どの世代も注意 どの世代も注意
帯状疱疹は、水痘-帯状疱疹ウイルスが再活性化することで発症します。水痘とは、「水ぼうそう」のことで、感染したことがある人は、治癒した後も、体内の神経節にウイルスが潜伏した状態が続きます。潜伏したウイルスは、加齢やストレス、疲労等による免疫力の低下で再活発化し、帯状疱疹を引き起こします。また、帯状疱疹の合併症の一つとして帯状疱疹後神経痛があり、発症頻度は年齢や症例定義、報告によって異なりますが、帯状疱疹患者の10-50%で生じるとされています。国内外の疫学調査において、壮年層における帯状疱疹では発症から3ヶ月以上持続する疼痛が10-20%に認められます。帯状疱疹は、特に50歳を境に発症率が急上昇します。今回は、大阪府49歳の方の経験談を、ご家族がお寄せくださったので、ご紹介します。

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帯状疱疹 49歳 大阪府

主人の話です。4月22日から37.2前後の微熱が毎日続いていた。軽い側頭部の痛みもあり、内科の血液 検査は異常なし。25日に頭痛が酷くなり27日には痛み止めも効かずキリで刺されるような痛みが数分置きに。夜、救急でCTと血液検査するが異常なし、群発頭痛の疑いとボルタレン坐薬でマシになり帰宅。28日も耐えがたい頭痛と微熱で坐薬が効くまで我慢していた。29日の夜主人の右胸と右の背中にポツポツがあるのに気付き、30日に内科で 帯状疱疹と診断を受けて、パラシクロビル、ロキソニン、ボルタレンを処方されました。
5月1~2日は何とか出勤して、3日から6日までの丸4日は微熱と怠さで食事やトイレ、入浴以外はひたすら眠っていました。パラシクロビル服用後3日で頭痛はなくなり、疱疹も枯れてきましたが、微熱と倦怠感が10日ほどしつこく続いたので心配でした。疱疹より先に痛みが強く出たので 帯状疱疹とはなかなか気付くことができなかったです。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「お寄せ頂いた内容から、痛みがひどく、辛いのだろうと思います。一日も早い回復を願っています。
帯状疱疹は、一般に、発疹が出る前に、ピリピリ・ズキズキとした痛みが現れます。通常は、発疹の出ている患部周辺に痛みを感じるのですが、人によっては、随伴性の頭痛が出るケースもあります。ピリピリ・ズキズキする痛みを感じたら、帯状疱疹を疑うことも大切で、 医師に症状を伝えてください。その際、早期に皮膚科を受診することが肝要です。1日でも早く、抗ウイルス薬を処方してもらってください。今回の経験談は、直接診断した訳ではないので、分からない部分も多いですが、場合によっては、痛みが続く可能性もあります。帯状疱疹は、50歳を超えると発症率が、一気に上がることが知られています。好発年齢の方は、ワクチンが推奨されています。帯状疱疹で、気がかりなのは、帯状疱疹後神経痛と呼ばれる、長期に渡る痛みなどが続くことです。以前、旅行前に発症し、そのまま旅行に出かけてしまったため、後に帯状疱疹後神経痛に悩まされた方を診察したことがあります。治療が遅れてしまうと、症状が長引く可能性があることも知っておいてください。今回、経験談をお寄せ頂いた方も、相当、辛かったと思います。帯状疱疹後神経痛が出ないことを願うばかりです」としています。

帯状疱疹の特徴

帯状疱疹は、かつて水ぼうそうにかかったことがある人なら、誰でも発症の可能性があります。加齢、疲労、ストレス、悪性腫瘍、免疫抑制状態などをきっかけに、神経節に潜んでいた水痘帯状疱疹ウイルスが再び活性化することによって発症します。水ぼうそうにかかったことがある人なら約10〜30%、85歳以上の方は約50%が帯状疱疹を経験しているという報告もあります。症状としては体の片側に、時に痛みを伴う水疱状の発疹が発生します。通常発症する部位に、発疹が出現する2〜3日前からかゆみや痛みが発生します。その後、3〜5日間にわたって発疹が現れ、かさぶたになるまでには10〜15日ほどかかります。また、発疹が治っても帯状疱疹後神経痛といって、発症した部位の痛みが長く続くことがあります。

どの世代も注意

どの世代であっても、発症の可能性はあるので、年齢に関係なく注意が必要です。日本では、帯状疱疹を予防するワクチンが2種類あります。ワクチンには、発症したとしても重症になることを予防できる効果と、発症そのものを予防できる効果もあると考えられています。どちらも50歳以上の方が対象となります。2016年3月に阪大微研が製造する『乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」』について、「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」に対する「効果・効能」が追加承認されました。接種回数は1回です。また、2018年3月には、帯状疱疹の予防のみを目的としたワクチン(シングリックスⓇ筋注用)が薬事承認されました。接種回数は2回で、接種間隔は1回目から2か月以上あけて、6か月以内に2回目を接種します。帯状疱疹予防としてのワクチンは、任意接種のワクチンとなりますので、接種費用は基本的に自費となります。しかし、自治体によっては一部助成しているところもありますので、お住まいの自治体へお問い合わせください。

参照:帯状疱疹症例調査「宮崎スタディ」
引用:厚生労働省「帯状疱疹ワクチン ファクトシート 平成29(2017)年2月10日 国立感染症研究所」
取材:大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏