子どもからうつることも! 子どもからうつることも!
国立感染症研究所の2025年第5週(1/27〜2/2)速報データによると、伝染性紅斑の全国の定点当たり報告数は0.91。依然として首都圏から東北地方などでの流行が大きく、都道府県別では青森3.86、福島2.78、千葉2.64、埼玉2.46、栃木2.04、東京1.79、宮城1.67、神奈川1.54、山形1.37、高知1.08が1を超えています。流行の警報開始基準となる2.0を超えているエリアもあるため、流行地域では注意が必要です。

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別名「りんご病」とも呼ばれる、伝染性紅斑

伝染性紅斑はヒトパルボウイルスB19というウイルスが原因の感染症です。患者は5〜9歳が最も多く、次いで0〜4歳となっていますが、成人でも罹患することがあります。通常は飛沫また接触感染でうつり、10〜20日の潜伏期間のあと、この感染症の特徴である頬に赤い発しんが現れます。リンゴのように赤くなるので「リンゴ病」とも呼ばれることがあります。続いて手・足に網目状(レース状・環状)などと表現される発しんがみられ、胸・腹・背中にも現れることがあります。これらの発しんは1週間前後で消失しますが、中には長引いたり、一度消えた発しんが短期間のうちで再び出現することがあります。

症状が出る頃には、ウイルスの排泄はほぼ終わっている

伝染性紅斑の特徴として、症状が出る頃にはウイルスの排出が終わっているということがあります。典型的な症状として頬が赤くなるなどの症状がありますが、その発しんが出る7〜10日くらい前に微熱やかぜのような症状(前駆症状)が見られることが多く、その時期にウイルス血症を起こしており、ウイルス排泄量が最も多くなっています。その時に他の人にうつしている可能性があるのです。そして、発しんが現れた頃にはウイルス血症は収束しており、ウイルスの排泄はほとんどなく、感染力はほぼ消失しています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、
「伝染性紅斑は、現在、首都圏から東北地方が流行の中心になっています。しかし、今後、西日本にも広がっていき、今年1年で全国的に流行していくのではないかと予測しています」と語っています。

《経験談》伝染性紅斑 47歳 茨城県

伝染性紅斑は、大人もかかる感染症です。茨城県の47歳の方から経験談が寄せられました。
「年末、小学生の子どもが、“りんご病(伝染性紅斑)”と言われ、年明け兄弟に感染る。子どもたちは、5日ほどで軽快するが発疹や頬の赤みが出たり消えたり繰り返す。それから1週間ほど空いてから、自分が37.4度微熱。膝、足裏手首が尋常じゃないぐらいに痛む。翌朝、手足が真っ赤になり、発疹が広がり痒い。さらに翌日、顔が真っ赤に腫れ気味。熱はないがしゃがむことができないぐらい膝が痛い。そこらから2日ほど変わらず症状が続いて最初の症状から5日目足がゾウみたいにパツパツになる。手指も自分の手じゃないぐらいに浮腫み、顔も腫れている。指輪は慌てて取りました。直前に、インフルエンザに罹りましたが、同等かそれ以上に酷いです。痒い痛い超絶痛いとにかく痛い。浮腫みが、酷すぎて辛い。みなさん気をつけてください」
安井医師「経験談をお寄せ頂き、ありがとうございます。症状について、さぞ辛かったと思います。直接診察した訳ではないので、分からない部分もありますが、感染痛などの諸症状やお子さんが伝染性紅斑と診断されていることから、ご家庭内で感染した可能性があると考えられます。この方のように大人になってから伝染性紅斑に感染すると、手足の腫れが酷く、足首が曲げられず歩くのも難しくなることもあります。関節炎症状によって、1~2日ほど歩行困難になることもありますが、その後、ほとんどのケースでは自然に回復します。伝染性紅斑はウイルスそのものに効く抗ウイルス薬やワクチンがなく、治療は、症状を和らげる対症療法で行われます。個人差はありますが、症状が長引くケースもありますので、そう言った場合は、かかりつけ医などに相談してください。また、妊婦さんが感染すると、胎児に影響が出るケースもあります。妊娠中に、伝染性紅斑(りんご病)の感染・発症が疑われるケースがあれば、直ちに、産婦人科に相談してください」

気がかりな胎児感染

伝染性紅斑は、妊婦がかかると胎児に影響があるという問題があります。妊婦が感染すると胎児の異常(胎児水腫)および流産があります。妊娠前半期の感染がより危険で、胎児死亡は感染から4〜6週後に生ずることがあると報告されています。また、妊娠後半期にも胎児が感染することがあり、妊娠のどの時期においても安心することはできません。しかし、風しんほどの危険性はなく、妊婦が感染しても分娩の経過や発育が正常であることも多いとされています。子どもなど家族が発症したときにはすでにウイルスの排泄が終わっているため、妊娠しているお母さんが知らずにかかるというケースもあります。流行期には感染に十分注意してください。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2025年第5週(1/27〜2/2)速報データ、伝染性紅斑とは

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏