ほっぺたがリンゴのように赤くなる ほっぺたがリンゴのように赤くなる
国立感染症研究所の2024年第39週(9/23-29)速報データによると、伝染性紅斑の全国の定点当たり報告数は0.19。全国的にはまだ流行の兆しはありませんが、青森0.76のほか、神奈川0.61、東京0.54、埼玉0.47、千葉0.32となっており、首都圏で患者数が多くなっています。伝染性紅斑は新型コロナウイルス感染症が流行した2020年以来、患者の発生はほとんどありませんでしたが、ここに来て各地で患者の発生が見られるようになりました。これから注意が必要な感染症です。

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別名「りんご病」とも呼ばれる、伝染性紅斑

伝染性紅斑はヒトパルボウイルスB19というウイルスが原因の感染症です。患者は5〜9歳が最も多く、ついで0〜4歳となっていますが、成人でも罹患することがあります。通常は飛沫また接触感染でうつります。10〜20日の潜伏期間のあと、この感染症の特徴である頬に赤い発しんが現れます。リンゴのように赤くなるので「リンゴ病」とも呼ばれることがあります。続いて手・足に網目状(レース状・環状)などと表現される発しんがみられ、胸・腹・背中にも現れることがあります。これらの発しんは1週間前後で消失しますが、中には長引いたり、一度消えた発しんが短期間のうちで再び出現することがあります。成人の場合は関節痛・頭痛などを訴え、関節炎症状により1〜2日歩行困難になることがありますが、ほとんど合併症を起こすことなく自然に回復します。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「伝染性紅斑は全国的にはまだ大きな流行となってはいませんが、首都圏で患者数が多いのが気になります。これから先、首都圏から広がっていき、やがて全国的な流行になる可能性もあると思います。比較的ゆっくりと流行が広がっていくので、これから先1年ぐらいは、患者発生数が増加していく傾向が続くと予測しています。」と語っています。

症状が出る頃には、ウイルスの排泄はほぼ終わっている

伝染性紅斑の特徴として、頬が赤くなるなどの症状が出る頃には、ウイルスの排泄が終わっているということがあります。頬に発しんが出る7〜10日くらい前に微熱やかぜのような症状(前駆症状)が見られることが多いのですが、その時期にウイルス血症を起こしており、ウイルス排泄量が最も多くなっています。そして、発しんが現れた頃にはウイルス血症は収束しており、ウイルスの排泄はほとんどなく、感染力はほぼ消失しています。つまり、知らないうちに感染し、他の人にもうつしている可能性があるのです。

気がかりな胎児感染

伝染性紅斑はかかっても症状としてはさほどではありませんが、妊婦がかかると胎児に影響があるという問題があります。妊婦が感染すると胎児の異常(胎児水腫)および流産があります。妊娠前半期の感染がより危険で、胎児死亡は感染から4〜6週後に生ずることがあると報告されています。また、妊娠後半期にも胎児が感染することがあり、妊娠のどの時期においても安心することはできません。しかし、風しんほどの危険性はなく、妊婦が感染しても分娩の経過や発育が正常であることも多いとされています。
安井医師「風しんほど心配がないとはいえ、妊娠初期の感染は流産のおそれがあります。成人の不顕性感染の場合もあるので、知らないうちに感染し、また他の人にうつすなど、注意しても防ぐことは難しい場合があります。かぜのような症状がある時には、妊婦の方に近づかないなど、配慮をいただきたいと考えています」

治療と予防

予防するワクチンはなく、治療法も対症療法のみです。また、症状が現れる頃にはウイルスの排泄は終わっているので、感染対策も難しい感染症です。しかし、特に溶血性貧血を基礎疾患に持つ方、免疫不全の方、妊婦の方などは、感染しないように注意をすることが必要です。特に妊婦の方の予防については、流行地域の家庭内で調子を崩している子どもをケアする場合においては、手洗いの通常以上の徹底や、食器の共有をしないこと、伝染性紅斑が流行している保育園や学校などには立ち入らないことなどが重要です。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年2024年第38週(9/16-22)、伝染性紅斑とは、IDWR2019年第14号〈注意すべき感染症〉伝染性紅斑(ヒトパルボウイルスB19感染症)
厚生労働省:伝染性紅斑

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏