劇症型溶血性レンサ球菌感染症も増加? 劇症型溶血性レンサ球菌感染症も増加?
国立感染症研究所の2024年第37週(9/9-15)速報データによると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の全国の定点当たり報告数は2.08。これで4週連続の増加となりました。都道府県別の定点あたり報告数は鳥取6.05、茨城4.95、福岡4.28、宮崎3.56、山形3.36、長崎・熊本3.16が3を超えています。

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A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは?

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。よく見られる疾患としては、急性咽頭炎のほか、膿痂疹(のうかしん)、蜂巣織炎、あるいは特殊な病型として猩紅熱(しょうこうねつ)があります。また菌の直接の作用ではないのですが、合併症として肺炎、髄膜炎、敗血症、あるいはリウマチ熱や急性糸球体腎炎を起こすことがあります。いずれの年齢でもかかりますが、学童期の子どもが最も多く、学校などでの集団感染、また家庭内できょうだいの間で感染することも多いとされています。治療にはペニシリン系の抗菌薬が用いられます。少なくとも10日間は確実に投与し、症状が改善しても服用し続けることが重要です。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「溶連菌感染症は去年の秋頃から過去最大の流行を続けていましたが、初夏から夏にかけて一旦落ち着きを見せてきました。しかし、お盆明けころから、再び増加に転じています。新型コロナウイルス感染症の流行以降、他の感染症の流行傾向が過去の例と当てはまらないことが多くなってきていますが、溶連菌感染症も同様で、この先去年と同等の流行になるのか、さらなる流行になるのか、流行規模などの予測が難しい状況です。ただし、例年、年末に向けて溶連菌感染症の患者数は増えています。今後も患者数は増えていくのではないかと考えています」と語っています。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症の報告数はすでに去年の1.5倍に

また、溶連菌感染症の流行と連動するように増えていくのが、劇症型溶血性レンサ球菌感染症です。国立感染症研究所の2024年第37週(9/9-15)速報データによると、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の報告数は23。今年の累積報告数は1,492となり、すでに過去最大の年間報告数となっています。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは?

劇症型溶血性レンサ球菌感染症は「人食いバクテリア」とも呼ばれることがある感染症です。A群溶血性レンサ球菌に引き起こされ、免疫不全などの重篤な基礎疾患をほとんど持っていないにもかかわらず突然発病することがあります。初期症状としては四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下などで、発病から病状の進行が非常に急激で、発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸逼迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)を引き起こし、ショック状態から死に至ることも多いとされています。近年では妊産婦の症例も報告されており、出産の際に感染し発症したケースもあります。

溶連菌感染症の予防法は?

溶連菌感染症は通常患者との接触によって感染するので、予防として最も重要なのは、患者との濃厚接触を避けることです。症状がある時は無理をせず、まずは医療機関を受診しましょう。そして手洗いや咳エチケットなど、一般的な感染対策が有効です。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年2024年第37週(9/9-15)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは、劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏