早めに医療機関を受診し、抗菌薬で治療 早めに医療機関を受診し、抗菌薬で治療
国立感染症研究所の2024年第42週(10/14-10/20)速報データによると、この週の「マイコプラズマ肺炎」の定点あたり報告数は2.01。現在の方法で統計を取り始めてから過去最多を4週連続で更新しました。都道府県別で青森4.83、佐賀4.67、愛知4.47、京都4.00、東京3.84、福井3.33、大阪3.28、広島3.15、埼玉3.08が多くなっています。この定点当たり報告数は、全国約500か所の機関定点病院機関(小児科及び内科医療を提供する300床以上の病院)からの報告をまとめたもので、実際にはかなり多くの人が感染・発症している可能性があります。

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マイコプラズマ肺炎とは?

マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)を原因菌とする肺炎で、流行時には市中肺炎全体の20〜30%を占めることもあります。感染経路は飛沫感染(せきなどの飛沫を吸いこむ)、接触感染(患者と身近で接触する)です。患者は1〜14歳に多く、家庭内や学校などでしばしば集団感染が起こります。
潜伏期間は感染後2〜3週間程度で、症状は発熱、全身倦怠感、頭痛、咳などで、熱が下がっても長引く頑固なせき(3〜4週間)が続くことがあります。肺炎の場合でも比較的症状は軽く、肺炎に至らない気管支炎症例も多いとされています。しかし、重症化して入院治療が必要な症例もあります。

感染症に詳しい医師は・・・

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長の安井良則医師は、「マイコプラズマ肺炎は子どもに多い感染症といわれていますが、大人でも感染し、重症化することがあります。私の勤務している病院でも20代や30代の方がひどい肺炎で入院され、調べてみるとマイコプラズマ肺炎だったというケースがありました。中にはもう少しで人工呼吸器が必要という重い症状の方もいて、大人の方も注意しなければならない感染症です」と話しています。

治療には抗菌薬(抗生物質)を使用、ただし従来の薬が効かない場合も

治療には基本的にはマクロライド系の抗菌薬が処方されます。しかし近年、このマクロライド系の抗菌薬が効かない「耐性菌」が増えてきているとされています。
安井医師は、「去年中国でマイコプラズマ肺炎が大きな流行となりましたが、マクロライド系の抗菌薬に対して耐性を示すものの割合が高かったという報告があります。抗菌薬は他にもいくつかの種類があるのですが、子どもに対しては副作用があるものがあり、使用できる薬が制限されるということがあります。一方大人に対しては使用できるので、症状が悪化する前に医療機関を受診することが重要だと思います」と話しています。

マイコプラズマ肺炎に関する学会からの提言

10月24日、厚生労働省は、日本呼吸器学会など5学会の合同で出された「マイコプラズマ感染症(マイコプラズマ肺炎)急増にあたり、その対策について」という提言の周知を各都道府県などに伝えました。その中で予防と治療について触れています。

・感染しないようにするためには
新型コロナウイルス感染症と同様に、飛沫感染しますので、マスク着用、換気などの感染予防対策を行いましょう。併せて、石けんによる手洗いやアルコールによる手指衛生も併せて行いましょう。

・感染が疑わしい、あるいは感染した場合
マイコプラズマ感染症は感染症法上で5類感染症と定められており、毎週の全国の流行状況が把握されています。現在のように、流行期にある場合、風邪のような症状、せきがある、周囲に同様の症状の方がいる、という場合は、マイコプラズマに感染している可能性があるため、近くの医療機関を受診してください。なお、現在、新型コロナウイルス感染症も流行しています。医療機関を受診する際は、医療機関に連絡をいれて受診することをお勧めします。受診後に本感染症の診断がなされ、抗菌薬で治療を行われた場合、一般的には2〜3日で解熱することがほとんどですが、解熱しない、せき、そのほかの症状が悪化する場合は、再度、医療機関にご相談ください。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2024年第42週(10/14-10/20)

厚生労働省:マイコプラズマ肺炎に関するQ&A(平成23年12月作成、平成24年10月改訂)、令和6年10月24日事務連絡「マイコプラズマ肺炎増加に関する学会からの提言について(周知)」

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長 安井良則氏