問1 ジカウイルス感染症とは、どのような病気ですか?

答 ジカウイルス感染症は、ジカウイルス病と先天性ジカウイルス感染症をいいます。

 ジカウイルス病は、後天的に、ジカウイルスが感染することにより起こる感染症で、軽度の発熱、発疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛、倦怠感、頭痛などが主な症状です。

 ジカウイルスは母体から胎児への感染を起こすことがあり(先天性ジカウイルス感染症)、小頭症などの先天性障害を起こす可能性があります。

問2 どのようにして感染するのですか?

答 ジカウイルスを持った蚊がヒトを吸血することで感染します(蚊媒介性)。基本的に、感染したヒトから他のヒトに直接感染するような病気ではありませんが、輸血や性行為によって感染する場合もあります。また、感染しても全員が発症するわけではなく、症状がないか、症状が軽いため気付かないこともあります。

 妊娠中の女性が感染すると胎児に感染する可能性があります。

問3 世界のどの地域が流行地ですか?

答 アフリカ、中南米、アジア太平洋地域で発生があります。特に、近年は中南米等で流行しています。

詳しくはジカウイルス感染症の流行地域を確認してください。

問4 日本国内での発生はありますか?

答 2013 年以降、海外の流行地域で感染し、発症した症例(輸入症例)が、報告されていますが、日本国内で感染した症例はありません。
IASR(2014年2月号)フランス領ポリネシア・ボラボラ島帰国後にZika feverと診断された日本人旅行者の2例
IASR(2014年10月号)タイ・サムイ島から帰国後にジカ熱と診断された日本人旅行者の1例

問5 感染を媒介する蚊は日本にもいますか?

答 ヤブカ属のネッタイシマカやヒトスジシマカが、ウイルスを媒介することが確認されています。ネッタイシマカは、日本には常在していませんが、ヒトスジシマカは、日本のほとんどの地域(本州以南)でみられます。

問6 治療薬はありますか?

答 ジカウイルスに対する特有の薬は見つかっておりません。対症療法となります。

問7 かかると重い病気ですか?

答 ジカウイルス病は、感染しても 症状がないか、症状が軽いため気付きにくいこともあります。症状は軽く、2~7日続いた後に治り、予後は比較的良好な感染症です。

問8 妊婦や胎児にジカウイルス感染症はどのように影響しますか?

答 ブラジル保健省は、妊娠中のジカウイルス感染と胎児の小頭症に関連がみられるとの発表をしており、 2016 年1月 15 日には、米国 CDC が、妊娠中のジカウイルス感染と小頭症との関連についてより詳細な調査結果が得られるまでは、流行国地域(問3参照)への妊婦の方の渡航を控えるよう警告し、 妊娠予定の女性に対しても主治医と相談の上で、厳密な防蚊対策を推奨しました。

 1 月21日には、 ECDC (欧州疾病対策センター)は、流行地域への妊婦及び妊娠予定の方の渡航を控えることを推奨しました。世界保健機関(WHO)は、 2 月 1 日に、緊急委員会を開催し、小頭症及びその他の神経障害の集団発生に関する「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態( PHEIC )」を宣言しました。また、3月8日に、第2回目の緊急委員会を開催し、渡航に関して以下の勧告等を発表しました。

○ジカウイルスの伝播がある地域等への(からの)渡航や貿易についての一般的な制限はない。
○妊婦はジカウイルス感染症が発生している地域への渡航をしないよう勧告される。ジカウイルス感染症が発生している地域に住んでいる又は渡航するパートナーのいる妊婦は、妊娠期間中は、安全な性行為を確保するか性行為を控える。
○ジカウイルス感染症が発生している地域へ渡航する人は、可能性のあるリスクや蚊による刺咬の可能性を低くするための適切な措置についての最新の勧告を入手し、帰国後は、伝播のリスクを下げるため、安全な性行為を含めた適切な対策をとる。
○WHOは、ジカウイルス感染に関するリスクの性質や期間についての情報とともに渡航についてのガイダンスを定期的に更新する。

 WHOは3月31日、米国CDCは4月13日、これまでの研究結果から、ジカウイルス感染が小頭症等の原因となるとの科学的同意が得られたと結論づけました。

 また、WHOは11月18日に第5回目の緊急委員会を開催し、「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC)」の終息を宣言し、ジカウイルス感染症については世界的に対策を進めるためにも、今後も各国が技術的な対策に取り組んでいく必要があるとしました。現在も、小頭症や他の神経障害とジカウイルスとの関連についての更なる調査が行われています。

問9 流行地域へ渡航をする場合は、どのように予防すればよいですか?

答 海外の流行地域にでかける際は、蚊に刺されないように注意しましょう。長袖、長ズボンの着用が推奨されます。また蚊の忌避剤なども現地では利用されています。

 妊娠中にジカウイルスに感染すると、胎児に小頭症等の先天性障害を来すことがあることから、妊婦及び妊娠の可能性がある方については、流行地への渡航を控えた方がよいとされています。やむを得ず渡航する場合は、主治医と相談の上で、厳密に蚊に刺されないようにする対策を講じることが必要です。また、性行為感染のリスクを考慮し、流行地域に滞在中は、症状の有無にかかわらず、性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えることを推奨します。

問10 性行為による感染はどのように予防すればよいですか?

答  ジカウイルス感染症は、蚊媒介感染事例が主ですが、性行為による感染についても、男性から女性パートナーへ、女性から男性パートナーへのいずれも少数例ではありますが感染事例が報告されています。

 性行為感染及び母体から胎児への感染のリスクを考慮し、流行地域に滞在中は症状の有無にかかわらず、性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えることを推奨します。

 また、流行地域から帰国した男女は、症状の有無にかかわらず、少なくとも6か月(※)、パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中、性行為の際に、コンドームを使用するか性行為を控えることを推奨します。

 ※ジカウイルス感染症を発症した男性の精液から、最長188日までジカウイルスが検出された研究報告があります。検出されたウイルスから感染能力は確認されていませんが、注意が必要です。
(WHO暫定ガイダンス(9月6日改訂)を踏まえた対応)

(参考)
WHOは、性行為による感染予防について、暫定ガイダンス(2月18日作成、6月7日改訂)を9月6日に改訂しました。その概要は、次のとおりです。

 WHO は、ジカウイルスが性行為により伝播しうる新出エビデンスに基づき、下記のごとく推奨する。

2. ジカウイルス感染症の流行地域で ない 地域においては、下記を守るべきである。

 a. ジカウイルスの伝播が発生している地域から帰国した男女は、性行為によるジカウイルス感染を防ぐため、帰国後少なくとも6か月間より安全な性行為を行うか、性行為を控えるべきである。

 b. 妊娠を計画しているカップル又は女性のうち、ジカウイルスの伝播が発生している地域から帰国した者は、妊娠を試みる前に、ジカウイルス感染の可能性がなくなったことを保証するため、少なくとも6か月は待つべきであることを勧告される。

 c. 妊婦の性パートナーのうち、ジカウイルスの伝播が発生している地域から帰国した者は、少なくとも妊娠期間中を通じて、より安全な性行為を行うか、性行為を控えることを勧告されるべきである。

 註:WHOは、ジカウイルスを検出するために、ルーチンで精液の検査を行うことは推奨しない。しかし、症状の有無にかかわらず、ジカウイルスの伝播が発生している地域から帰国後の男性は、国の方針に従って、精液の検査を考慮されうる。偽陰性及び間欠的なウイルス排泄のため、異なる日に2回検査(例:1週間間隔で実施)を実施すべきである。しかし、2回の検査の正確間隔を決定するためには、さらなるエビデンスが必要である。なお、詳細については、以下のHPを確認してください。
WHO

問11 日本で購入した忌避剤は、中南米においても効果がありますか?

答 国内では、「ディート」や「イカリジン」を成分とした忌避剤が市販されています。中南米の蚊にも効果があります。製品の用法・用量や使用上の注意を守って使用します。 製品の忌避効果は、蒸発、雨、発汗などにより持続性が低下するので、一定の効果を得るためには、定期的に再塗布することが必要です。

問12 予防接種はありますか?

答  ジカウイルス感染症に有効なワクチンはありません。

問13 海外旅行中に流行地域で蚊に刺された場合はどこに相談すればよいですか?

答 すべての蚊がジカウイルスを保有している訳ではないので、蚊に刺されたことだけで過分に心配する必要はありません。

 心配な場合は、帰国された際に、空港等の検疫所でご相談ください。また、帰国後に心配なことがある場合は、最寄りの保健所等に御相談ください。なお、発熱などの症状がある場合には、医療機関を受診してください。

問14 日本国内でジカウイルスに感染する可能性はあるのでしょうか?

答 日本にはジカウイルスの媒介蚊であるヒトスジシマカが日本のほとんどの地域(本州以南)に生息しています。このことから、仮に流行地域でウイルスに感染した発症期の人(日本人帰国者ないしは外国人旅行者)が国内で蚊にさされ、その蚊がたまたま他者を吸血した場合に、感染する可能性は低いながらもあり得ます。

 ただし、仮にそのようなことが起きたとしても、成虫は冬を越えて生息できず、限定された場所での一過性の感染と考えられます。(ヒトスジシマカは卵で越冬しますが、ウイルスがその卵の中で越冬するという報告はありません。)

 なお、ヒトスジシマカは、日中、野外での活動性が高く、活動範囲は50~100メートル程度です。国内の活動時期は概ね5月中旬~10月下旬頃までです。

問15 流行地に居住していますが、妊娠を希望しています。どのようなことに気をつければよいですか?

答 問1にもあるとおり、 ジカウイルスは母体から胎児への感染を起こすことがあり(母子感染による先天性ジカウイルス感染症)、小頭症などの先天性障害を起こす可能性があります。母子感染しうる他の代表的な感染症(トキソプラズマ症、サイトメガロウイルス感染症、梅毒、風しんなど)と同様、母体の感染予防、母体や胎児への感染の早期診断・早期治療が重要ですが、先天性ジカウイルス感染症に関しては、現在のところ胎児への感染の診断方法やその解釈について、確立されているとはいえず、ワクチンや治療薬もありません。そのため感染予防が最も重要で、可能な限り、妊婦及び妊娠の可能性がある人の流行地への渡航は控えることをお勧めしています。

 流行地域に居住している方で、妊娠を希望する場合は、妊娠を計画する際に、妊娠中にジカウイルスに感染するリスクについて、現地のジカウイルス感染症の流行状況やその病態をよく理解している医療機関の医師と、まず、よく相談してください。医師との相談の結果、現地で妊娠を希望する場合には、妊娠前及び妊娠中において、そのパートナーとともに厳密な防蚊対策(住居周辺や住居内の蚊の幼虫・成虫駆除を含む)を講じるようにしてください。また、妊娠期間中は、パートナーのジカウイルス病を疑わせる症状の有無にかかわらず、性行為の際に適切にコンドームを使用するか、性行為を控えることを推奨します。妊娠が判明した場合、ジカウイルスへの感染の機会を減らすこと、また、妊娠経過を適切に観察する必要性の両面から、妊婦が帰国することも選択肢として考慮してください。

 現地における邦人向けの医療機関については、下記の「世界の医療事情(在外公館医務官情報)」をご参照いただくか、居住地を管轄する日本国大使館又は総領事館に問い合わせてください。

 問9にもあるとおり、ジカウイルスの感染を予防するためには、流行地域に滞在中は、蚊に刺されないように注意しましょう。長袖、長ズボンの着用が推奨されます。また蚊の忌避剤なども現地では利用されています。
「世界の医療事情(在外公館医務官情報)」

出典:厚生労働省 ジカウイルス感染症に関するQ&Aについて (2016年12月14日更新)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000109899.html