妊婦さんが感染しないように周りも工夫を! 妊婦さんが感染しないように周りも工夫を!
国立感染症研究所の2025年第2週(1/6-12)速報データによると、伝染性紅斑の全国の定点当たり報告数は0.94。全国的にはまだまだ低い数字ですが、首都圏・東北地方の一部で、患者報告が多くあがっています。都道府県別にみると、青森県(3.54)・福島県(2.27)・埼玉県(2.83)・千葉県(2.69)・東京都(2.43)・栃木県(2.04)で定点2を超えています。伝染性紅斑は、新型コロナウイルス感染症が流行した2020年以来、患者の発生はほとんどありませんでしたが、2024年から、各地で患者の発生が見られるようになりました。2025年も、注意が必要な感染症です。伝染性紅斑は、幼児・学童が多くかかる感染症とされますが、成人も発症するケースがあります。今回、ご紹介するのは「感染症・予防接種ナビ」に寄せられた、北海道の49歳の方の経験談です。

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北海道・49歳・あゆゆさん

はじめは頭痛、倦怠感、寒気が現れ、38度以上の発熱。風邪かと思い近所の内科受診し、解熱剤等処方される。GW期間になり旅行に行くも体調は悪いままで夜間になると高熱、関節痛が酷くなる。足首が、パンパンに浮腫み、立ち上がれない。ヨチヨチ歩きしか出来ない。食欲もなくほとんど寝て過ごす。3日くらい経つと発熱、浮腫みは少しずつおさまってきたが、入浴後両脚にレース模様の発疹がでる。倦怠感や関節痛は相変わらず強く、生活に支障あり。膠原病の症状に似ていたので不安になり、大学病院の総合診療科受診。たくさんの問診から職場が中学校であり、第一に伝染性紅斑を疑われ、そのための様々な検査をしてもらい帰宅。数日後、パルボB19ウイルスが多量に検出されて確定されました。治療薬はなく対症療法のみ、半年くらいは、症状が続くとのことでした。寝起きはこわばりも強く、リウマチも疑い検査したが大丈夫でした。

別名「りんご病」とも呼ばれる、伝染性紅斑

伝染性紅斑はヒトパルボウイルスB19というウイルスが原因の感染症です。患者は5〜9歳が最も多く、ついで0〜4歳となっていますが、成人でも罹患することがあります。通常は飛沫また接触感染でうつります。10〜20日の潜伏期間のあと、この感染症の特徴である頬に赤い発しんが現れます。リンゴのように赤くなるので「リンゴ病」とも呼ばれることがあります。続いて手・足に網目状(レース状・環状)などと表現される発しんがみられ、胸・腹・背中にも現れることがあります。これらの発しんは1週間前後で消失しますが、中には長引いたり、一度消えた発しんが短期間のうちで再び出現することがあります。成人の場合は関節痛・頭痛などを訴え、関節炎症状により1〜2日歩行困難になることがありますが、ほとんど合併症を起こすことなく自然に回復します。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「伝染性紅斑に成人が感染・発症した場合、立ち上がれないほどの痛みを感じ、動けなくなるケースもあります。特に大人の女性が感染した場合、関節痛・頭痛などの症状が出て、1-2日間、歩行困難な症例も珍しくありません。また、感染を機に免疫異常が起こり、体調がなかなか回復しないケースや、赤血球が減少する例もあります。痛みなどの症状が長引くことは稀ですが、痛みが出た場合も、痛み止めなどの対症療法のみです。大人の場合、皮膚病変などは、余り耳にしませんが、原因となるヒトパルボウイルスは、様々な症状を引き起こすことでも、知られています。現在、首都圏や東北地方の一部で、患者報告が、多くがあがっています。比較的ゆっくりと流行が広がる感染症なので、これからゆっくりと全国に広がっていき、1年ぐらいは、患者発生数が高い状況が続いていくと予測しています。伝染性紅斑は症状が出る頃にはウイルスの排出が終わっているため、予防が非常に難しい感染症です」と語っています。

症状が出る頃には、ウイルスの排泄はほぼ終わっている

伝染性紅斑の特徴として、頬が赤くなるなどの症状がありますが、その発しんが出る7〜10日くらい前に微熱やかぜのような症状(前駆症状)が見られることが多いとされています。実はその時期にウイルス血症を起こしており、ウイルス排泄量が最も多くなっています。そして、発しんが現れた頃にはウイルス血症は収束しており、ウイルスの排泄はほとんどなく、感染力はほぼ消失しています。つまり、知らないうちに感染し、他の人にもうつしている可能性があるのです。

気がかりな胎児感染

伝染性紅斑はかかっても症状としては、さほど重くはありませんが、妊婦がかかると胎児に影響があるという問題があります。妊婦が感染すると胎児の異常(胎児水腫)および流産があります。妊娠前半期の感染がより危険で、胎児死亡は感染から4〜6週後に生ずることがあると報告されています。また、妊娠後半期にも胎児が感染することがあり、妊娠のどの時期においても安心することはできません。しかし、風しんほどの危険性はなく、妊婦が感染しても分娩の経過や発育が正常であることも多いとされています。

妊婦が感染しない、させない工夫を

安井医師「伝染性紅斑の流行で気がかりなのは、妊婦さんの感染です。きょうだいが通っている保育園などで伝染性紅斑の患者が出ている場合には、施設内への立ち入りを制限するなどの配慮が必要です。お迎えの時には園内までに入らない、行事の際にはしっかりとマスクを着用して、終わったらすぐに帰るなどの対応が必要です。大切なことは、伝染性紅斑の情報を園の職員と保護者全員がしっかりと共有すること。そして、感染した場合のリスクが高い妊婦さんを皆で協力しあって守ることが重要だと思います」

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2025年第2週、伝染性紅斑とは、伝染性紅斑(ヒトパルボウイルスB19感染症)
厚生労働省:伝染性紅斑

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏