流行地域は注意 流行地域は注意
国立感染症研究所の2024年第49週(12/2-8)速報データによると、伝染性紅斑の全国の定点当たり報告数は0.92。全国的な流行にはなっていませんが、東京都(3)・埼玉県(3.38)・千葉県(2.23)・神奈川県(2.23)と、首都圏で患者が多く発生しています。

【2024年】12月に注意してほしい感染症!インフルエンザの動向に要注視マイコプラズマ肺炎は過去最多を更新医師「首都圏は伝染性紅斑に注意」

別名「りんご病」とも呼ばれる、伝染性紅斑

伝染性紅斑はヒトパルボウイルスB19というウイルスが原因の感染症です。患者は5〜9歳が最も多く、ついで0〜4歳となっていますが、成人でも罹患することがあります。通常は飛沫また接触感染でうつり、10〜20日の潜伏期間のあと、この感染症の特徴である頬に赤い発しんが現れます。リンゴのように赤くなるので「リンゴ病」とも呼ばれることがあります。続いて手・足に網目状(レース状・環状)などと表現される発しんがみられ、胸・腹・背中にも現れることがあります。これらの発しんは1週間前後で消失しますが、中には長引いたり、一度消えた発しんが短期間のうちで再び出現することがあります。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、「ほぼ5年おきに流行すると言われていた伝染性紅斑ですが、新型コロナウイルス感染症が流行して以来、初めての流行が訪れようとしています。現在、東京や神奈川など首都圏で患者数が増えています、これからゆっくりと全国に広がり、およそ1年にわたって流行が続いていくのではないかと予測しています。しばらく流行していなかったので、小さなお子さんをはじめ免疫をもっていない方が多いと思うので、大きな流行となる可能性もあります。また、伝染性紅斑は、お子さんの場合、頬っぺたが赤くなる特徴がありますが、その時点で、ウイルスの感染性が、ほぼ失われており、予防がほぼ不可能と言っても過言ではありません。注意が必要です」と語っています。

症状が出る頃には、ウイルスの排泄はほぼ終わっている

伝染性紅斑の特徴として、症状が出る頃にはウイルスの排出が終わっているということがあります。典型的な症状として頬が赤くなるなどの症状がありますが、その発しんが出る7〜10日くらい前に微熱やかぜのような症状(前駆症状)が見られることが多く、その時期にウイルス血症を起こしており、ウイルス排泄量が最も多くなっています。その時に他の人にうつしている可能性があるのです。そして、発しんが現れた頃にはウイルス血症は収束しており、ウイルスの排泄はほとんどなく、感染力はほぼ消失しています。
安井医師「伝染性紅斑はお子さんの頬が赤くなり伝染性紅斑だとわかった頃には、感染する可能性はなくなっているのですが、その前の症状がほとんどない時期にウイルスを排出しているので、なかなか予防が難しい感染症です。保育園や幼稚園で伝染性紅斑が流行っているときには、特に妊娠しているお母さんは胎児に影響があることもあり注意が必要です」

心配な胎児感染

伝染性紅斑はかかっても症状としてはさほどではありませんが、妊婦がかかると胎児に影響があるという問題があります。妊婦が感染すると胎児の異常(胎児水腫)および流産があります。妊娠前半期の感染がより危険で、胎児死亡は感染から4〜6週後に生ずることがあると報告されています。また、妊娠後半期にも胎児が感染することがあり、妊娠のどの時期においても安心することはできません。しかし、風しんほどの危険性はなく、妊婦が感染しても分娩の経過や発育が正常であることも多いとされています。

大人もかかる伝染性紅斑

また、伝染性紅斑は大人がかかることもあります。
栃木県の43歳の方は、お子さんが伝染性紅斑にかかり、ご自身にも症状が出ました。
【経験談】伝染性紅斑(疑い) 43歳 栃木県
「息子の頬が真っ赤になったのと、足が腫れ上がってしまい病院に行ったところりんご病だろうとのことでした。そのころ私も倦怠感と頭痛、ひどい肩こりと腰痛がありましたが、生理前だからと様子を見たものの生理が来ても変わらず。
その後、息子の発症から2週間遅れて両肩から指先が真っ赤に腫れ上がり、膠原病ではないかと不安に思いつつ受診する科を調べていたら大人のりんご病のページを見つけました。
読めば読むほど似たような症状で、親からもりんご病にかかった話を聞いていないので今のところ、りんご病かなと自分では思っています。
現在は日に当たると腕が赤くなり、1日の1時間程度の頭痛、膝と足首の痛みに悩まされています」

安井医師は…

安井医師は「大人の方の多くは、免疫をもっているため、会社での集団感染などは、耳にしません。一方で、大人の女性が感染した場合、関節痛・頭痛などの症状が出て、1-2日間、歩行困難な症例も、珍しくありません。今回、寄せられた経験談は、お子さんが伝染性紅斑であったことで、大人も感染した可能性はありますが、検査をされていないので、何とも言えません。しかし、痛みが出た場合も、痛み止めなどの対症療法のみです。大人の場合の皮膚病変なども、余り耳にしませんが、原因となるヒトパルボウイルスは、様々な症状を引き起こすことでも、知られています。幼稚園・保育園・小学校などでは、お子さんのお迎えに、妊婦さんがいらっしゃることも珍しくありません。貼り紙での掲示や、連絡用のホームページなどに流行している旨を記載して、妊婦さんと胎児を感染から守ってあげるよう、配慮することが大切です」としています。

ヒトパルボウイルスB19はさまざまな症状を引き起こす

伝染性紅斑の原因ウイルスであるヒトパルボウイルスB19は、他にも関節炎・関節リウマチ、血小板減少症、顆粒球減少症、血球貧食症候群(VAHS/HPS)や、溶血性貧血患者は重症の貧血発作を生ずることもあります。ヒトパルボウイルスB19にワクチンはなく、治療法も対症療法しかありません。軽い風邪んのような症状がある場合は、伝染性紅斑という感染症があるということも念頭に置くことが重要です。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年2024年2024年第44週(10/28〜11/3)、伝染性紅斑とは

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏