患者の咳やくしゃみでうつる! 患者の咳やくしゃみでうつる!
国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2025年第9週(2/24〜3/2)によると、全国のRSウイルス感染症の定点あたり報告数は1.27。これで8週連続の増加となりました。都道府県別の定点あたり報告数は山口5.12、奈良3.68、福井2.56、愛媛2.56、佐賀2.43、福岡2.35、兵庫2.33、三重2.25、熊本2.06、宮崎2.06が2を超えています。

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RSウイルス感染症とは?

RSウイルス感染症は、RS(respiratory syncytial)ウイルスを病原体とする、乳幼児に多く認められる急性呼吸器感染症です。主な感染経路は、患者の咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、ウイルスが付着した手指や物品等を介した接触感染です。生後1歳までに50%以上の人が、2歳までにほぼ100%の人が1度は感染し、何度も感染するとされています。初感染の場合は発熱、鼻汁などの上気道症状が出現し、うち約20〜30%で気管支炎や肺炎などの下気道症状が出現するとされています。乳幼児のおける肺炎の約50%、細気管支炎の約50〜90%の原因がRSウイルス感染症と考えられています。RSウイルス感染症には特効薬はありません。治療は基本的には対症療法(酸素投与、点滴、呼吸管理など症状を和らげる治療)を行います。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「RSウイルス感染症は、これまでは秋、最近では夏を中心に流行が見られていましたが、今シーズンは冬であるにもかかわらず、患者が継続的に増加しています。私が勤務している大阪では、他の地域とは異なり春に流行することが多かったのですが、今シーズンはすでに流行水準に近づきつつあります。新型コロナウイルスの流行以来、その他の感染症の流行時期が従来とは変化し、いつ流行するのか予測が難しい状況が続いています。8週連続で増加ということですが、これからさらに流行が拡大していく可能性もあるので、十分注意する必要があります」と語っています。

生後1か月未満の乳児は、特に注意を

RSウイルス感染症の重症化リスクが高いのは、基礎疾患を有する小児(特に早産児や生後24か月以下で心臓や肺に基礎疾患が有る小児、神経・筋疾患やあるいは免疫不全の基礎疾患を有する小児等)や、生後6か月以内の乳児です。特に生後1か月未満の乳児がRSウイルスに感染した場合は、非定型的な症状を呈するために診断が困難な場合があり、突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあるので注意が必要です。

ヒトメタニューモウイルス感染症も

また、RSウイルス感染症とよく似た呼吸器感染症に、ヒトメタニューモウイルス感染症があります。ヒトメタニューモウイルスとは、2001年に発見されたウイルスで、あらゆる年齢の人が感染・発症します。主に冬の終わりから春にかけて流行すると言われており、感染している人の咳やくしゃみなどの飛沫から感染する可能性が高いとされています。潜伏期間は3〜6日で、一般的な症状としては、咳、発熱、鼻詰まり、息切れなど。通常は軽い風邪のような症状で済みますが、気管支炎や肺炎に進行することがあります。特に幼児や高齢者、免疫系に疾患がある方に上気道及び下気道疾患を引き起こす可能性があります。治療については、抗ウイルス薬はなく症状を和らげる対症療法になります。

安井医師

「私が勤務している病院の検査でも、ヒトメタニューモウイルスの感染例が出ています。ヒトメタニューモについては全国的なサーベイランスがなく、どの程度流行しているのか把握が難しいのですが、RSウイルス感染症と同様に感染が広がっているのではないかと推測できます。保育所などで子どもたちの間で多く流行すると言われていますが、高齢者施設などでも集団感染が起きた事例が、過去に何度もあります。幼いお子さんや高齢者、基礎疾患をお持ちの方などは重症化することもあるので、普段からの感染対策は引き続き行っていただきたいと思います」

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2025年第9週(2/24〜3/2)、IDWR2024年第15号〈注目すべき感染症〉RSウイルス感染症、「高齢者施設におけるヒトメタニューモウイルス感染症集団発生疑い事例」(IASR Vol. 38 p248-250: 2017年12月号)、「COVID-19流行下の小児基幹病院における当院に入院した重症ヒトメタニューモウイルス感染症の状況」(IASR Vol. 43 p188-189: 2022年8月号)
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A(令和6年5月31日改訂)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏