われる患者を診た場合、どう対応したらよいですか?

答 現在、地方衛生研究所及び国立感染症研究所で診断のための検査を実施することが可能です。最寄りの保健所にご相談ください。

問29 治療方法はありますか?

答 有効な抗ウイルス薬等による特異的な治療法はありません。対症療法が主体になります。中国において抗ウイルス薬であるリバビリンに関する研究報告が示されていますが、リバビリン治療群と非治療群とでは致命率に違いは確認されておらず、効果はないと考えられています。また、ファビピラビル(商品名:アビガン)は動物実験で治療効果があることが示されています。また、リバビリンの治療効果よりも高いことが確認されています。しかし、現時点では、SFTS患者に対する治療効果は証明されていません。ファビピラビルの臨床研究について質問がある場合には、国立感染症研究所(info@niid.go.jp)までお問い合わせください。

問30 患者を取り扱う上での注意点は何ですか?

答 患者血液や分泌物との直接接触が原因と考えられるヒト-ヒト感染の事例も報告されています。SFTSは致命率が高い疾患であることを考慮すると、標準感染予防策に加えて接触感染予防策を実施し、医療提供者や家族等が感染しないように予防策を徹底することが重要です。飛沫感染や空気感染の報告はありません。

問31 患者検体(サンプル)を取り扱う場合の注意点は何ですか?

答 患者の血液や体液には感染性のあるウイルスが存在します。標準感染予防策を遵守して下さい。

問32 検査方法等、技術的な内容の相談窓口を教えてください。

答 国立感染症研究所info@niid.go.jpにお問い合わせください。

問33 検査でSFTSであることが確定した場合、どう対応したらよいですか?

答 SFTSは感染症法上の四類感染症に位置付けられていますので、患者をSFTSと診断した場合には、最寄りの保健所に届け出て下さい。

問34 ご遺体の取り扱いについて教えてください。

答 SFTSで亡くなられた患者の御遺体の体液には感染性のあるSFTSウイルスが含まれています。厳重な感染予防策が実施される必要があります。また、御遺族、御遺体を取り扱う方々にもそのことを説明してください。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の診療の手引き(http://dcc.ncgm.go.jp/information/pdf/SFTS_2019.pdf)を参照して下さい。

出典:「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A(第6版 令和2年7月21日作成)」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html