【2024年】9月に注意してほしい感染症!新型コロナ9月上旬まで要警戒 マイコプラズマ肺炎・溶連菌感染症は学校再開後の動向に注意 医師「インフルエンザ早ければ9月から流行」
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)とは
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。略して「溶連菌感染症」ということもあります。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。主な症状としては、扁桃炎(へんとうえん)、伝染性膿痂疹(のうかしん)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎など、さまざまな症状を呈します。いずれの年齢でもかかりますが、学童期の子どもが最も多く、学校などでの集団感染、また家庭内できょうだいの間で感染することも多いとされています。感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「溶連菌感染症の患者報告数が、第33週(8/12-18)を境に、徐々に増加しています。もちろん、第33週は、お盆中で休診している医療機関があるため、報告数が減少するのですが、お盆明け以降も、増加傾向にあります。9月以降は、学校などでの新学期が本格的に始まることもあり、集団生活での感染や家庭へ持ち込まれる可能性もあります。今後、12月に向けて、ピークを形成していく傾向があり、このまま増加が続けば、大きな流行となることも考えられます。また、『劇症型』も、比例して増加していくと考えられるため、注意が必要です」としています。溶連菌感染症の症状は?
主な症状としては、扁桃炎(へんとうえん)、伝染性膿痂疹(のうかしん)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎など、さまざまな症状を呈します。潜伏期間は2〜5日。突然の発熱と全身倦怠感、ノドの痛みなどが起こり、しばしば嘔吐を伴うことがあります。その後、舌がいちご状に赤く腫れ(苺舌)、全身に鮮紅色の発しんが出る「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。また、発しんがおさまった後、指の皮がむけることがあります。伝染性膿痂疹は「とびひ」とも呼ばれています。発症初期には水疱(水ぶくれ)がみられ、化膿したり、かさぶたを作ったりします。また、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎にかかると、合併症を引き起こす懸念があります。肺炎、髄膜炎、敗血症などの化膿性疾患。あるいはリウマチ熱、急性糸球体腎炎などの非化膿性疾患を生ずることが知られています。治療法は?
治療にはペニシリン系薬剤が第1選択薬ですが、アレルギーがある場合にはエリスロマイシンが適応となり、また第1世代のセフェムも使用可能です。いずれの薬剤も少なくとも10日間は確実に投与することが必要です。除菌が思わしくない例では、クリンダマイシン、アモキシシリン/クラブラン酸、あるいは第2世代以降のセフェム剤が使用される場合があります。劇症型溶血性レンサ球菌感染症の増加懸念
気がかりなのが、同じ溶連菌が引き起こす「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」です。かつては年間に100〜200人程度の報告数でしたが、去年は941人。そして2024年第36週(9/2-8)時点の今年の累積患者報告数は1,462人となっています。「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」は「人食いバクテリア」とも呼ばれる感染症で、主に溶連菌感染症と同じA群溶血性レンサ球菌に引き起こされ、免疫不全などの重篤な基礎疾患をほとんど持っていないにもかかわらず突然発病する例があります。初期症状としては四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下などで、発病から病状の進行が非常に急激で、発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸逼迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)を引き起こし、ショック状態から死に至ることも多いとされています。近年では妊産婦の症例も報告されています。
引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年第36週、溶血性連鎖球菌感染症2012年〜2015年6月、劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年第36週、溶血性連鎖球菌感染症2012年〜2015年6月、劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏