合併症を起こす頻度は健康小児では少ないものの、0歳および15歳以上では合併症の頻度ならびに致死率が高いとされています。1~14歳で水痘を発症した場合の致死率は水痘患者約10万人に1人ですが、15~19歳では10万人当たり2.7人、30~49歳では10万人当たり25.2人と報告されています。発疹が極めて多いものや、稀に肺炎、細菌の二次感染、肝機能異常、脳炎を起こすこともあります。ワクチンの接種は水痘の発病や重症化のリスクを下げるだけでなく、水痘に罹ることによって、本人が保育所や幼稚園や学校を休む、あるいはそれに伴って母親等の保護者が仕事を休むことを防ぐといった意味合いがあります。また現在では、ワクチン接種することで水痘の発病リスクを下げることにより、水痘罹患後の再活性化像である将来の帯状疱疹発症のリスクを大きく下げることにつながるとも考えられています。これらを考えて最終的に接種の必要性を決めることになります。
近年、保育所入所児童数が増加しています。自然感染すると登園可能になるまで1週間程度必要であり、保護者も一緒に仕事を休まなければならず、ワクチンにより予防しておくことは本人にとっても保護者にとってもメリットがあるといえます。1歳以上であれば、集団生活に入る前に水痘ワクチンを受けておくことが勧められます。
水痘を単に子どもの軽い病気とみなすことは必ずしもできません。また免疫がなければ成人も罹り、かなり重症です。アシクロビル等の優れた抗ウイルス薬が導入されているので、以前よりは重症例であっても治癒できる可能性が高くなっていますが、一旦発症した場合には、重症化あるいは稀ながらも死亡の可能性があることを正しく知っておく必要があります。
このように、水痘の疾患としての重要性が認識され、その予防を広く実施する必要性から、平成26(2014)年10月1日より水痘の予防接種は定期接種(A類疾病)となりました。
出典:「予防接種に関するQ&A集 水痘」-一般社団法人日本ワクチン産業協会(岡部信彦 川崎市健康安全研究所所長、多屋馨子国立感染症研究所感染症疫学センター第三室(予防接種室)室長)